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第10話

時は進み、ヴェリアルイン伯爵領壊滅から凡そ半月。

王城では毎秒舞い込んでくる大量の報告書に大臣らは頭を悩ませていた。その内容とは、伯爵領を皮切りにこの半月で頻発している魔物進行モンスターパレードによって、壊滅した都市や町の領主..........つまり、貴族からの嘆願書や報告書だった。それらの書類は足の踏み場がない程あり、大臣らは文字通り不眠不休でその処理をしている。


「まただ、これで何件目だ?」


魔物進行モンスターパレード......多くても数年に一度起こるか否かなのに......異常としか言いようがない。それにもう避難民を住まわせるスペースも備蓄もない。これでは後1か月すらもたんぞ」


「そうは言っても、魔物進行モンスターパレードなど対策の立てようもないぞ!」


「とはいっても、そのまま放っておくわけにもいくまい」


「.............」


再び頭を抱え、黙り込む


その間にも、部下の者たちが大量の書類を持ち込んでくるのだった




・・・・・・・・・・・・

一方、その元凶にして、主犯である二人はというと


「おはよ~」


「おはよ.......ってもうお昼間近なんだけどな」


とある都市の宿にてのんびりしていた。


夜は遅い時間まで起き、起床するのは大体昼頃が日常になりつつあった。というのも、大きい都市を再起不能にするとき、単純に時間がかかるのだ。もちろんナーユもそれを考えて都市の大きさに合わせて魔物の数も増やしている。しかし、予想に反して抗うものが多く、大都市であればその分強い騎士や冒険者がたくさんいる。ナーユは彼ら対策に最近魔物生成で復活させた70階層以上の魔物を放つことにした。


「そろそろ本腰を入れようと思う」


昼食をとっていたナーユが徐にそう宣言する。それを聞いたユグドラシルは食べかけのパスタを咀嚼し、飲み込むと無言になる


「今までは行き当たりばったりで行き当たった都市を攻め落としたがここからは加速していく。」


そういってとある魔石を異空間から取り出す。


「ッ!?なにそれ!?」


それを見たユグドラシルはテーブルにあるものをひっくり返す勢いで後ろに飛び退く


「これは80階層で倒した魔物を数種類合成したいわゆるキメラってやつだ」


そっとテーブルに置かれたキメラ魔石からユグドラシルは静かに距離を取る


「ど、道理でぐちゃぐちゃしているのね」


「ん?《《ぐちゃぐちゃ》》?」

(そういえば、前もこんな感じの効果音使ってたような........)


度々、このように効果音で表現してくることに疑問を覚え、ユグドラシルへ問いかける


「確かヴェリアルイン伯爵領の都市を攻めた時も俺の感情がどうのって言ってたよな?シルさんから見て俺とかこのキメラ魔石はどう見えてんの?」


「急にどうしたの?」


「いや、なんとなくシルさんが見ている景色が気になってな」


「あら、それはプロポーズかしら」


それを聞き、頬を染めながらクネクネさせる


「なんでそうなるんだよ.......で、どうなんだ?」


「う~んっと......旦那様が見ている景色がわからないからどう説明したらいいのかわからないわ」


説明の仕方に困り、頭を悩ませる


「なら見てみるか?俺が見ている景色」


「え!?見れるの?」


その言葉にユグドラシルは驚く。それを見たナーユは得意そうに鼻を伸ばし、魔法を発動させる


「ついでに俺もシルさんが見ている景色見てみるから........入れ替えろ『感覚交換チェンジズ・アイ』」


すると、見ているものが徐々に遠ざかり、視界が暗くなっていく。しばらくすると視界は明るくなり、周りが見えるようになる。しかし.......


「なんじゃこりゃ!」


そこに広がるのは先ほどまで見ていた景色とは別物だった。

椅子やテーブル......家などの物はモノトーンで見え、人は()が付いて見えるのだ。しかもただ色が付いて見えるのではなく、そのどれもが()()のみで色付けされている。そして、その濃さは様々で白に近い赤や黒々とした緑などだった。


その状態でナーユはユグドラシルへ視線を移す。


しかし、そこに見えたものは普段ナーユが見るユグドラシルではなかった。例えるなら....そう、その姿は大樹。どこまでも高く、そして力強く伸び続ける生い茂る大樹だった。


思わずナーユの目から頬を伝って一筋の涙が落ちる


「綺麗だ........」


その姿は、本の外から想像した世界樹を悠々と超える壮大さ、雄大さ。そして、神々しさすら感じてしまう。





一方........

「これが.....旦那様が見ている景色」


今までその人の本質のみを色や濃さで見てきた彼女が見たその景色......それはとても色鮮やかですべてが輝いて見える。


一人の人に複数の色があることは異常でその場合いつもぐちゃぐちゃに見えていた。しかし、ナーユが見る......普通の人が見るその景色は多彩な色で溢れているのに、混ざり合っているのに。それはどこまでも...........


綺麗だった


「私.....見て回りたい」


それは静かに発せられる


「ん?」


「私、この目で世界を見て回りたい!今まで見れなかったものを見て回りたい!!」


それはとても衝動的だった。無性にこの世界がどんな色をしているのか


それがとても知りたくて、知りたくて

そんな衝動が彼女を襲った。


「............」


「もちろんわがままだってわかってる。でも....どうしても見てみたいの」


とても申し訳なさそうに.....されど希うように


「いいよ、行こう」


「え.....いいの?」


余程意外だったのか間の抜けた顔を上げ、目を見開く


「シルさんが言ったんだろ。なら俺はそれを叶えるよ」


「でも......あなたは復讐を....」


「もちろんそれはする。でも、それはこの世界を見て回った後でも何ら大差ない。俺らは悠久の時をこれからずっと生きるんだ。その程度誤差だよ」


「.........うん♪ありがとう。やっぱり、私の旦那様は世界一素敵だわ」


そういって勢いよくナーユへ抱き着くのだった。

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