6.
「それじゃ、オレは出かけるからアンタは大人しくしてなよ」
「え!わたしもつれていってよー!」
ジャージを着て出かけようとする玲を、まこは引き留めていた。
「無理無理、昼には一回帰ってきてやるから」
「やーだー!ひとりにしないで!」
「う…!絶妙に置いて行きづらいこといいやがって」
「いっしょにいく!」
いつまでも離れないまこに根負けしたのか、ため息をつきながらも玲は背負っていた大きなカバンをまこに渡す。
「じゃあ、これ背負えるか?」
「うん、へいき」
「んで、振り落とされるなよ?」
「うん!……うん?」
「じゃ、試しに一件目行くか」
「はっ、はやいぃぃぃ」
「これでも遅くしてるんだけど?やっぱり帰るか」
「かえらないぃぃぃ!」
玲とまこは自転車で街を駆け抜けていた。
玲の後ろにまこがしがみつく形だ。
そしてまこの背負った大きなカバンには、先ほどファストフード店で受け取ったハンバーガーセットが入っていた。
「ん、ここだな。おいアンタ、着いたぞ」
「はー、はー!」
「いやそんな疲れることでもなかったろ…とりあえず降りてくれ」
息を切らせながら玲にしがみついていたまこは、ゆっくりと自転車から降りてカバンをおろす。
玲は慣れた手つきでカバンの中からハンバーガーセットを取り出すと、目の前の家のチャイムを鳴らした。
「お届けでーす」
「おや、ずいぶん若いね。ありがとう」
「どうもっす」
玲が戻ると、まこは不思議そうに首を傾げた。
「ごはん……」
「だからさっきも説明したろ。ご飯を届けるとお金がもらえんの。お金ってわかるか?」
「おかね?」
「ああ、そっからか…」
玲はこの世界の通貨の仕組みをざっくりと説明する。
確か歴史の授業ではマンモスを狩っていたような時代にも石の通貨が存在したらしいが…まこのいた世界はどれだけ野生なのか、想像できなかった。
「んで、そのお金で飯を買うわけだ。わかったか?」
「うん、おかねってべんりなんだね」
「その分金がないと何にもできないけどな…」
玲は自分の財布の中身を想像してげんなりした。
正直、今の玲にまこを養うだけの余裕はない。
何か策を考えなければ2人揃って飢え死にだ。
「ま、とにかく今日は稼げるだけ稼ぐか。アンタは別に部屋に戻ってもいいけど?」
「やだ!ついてく!」
「……そ、無理すんなよ」
その後も玲はひたすら自転車を走らせ続けた。
まこはひたすらにしがみつき続けた。
いくら暑さが落ち着いてきた季節だとしても、十数件の配達をこなせば息は上がり汗もかいてくる。
少し休憩をしようと思い、コンビニで2人分の軽食を買って公園へと向かう。
「おいしー!」
「そりゃよかった、喉に詰まらせないように落ち着いて食べろよ。いやホント、可能な限りゆっくり食べてくれ」
今の玲の財布におかわりを買う余裕はない。
夢中でおにぎりを消費するまこを見て、玲は自分の分をひとつ、そっとまこの分にくわえた。