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セーラー服と雪女Ⅸ 「超時空の魔女」  作者: サナダムシオ


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⑯ 効果と副作用

 突然、目の前が暗くなった。

 何だか足元もおぼつかない。瓦礫の上のようだ。

 あれっ、私、座敷で正座していたはずなのに?

 京子は疑問に思いつつも、慎重に足を一歩ずつ進める。


 いつの間にか夜になってしまったのか。

 場所も祖母宅ではないようだ。

 目の前に建築資材が積んであるのが見える。

 何かの解体現場らしい。

 私はここに来たことがある。

 京子は思い出した。


 ここは光陽高校の旧校舎だ。

 今から自分の左右両側に白い雪子と黒い雪子が現れる。

 来た!二人で言い争いを始めた。

 私が止めなくっちゃ。


 京子は強力な冷気を出しつつ、今すぐ争いをやめるよう二人に警告する。

 彼女はややハッタリめいた言葉を使ったが、二人は信じたようだった。

 やがて二人の雪子は、融合して一人に戻り、やけに素直に去って行った。

 それはまるで、何もかもお見通しであるかのようだった。

 京子は思い出して、またイラっとしてしまった。


 その後、近くに隠れていた雪村を見つけて、彼の手を取る。

 彼と一緒に喋りながら、朝日が昇る中を、楽しく地下鉄荒羽田駅まで歩く。

 そこまで見たところで、目の前が明るくなった。


 京子は相変わらず、祖母宅の座敷に居た。

 目の前にはサン・ジェルマンがニコニコ笑って座っている。

「しばらく眠っていましたね。何か変化はありましたか?」


「…いや、夢を見ていたようです。それも過去の印象深い場面の…。」

「それは夢では無くて、実際に貴女の精神が飛んで行ったのです。」

「それは一体どういう…。」


「貴女は先ほど、私の血の付いたナイフで切った、人魚の肉を食べたのです。ですからそういう効果が期待できます。」

「…私を実験台にしたの?」

「そういうわけでは…でもいずれ私のパートーナーになるお方になら、必要な能力かなと。それに先ほどうかがった、貴女のライバルと相対する時にも、有効なチカラですよね?」


 まったく、食えない男だ。

 京子はあきれた。

 でもこれで、不老不死の身体と、自分の時間軸内を観測する能力は得たことになる。それでも恐らく、あの真田雪子の足元にも及ばないだろうが…。


「今日のところは、これで帰ります。一週間後、名護屋テレビ塔の下で会いましょう。時刻はそう…午前10時でいかがですか?」

「…いいですよ。」

「ではそれで。ぜひ私のパートナーに。良いお返事を期待してますよ。」


 祖母とともに門まで送ると、時間指定でハイヤーが既に呼んであり、彼はそれに乗って帰って行った。

 全ては彼の計画通りというわけか。

 そして彼は例の箱を置いて行った。

 それにはこんな手紙がついていた。




村田京子様


初対面での数々の無礼を、どうかお許しください。


さてこの箱は、貴女の御先祖から120年ほど前に預かった物です。


元々私の目的が達成されたら返却するつもりでした。


その目的とは、私自身と私のパートナーの不老不死化。


京子さん以外に食べさせる気は無いので、目的達成です。


これを今後どうするかは、貴女にお任せします。


くれぐれも、容量用法に気をつけご使用くださいね。


            あなたのベストパートナー

              サン・ジェルマン伯爵


追伸 テレビ塔での再会を楽しみにしております。



 …日本語をしゃべるだけではなく、書くのも堪能だったというわけか。

 さすがは人生100周目の男だわ。

 私の人生のパートーナーにふさわしいのかもね。

 京子はそう思った。


挿絵(By みてみん)

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