第1話
(俺は1000年続く大国アベスティア王国の第一王子ナーユ。しかし、その正体は市村 太与という高校3年生の普通の一般人だ。要するにライトノベルにありがちな異世界転生者だ!)
太与はある日重度の寝不足により朦朧とする意識のせいで赤信号の横断歩道を渡ってしまい。車にはねられその生涯に幕を閉じた。
.........と、思われた。
しかし、気が付くと太与は赤ん坊になっており、すぐに異世界転生だと気づいた。それと同時に、この世界に魔力と魔法があるという事を知った。魔法に関しては成人にならないとわからず、それまでに使おうとしても発動しないということも知った。なのでそこからはとにかく魔力の総量を増やすことに注力した。
勉学に関しては前世の記憶があったおかげでかなり楽だった。それもあってナーユは周囲から神童、魔導の申し子.......などと噂されるようになった。
そして今日。ナーユは成人の日を迎え、大勢期待を背負って王侯貴族が見守る中鑑定士によって、発現した属性を確認してもらおうとしていた。
「ナ―ユ様の属性は.....《幻》(EX)と《付与》(EX)です!」
「え!?」
王座の間に広がる一人の男の声とびっくりする少年の声。そして、それを聞いたその場にいた大勢の貴族たちがヒソヒソと話し始める。もれなく全員が一人の青年を見つめる。そのどれもが落胆や怒り、軽蔑の眼差しでだ。そして、そのどれにも勝る....それは殺気と錯覚するほどの感情を視線にのせて放つ男がいた。彼は、1000年以上もの歴史を持つ大国の王であり、世界最強に最も近い男でもあり、ナーユの父親でもある。
この国は.....特に王族は、国民や国を守るため攻撃性の高い属性、そしてそれと同時にその適性が求められる。現にその国王である彼は世界最強クラスの魔力を持っており、その属性も光属性(SS)や地属性(S)、火属性(A)、風属性(B)を持っている。過去を振り返っても個人で4属性を持っているということはかなり異質なようで、世間では『最も最強に近い男』と評されている
「オイ、鑑定士.....それは誠か?」
「は、はいいぃぃぃ.......」
その殺気は、常人が浴びると立つのもままならないほどの圧を感じてしまう。その証拠にここにいる過半数の貴族が失神、もしくは腰を抜かして失禁している。
「失望したぞ」
「え?.....いや、EXって」
「黙れ!一族の恥さらしめ!!お前の王位継承権は剥奪。しかる後世界最凶の未踏破ダンジョン『絶死』へ投獄する」
「なッ!?」
ナーユが何かを言おうとするが国王はそんな声に耳を傾けず実質的な死刑宣告を告げる。死絶......この世界において最も恐れられるダンジョン。文献には100以上の階層が存在し、その最奥にはかつて人種を全滅まで追いやったとされている魔族の王。魔王の遺体がそこに封印されていると書かれている
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「とっとと出やがれ!!」
ったくトロトロしやがって.....と愚痴をこぼしながら態度の悪い騎士がナーユを牢から出す
「クククッ.......あの『神童』さまも発現した魔法属性が攻撃性皆無のゴミ属性とは笑わせるぜ!オラッ!」
そんなナーユは今、豪華で煌びやかな王子様の服から一変してみすぼらしいボロい布切れを纏っている状態である。そんな状態のナーユを見て、騎士は嘲笑い足蹴にする。
(余程俺に恨みでもあるのか......まぁ、王子で神童で魔力すらも父に迫る勢いだった俺に嫉妬心を募らせるのは当然か?はたから見れば何もせずに楽して得た勝ち組のそれだ。俺だって騎士と同じ立場ならそうしていただろう)
「........」
「オラオラ!何も言い返せないか?言い返せないよな!だってお前は生きる価値すらないゴミだもんな!」
下品な笑い、暴行、自分が相手より劣っているとわかった瞬間これか.....
案外この国が廃るのも時間の問題なのかもな
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
ギィィィ..........ドンッ!
蝶番が軋む音とドアの閉まる大きな音と共にダンジョンの内と外を門は閉じられた。あたりを見回すと一目見ただけでわかるほどの魔力濃度の濃さ.....濃すぎて通常見えないはずの魔力が赤紫の煙と化してしまっている通常この濃度の魔力の中に居れば数分で体内と対外の魔力濃度の差によって体外の濃すぎる魔力が体内に入り込み、人は爆発四散してしまいう。そうでなくともこんな環境に置かれた魔物たちは凶暴化、あるいは他とは違う真価を遂げてしまっているかもしてない。
「えっと、取り合えず今俺にできることと言えば.......ステータス」
そう唱えるとレオンの前に長方形の半透明な板.....ステータスプレートが現れる
_________
ナーユ
年齢:15
種族:人種
属性:幻(EX)、付与(EX)
魔力量:SS
装備:ボロい布、折れかけたロングソード
《称号》元神童、堕ちた神童
_________________
(こ、これは........酷い。主に称号の欄が)
「しかし.....このEX。もしかしなくてもこれエクストラのEXだよな?」
そういうと幻(EX)をタップする。
________
幻魔法(EX)
想像したものを任意の相手に見せるだけの魔法。実体がなく、籠めた魔力以上の魔力で抵抗されるとすぐに霧散する
__________________
フムフム......
(まぁ想像通りのものだな)
「次は、付与魔法だ」
幻魔法と同じようにステータスプレートの付与魔法の欄をタップする
________
付与魔法(EX)
術者本人が使う事ができる魔法のみ、任意の相手に付与が可能な魔法
_______________
「ん?」
ここでレオンは違和感を感じる。
「あれ......この付与魔法に関する表記間違ってないか?」
それは本当に些細な違いに過ぎない。しかし、もしこの表記が正しければ人種の今までの常識が覆る
人種の付与魔法に関する定義はこうだ
『無属性の強化魔法のみを対象に付与する』
(この違いは些細にすぎないがその結果は全くの別物だ。もしこれが本当なら.....それに付与を施す対象。これもかなりアバウトだ。もしこの対象が人やモノ以外にも対応するなら.....例えばこの世界にも付与できるのでは?)
ナーユは徐にこのダンジョンに入る前に渡された見るからにおんぼろのロングソードを鞘から抜き出す
(このおんぼろのロングソード....この世界にはそう定義されて存在している。ならこれに幻魔法で考えた最強の一振りを付与したら?......それはどうなるんだ?)
「考えるよりまずは実践だ。想像するのは......そうだな、前世のラノベでもよく見かけた勇者が振るう伝説の聖剣エクスカリバーにしよう」
魔力を練り、使うと意識するとそれは事象となる。
幻と付与それを同時に発動させた瞬間凄い勢いで体内の魔力が消えていくのを感じる。それはしばらく続き、あと少しで意識が刈り取られる瞬間まで吸い取られる。
......しかしそうはならなかった。あと少しで魔力が尽きるというところで魔力の減りは止まった。そして、その手にはオンボロのロングソードは無く、その代わりに神々しい光を纏った純白のロングソードが握られていた
「名付けて『創成魔法』成功だ........」
そこでナーユの意識は途切れる