表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Natural Blessing~トンネルの奥深く、君が見たものは~  作者: shiori@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

9、大切な人、忘れられない人

 麻由がこの世を去ってすぐに通夜が執り行われた。

 僕と吾郎は罪の意識に苛まれたまま、連絡を受けて麻由と対面した。

 棺の中に入れられ、色とりどりの草花に囲まれながら物言わぬ姿となった麻由。


 その死相は想像していたよりもずっと美しく、今にも起き上がって愛しい声を聞かせてくれるんじゃないかと、辛い錯覚を覚える程だった。


 麻由が高校に来れなくなってから今日までの間、僕は生きている実感のない日々を過ごしていた。


 精神的なものであるということ以外、麻由の死の真相は知らされていない。

 医学的に分からないこともあったのかもしれない。

 でも、死因が分かったからといって納得できることでもなかった。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 吾郎は食事が喉を通らない様子で、正座をしたまま僕の隣で言った。

 棺が置かれた和室には誰の姿もない。

 来ていた来客は皆、悲しげに家路へと帰って行った後だった。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 僕は吾郎の問いに答えた。

 トンネルの奥深く、辿り着いた麻由が見た光景。

 それは霊感の強い麻由にしか分からない事だけど、僕は本能的に麻由は望んでいたのだと思う、あの場所に辿り着くことを。


「都合のいい想像だが、そう……かもしれないな」


 都合のいい想像、その通りだ。僕は自分に嘘を付いて吾郎に伝えた。

 死んだ麻由に悔いがあったと思いたくなかったからだ。

 吾郎は麻由に語り掛ける言葉が見つからない様子で今も項垂れていた。


「俺は……麻由をこの残酷な世界から解放してやりたかったのかもな」


「そんなの……後付けに過ぎないじゃないか」


「でも、あんな場所に麻由を連れ出すのは良くない事だと、誰もが分かっていたことだろう。麻由が霊を取り憑かれやすいことは知っていたんだから」


 また始まってしまった。こうして何度も吾郎は後悔を口にする。

 麻由に詫びの言葉を続けてしまうのだ。


 こうして麻由に別れを告げようとしても、気持ちの整理は付かない。

 今でも麻由の魂をあのトンネルまで行って取り戻せば、この身体が目を覚ますのではないか、そんな有り得ない妄想を考えてしまう。


 麻由はこれから火葬され、灰となってこの世界の一部になる。

 そうなれば、僕らだって嫌でも諦めが付くだろう。

 

 大好きだった麻由。

 眩しい笑顔で僕らを包み込んでくれた麻由。

 この世に一人しかいない、無邪気で優しい生身の身体を持った麻由。


 これからも一緒に歩んでいく未来を想像していたのに僕らは大切な人を亡くしてしまった。


「今もまだ、夢の中で麻由が出て来るんだ……何度も何度も声を掛けて来るんだ。一緒に散歩に行こうって、こんな辛い目に遭ったのに言ってくるんだ。

 全然、忘れさせてくれないんだよ、弘人……」


「うん、僕も同じだよ、吾郎。

 麻由を忘れることなんて絶対に出来ないよ……」


 僕らの中に未だ息づいている、心を締め付ける少女の残像。

 ずっと、今も夢の中で残響が聞こえるという吾郎。

 麻由がまだ、たとえ夢の中でも僕らと一緒にいてくれるんだと思うと、僕は涙が止まらなくなって、また悲しみが溢れ出してしまうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ