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六月三十日 ②

すいません、投稿間違えてました。


明日から毎週投稿に切り替えます。

よろしくお願いします。

 叫び声が人気のない校舎裏で木霊していた。

「ひどくないっすか!?ひどくないっすか!?ひどくないっすか!?」

「ひどくないっすかじゃないよ!お前は忍者かなにかかよ!!背後に立つな!急に喋るな!!驚かすなぁあ!!心臓破けるか思ったわ!」

 背後から急に話しかけてきたミイカを反射的にぶん殴ったのが、この騒がしい怒鳴り合いの火蓋を切った原因だ。


「あぃえええ!?忍者!?忍者どうして!?」

「あぁ、もうなんかお前の情けない叫び声聞いてたら安心してきた・・・」


「はぁ!?扱いひどくないッスか!?先程の先輩の後輩の扱いと比べて、私の先輩の私の扱いひどくないっスか!?情けないってなんなんスか!?」

「スティスティ」


「加害者が言う言葉じゃないッすよ!!」


 ぷんすかぷんすかと、うっすら小麦色の健康少女系少年が怒る。

 ・・・スカートや言葉遣いは完全に少女なのに中学生の少年なのだから、脳がいつもバグりそうになる。

 

 ちなみになぜ、ミイカがここにいるとかというと、中学校と高校が合体してるからだ。ここは俗にいう、完全型中高一貫校なのだ。


 ・・ミイカは頭を抱えうがーと怒りを顕にしていたが、ふとその動作を止め、唐突にニヤリとして。


「はぁ〜。私にそんな口聞いていいんスかぁ?」

「なんだよ、お前に弱みなんて握られてる思い出はないんだが」


 ごそごそとミイカは、おもむろにポケットに手を入れ中から財布を取り出す。

「・・・金?」

「んな、即物的なものじゃないっスよ。はいな!これっス」


 手をチョキの形で挟んで一枚の紙切れをドヤ顔で取り出した。

「今週の日曜日にある高校ダンスの地区大会チケットッスよぉ。良いんスかぁ?誘ってあげてもいいかなぁと思っていたけど誘ってあげないっスよぉ?まぁ、先輩こういうのに興味なさそうではあるけ...」

「でかしたミイカ。悪かったミイカ。許してくれミイカ。」


 そのチケットを握るミイカの手を上から握り、頭を地面こすりつけ膝と肘を土に埋める。

 全力だ、全身全霊全力投球伝われ謝罪心のフルスイングホームラン。

 きっとこれで、今さっきまでの雑な扱いムーブは帳消しになり、世界はあのひどい扱いをしていたことを抹消してなかったことになるはずだ。


 いや、うん、ごめんなさい。


「・・・は、え・・・えぇええええ!!!」

 流石にやらかしたと思い冷や汗を流す俺に手を握られたミイカは、素っ頓狂な叫び声を上げる。

「な、なんだ?」

「あ。いえ、その、先輩はこういうのあんまり興味ないと思ってたから・・だから、ホントは誘う気なくて、母と行こうと思ってて!?あ、あれは売り言葉に買い言葉の市場の競り合い合戦の末路といいましゅかぁあ!?」

 ミイカが顔を真赤にして、しどろもどろに目を回し言葉を紡ぐ。


 その言葉が、意味することは・・


「え、無理な感じ?」

 今さっきのは、とっさに出たからかうための言葉で、母と行くためのチケットだから先輩とは本当はいけません・・ということだった。


「いぃえ!!先輩が来てくれるなら母を説得して、諦めてもらいますので大丈夫ですぅ!?」

「いや、あのミイカ?断りづらいなら、別にいいからな?断られても仕方ないで引き下がれるし、そんなことで理不尽に怒らないからな、俺は。」


 ダンス部の出る大会。それを見ることによって、月姫の生活を行動を見ることによって、吸血鬼バレした理由発見に繋がる可能性は高い。


 だが、まだ一回目だ。


 一回しか殺されていない。

 二回目を迎えずに、終わらせれるならそれに越したことはないが、ミイカに無理強いさせるのも気が引ける。それに、これが本当に吸血鬼バレにつながるとも限らない。無駄になるかもしれないのに、可愛い後輩を不憫な気持ちにさせるのは申し訳がない。


 そんな風に思いながら、口を開くが。

「なんだか、最初の方の会話を忘れたのかよ案件なことを先輩が考えてそうですけど。先輩といけるなんて、私からしたら相当棚ぼたなんで大丈夫スっす。母もちゃんと説得するっス。無問題ノープロブレムです!」

「そ、そうか」


 鼻息荒げて、そう詰め寄られれば何も言えない。

 ・・はっきりいって、そこまでミイカが俺に執着して一緒に行ってあげると言われている理由がわからない。全く一切と言っていいほど見当もつかない。


「じゃぁ!!日曜日!時間と集合場所はメールで送るっス!」

「あ、あぁ、頼んだ。ありがとな。」

 だが、とりあえず、月姫の俺が知らない土日の空白がわかるのだ。

 これでまた一歩、吸血鬼バレの原因解明に近づいたと思おう。


「うひひひ!!やったー先輩とお出かけだーッス!!」


 とてもうれしそうに、ぴょんぴょんと跳ねながらクラスに戻っていく後輩に、ちょっとクスリと笑みが漏れる。


「あんな喜ぶとか、面白いやつだなぁ」

 なぜあんなにも喜ぶのかの理由がわからずじまいであるが、後輩として弄りがいがあるし、元気いっぱいで可愛げがある。男の子だから、あまり気を使わないでいいのもありがたい。

「いい後輩に恵まれたもんだ、ほんと」

 予鈴がなり、昼休みの終りが近いことを知る。


 月姫の練習見る前になんでもいいから、間食を食うべきだったとお腹を鳴らして後悔しながら、それでも少し機嫌よくクラスへと戻った。


 ・・食いそびれた。

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