♡愛しのエリアちゃん♡
エナッツ君の話やオリーブ星の話や未来の話をしているうちに夜も更けていった。
だけど店の反対側の席でまだ飲んでいる連中がいた。(お酒じゃないよ!)
よく見ると今夜対戦したシリウスの選手たちだった。きっと祝勝パーティーだろう。
そのなかでひとり、すらりと背の高い選手がいた。彼は僕らを見つけると、にこにこしながら近づいて来た。
「やあ、セリア君と、それからダイスケ君だね」
シリウスのエースの、ポアシだった。
それから僕らは握手をした。そしてホアシは、僕にこんな事を言った。
「あのスライダーをホームランにしたのは、君が初めてだよ」
ホアシはいちごミルクの入ったダイヤモンド製のグラスを持っていた。
「プロキオンズ打線は何とかなると思っていたけれど、君だけは手が付けられないね」
そう言うと、おいしそうにいちごミルクを一口飲んだ。
「インサイドに食い込むスライダーを、簡単に打ってしまうんだから、凄い技術だよ」
なんて、ポアシにも褒められた。
左足を後ろに引いて、オープンスタンスで打っているだけなのに。地球の監督には、ぼろくそに言われた
打ち方なのに! へへへ(^^♪
で、そのポアシの後ろに、少し恥ずかしそうな感じで一人の女の子が色紙とマジックのようなものを持って立っていた。
すらりと背が高くて、何処となくポアシに似ていた。
ポアシは僕にその娘を紹介した。
「妹のエリアっていうんだ。ダイスケ君のファンだってさ。サインが欲しいそうだ」
そういう訳で、僕は喜んでサインをした。
(市役所で沢山の書類にサインした時のように、もちろんサインは上手に出来た!)
それをきっかけに、僕はエリアちゃんといろんな話をする事になった。
かなり話がはずんだ♫
しばらくは店の隅っこで、ソファーに座って話をしていたけれど、ガヤガヤとめちゃくちゃやかましかったので、二人で店の外に出て、そしたらブランコがあったのでそれに乗ってゆっくりと話をする事にした。
ところがしばらくして、ふと僕が前を見ると、例の食鳥植物の「トリトリ草」が生えているのが分かった。
そしてその夜はよく晴れていた。
夜空を見上げると月と伴星が出ていて、かなり明るかった。
案の定鳥目のはずのニワトリカラスがふらふらと空を飛んでいた。他にもいろんな訳の分からない鳥類が飛んでいたようだが、そんなことはどうでもいい。
とにかくさらに悪い事には、例のUFO虫も、うじゃうじゃ飛んで、とても綺麗だった。
それはホタルの大集団みたいでロマンチックではあるけれど、でもどのような結末になるのか、僕には容易に想像が出来た。なんてったってトリトリ草とニワトリカラスとだし。
〈つまり僕らの目の前で、ニワトリカラスがトリトリ草に食べられる!〉
僕はニワトリカラスの断末魔の叫び声を想像した。
考えただけでもムードぶち壊し!
それで僕らは場所を変える事にした。
ブランコの所からちょっとした散歩道があったので、僕らはそこを歩いた。
街灯と月と伴星の光で十分に明るく、いろんな花が綺麗に咲き乱れているのが分かった。
もっとも他の惑星の草花の名前までは、僕にもよく分らないけれど。(そもそも地球の草花だって怪しいし)
それから少し歩くと、トランペットの咲いた例の説明しようのない木がとてもいい感じに植わっている場所があり、そこにイカしたベンチがあったので、二人で座って話を続けた。
「どうしてエリアちゃんは僕のファンになったの?」
「お兄さんがダイスケ君は凄いって言うから…、それで、どんな人かなって」
「ふーん」
「そしたらダイスケ君、凄く思い切りのいい打ち方をするから、かっこいいなと思って」
「へぇ~」
〈思い切りのいいイカしたオープンスタンス♪ まあいいか。きっと男らしく見えるんだ!〉
「それに、ユニフォーム姿もかっこいいけれど、その服も素敵ね」
「本当? どうもありがとう」
〈ダイヤモンドのアーケードで、パジャマ以外の服を買ったかいがあった!〉
その夜はよく晴れていた。そして夜空を見上げると、月と伴星が出ていてかなり明るかった。
あれれ、このフレーズどこかで出て来たぞ!
(トリトリ草の話の時だ)
そしてベンチの近くにコイン式の天体望遠鏡が置いてあった。
エリアちゃんの話によると、タカハシのフローライトレンズが付いた直径12.8cmの屈折望遠鏡だそうで、それがイカしたドイツ式赤道儀に乗っていた。
5ミリのアイピースを使うと、倍率は208倍に出来るそうだ。
これでオーラム星の月を見た。
僕らの月も綺麗だけど、オーラム星の月もとても綺麗だった。
クレーターもいっぱい見えた。
でも形は少しいびつだった。直径が百キロくらいしかないらしくて、自分の重力では丸くなれないからだそうだ。
それから二人で交代にいろんな天体を見た。
木星みたいにしましまなのやら、土星みたいに輪っかのあるのやら。
だけど僕らの太陽系の土星の輪の方がずっと立派だった。さすがに「麦わら星」として人気が出るだけの事はあると、そのとき僕は思った。
それと、「今夜は空が明るいから、いまいちだけど」とか言いながら、エリアちゃんは、こと座のM57リング星雲を見せてくれた。
神秘的なエメラルドグリーンの小さなリングが見えて、僕は感激した。
そしてその時、ふと僕は地球が見たくなった。
「ねえ、エリアちゃん、サファイア星って見えないの?」
でもエリアちゃんはこう言った。
「サファイア星は小さすぎて、この望遠鏡では見えないわ。何光年も離れているし、恒星と比べたら惑星はあまりに小さくて暗いから、この望遠鏡ではとても無理ね」
「へぇ~」
「あらら、ごめんなさい。私、先生みたいなしゃべりかた」
「いいよいいよ。もっと教えてよ」
そのときエリアちゃんは小学校の理科の先生だと、僕に教えてくれた。
「だけど、その恒星なら肉眼でも見えるよ。サファイア星が廻っているのは、カシオペア座の一等星だから」
〈そうだったんだ。僕らの太陽は、ここではカシオペア座の一等星だったんだ!〉
僕はまた感激したけれど、
「でも、残念ながら今は出ていないの。この季節は昇るのが明け方近くになるから」
「じゃ、カシオペアが出るまで一緒に星を見ていようよ!」
「そうねぇ…、でもだめよ。明日も試合でしょ」
〈明日は右ピッチャーが先発らしいから、僕、多分出番ないと思うけど(^^♪〉
「それに、私も明日は仕事だから」
「…そうだね」〈あ~あ、やんわり断られた〉
「でもいつかきっと、一緒に見てみたいね」〈やった!〉




