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第9話

「ほざけ!『ライト・ランス』」


 それは一瞬だった。アルベーユは0.1秒の刹那の時間で光の槍を構成しナーユに向けて躊躇いなく射出する。そして、それが必ず当たると確信し口角を上げる。


 しかし、そんな確信を壊すようにナーユの手前で魔法は散り散りに崩壊する。


「!?」


 その現象にアルベーユは目を見開き驚愕する。


「『何をした』って言いたそうにしているな」


「ッ!........」


「そんなにムキになるなよ」


 アルベーユは続けざまにさらに二本の槍を射出する。しかし、それも同じようにナーユの一歩手前で崩壊する


「何故だ!?何故私の魔法が中止キャンセルされる!」


「あんな鈍くて、魔力がカス程しか込められていないアレが魔法なのか?それは傑作だ」


 爆笑する姿にアルベーユは激昂し、更に光のほかに火魔法、風魔法を幾重にも並列展開する。


「死ね!」


「だから遅いんだって」


 そういって、そのすべてが魔法が完全に構築される前に魔法陣ごと崩壊する。


「...........そ、そんな」


 崩れるように座り込む。そして、力なく下を向くリヒトの顔を髪を掴んで覗き見る


「フッ、所詮この程度か。哀れだな、アルベーユ。そんなお前に冥途の土産ってやつをくれてやる。お前が放った光の槍や構成途中だった魔法陣が崩壊したのは俺がこの剣を使って陣の《《弱い部分》》.....つまり脆弱性を狙ったわけだ。種さえわかれば誰だってできる曲芸だ」


「あ。ありえない。そんなことがあり得るはずがない!光の速度なんだぞ!世界最速の魔法なんだぞ!それを一瞬で解析して脆弱性をつくなんて!........」


「光の速度?その程度、あのダンジョンの中では茶飯事に過ぎないというのに。井の中の蛙。大海を知るってか?ホラホラ、もっと抗って見せろ」


「クソがぁぁぁ!!」


 そういって今度は先ほどとは比較できないほどの量と高密度の魔力が込められた魔法陣が形成される。


「はぁ、今度は数か.......なら、今度はお前の土俵で遊んでやる。影の槍『ダーク・スピア』増殖インクリース


 その号令とともに1本の槍が出現する。


「ハッ!あれだけイキッておいてたった一本しか構成できないの........か。ッ!?」


 その光景にナーユを馬鹿にする。しかし、その声は徐々に小さくなり最後には驚愕へと変わっていく


 増殖インクリース。その効果は初めに構成した魔法陣を指数関数的に、そして術者の意思で停止させない限り半永久的に自動でその魔法を複写構成し、射出する魔法。


「ホラホラ、どうした?ご自慢の手数も俺が勝ってるぞ?」


 ナーユは悠々魔法を放ち続け、アルベーユはそれに負けじと魔法を放つ。しかし、次第に脳は魔法を構成するための演算処理が追い付かず、無理に無理を重ねオーバーヒートを起こす


「カハッ.........」


 目、鼻、口、耳に至るまで穴という穴から出血する。


「ここまでだな.........もういい、死ね」


 満身創痍のその姿を見ると一言呟き。そして、死の宣告をする。その宣告には魔力を乗せて発す。


 その声がリヒトに届いた瞬間、心の臓は鼓動を止める


「ァ....」


(呪言魔法.........)


 その名の通り、言葉に魔力を乗せることで聞いた者の意思に関係なく強制する魔法。格上であれば言葉は跳ね返るというリスクはあるがそうでなければその限りではない


「次はお前だ、アーナーティア........って」


 逃げた。逃げられた。


(まぁ、探索魔法の前ではそんなことは無駄なんだけど)



 ・・・・・・・・・・・・・・


(なんなの!?何なの何なの!あんな化け物に勝てるわけない!逃げなきゃ、少しでも遠くに)


 体をシーツで覆い、隠し通路を使って外へ逃げようとする。


「この通路は殿下ですら知らない秘密の地下通路。ここにさえ逃げ込めばあの人は追ってこれない」



『逃げるなんて悪い子。そんな子にはお仕置きしないとね』


 ゾクッ

 その声が響いた瞬間背筋が凍る感覚がした。そして、周囲は木の根で覆われ気づいた時には地上に引きずり上げられていた。


「な、なんなのよ、いったい!」


「初めましてお嬢さん」


「なんッ!?.............」


 そこから先声が出せなくなる。正確には出せなくなったと錯覚してしまうほどにその女性は美しかった。


 その瞳はすべてを吸い込んでしまいそうになるほどに、本能が彼女に抗うことを拒否する。


「あなたの名前を教えてくれるかしら?」


 静かに問いかけられる。


「わ、私の名は、アーナーティア=ルルイエル=ヴェリアルインと、申し、ます」


 無意識で見ず知らずの女へ敬語を使ってしまう。それ以外の話し方を拒絶してしまう


「そう、アーナーティアというのね。それで、あなたは私の旦那様を裏切ったらしいのだけど。どういうことなのかしら」


「ヒッ........」


 先ほどまでは全く感じられなかった魔力が具現化するほど高密度で放出される。その美しい姿から発せられる膨大な魔力に小さな悲鳴を上げる。


「私は旦那様ほど優しくない。だから、殺さない。永遠を生きる苦しみを味わいなさい【■■■■■■■■■】」






 ・・・・・・・・・・・・・

「あれ......アーナーティアは?確かこの辺りで探索魔法に引っ引っ掛かったんだけど


しばらくすると屋敷の方角からナーユが飛んでくる。


「ごめんなさい。あまりにもあの女が醜かったからっちゃったの」


殺した。笑顔で、そして少し申し訳なさそうにそう報告する。


「え!?まじか.......アレにシルさんの手を汚すほどの価値なんてないのに」


「いいえ、旦那様の楽しみを奪ってしまったわ。ごめんなさい」


「いや、それならアレを逃がしてしまった俺が悪い。.......ってこの流れ完全に堂々巡りの予感がする」


そういうと強引に話の腰を折り、話題を変える


「そういえば、この都市も百数人は生き残ったみたいだな。まぁ、この程度ならいいか」


「そうね、あの程度だったらほっといても時間の問題でしょう」


そういって二人は壊滅した都市を後にする。

この大事件は翌日には大々的なニュースとなり、全国に大きな影響を与えるのだった。その大事件では明らかに人為的な手が加えられた死体がいくつもあったにも関わらず、最終的には魔物進行モンスターパレードと原因つけられて幕を閉じた。


この事件に人々は震撼し、そして自分たちがその当事者でないことに安堵する。しかし、彼らはまだ知らない。この出来事はまだ序章にすぎないということを

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