動画04 キャンプ動画見てると自分もやりたくなるやつ
「すまないなジーク、うちはペット禁止なんだ」
一言で言えば宿を追い出された。一応、相棒なんだが実際迷惑が掛かるので仕方がない。それに丁度良かったかも知れない。というのもテイマーじゃない者が従魔を飼うには多額の税金を納めないとならないため結構稼ぐ必要があるのだ。
C級である俺が大金を得るには遠出しなければならない。
そしてこの遠征を決めたのはパトだけが理由じゃない。出不精の俺だが元々行く気になっていたのだ。何せ俺は今、キャンプ動画に嵌っているのだから。
パトの存在がバレて追い出される前、暇を持て余した俺の手にあったのはやっぱり銀の板。また胸精霊が出てくるかと期待したけど、現れたのがオッサンの精霊でガッカリしたのは嘘じゃない。
オジサンを眺める趣味は無い。眼を板から外そうと思ったが広げられた道具が俺の興味を引いた。
「キャンプってやつか」
野営と違って外で一時的に生活することを愉しむとかいう都心部で流行ってる遊び。アホらしい野営など遠征すれば嫌ほど味わえる。都会人とは物好きな奴らだなとちょっと小ばかにしていたが、揃えられた特殊な道具を見れば目的が違うことを理解した。
ホントにワイルド、自然を愉しむのだと。
ランプを置いて満点の星空の元でコーヒーを嗜むオッサン。ゆったりとした音楽に自然の音が調和し、リラックスした雰囲気だ。暗闇の中でパチッと薪が弾ける光景。調理器具の上に乗せられたのは脂がのった旨そうな肉。そこへ容赦なく掛けられる蕩けたチーズと濃厚そうなソースのコラボレーションに──
「ゴクッ」
思わず喉が鳴った。右足を噛んでくるパトが気にならないほど魅入られる。
そして気づけば俺はそれっぽい道具を買い揃えていた。店で食う方がいい?違うのだ。素人は黙ってろ。こいつには真似したくなる魔力があったのだ。
◇◇◇
「あの、ジークさんその荷物は一体……」
「遠征予定だ。ラギア平原の依頼書片っ端から貰えるかナタリアさん」
あっそうそう評判気にしてトイレに引きこもったりしたけど、世間は俺が思っている以上に俺の事などどうでもよかったらしい。
全く絡まれることなく逆に悲しくなった。そしてむしろ、的確に噛んでくるパトの方に話題を持ってかれている現状である。
「おい、あの犬……」
「ずっと主人の足噛んでね?」
「絶望的に懐いてないが大丈夫なのかあれ」
凄いなパト、ギルドにいる冒険者達の視線を釘付けにしている。時の人ならぬ時の犬だ。ああ、分かってる決して良い注目じゃないってことは。
でももう俺にこいつは捨てられない。〇ダースを全話見た俺には愛犬家魂が宿っているのだから。
「えっと依頼書用意するのは構わないんですけど」
もじもじナタリアちゃん、可愛よ。俺冒険者として成功収めたら絶対告白するんだ。ナタリアちゃんが決意を固めたように俺を見た。
「らっラギア平原ってそこですよね?」
うん、だって目的キャンプだもん。それに迷宮と町を周回する俺にとっては立派な遠出である。思ってたのと違ったらすぐ帰れるしね。
見渡す限りの平原、魔物の姿がチラホラ見えるここがラギア平原。確かに町から近いけど広大なのでもう見えない距離まで到達して、ちょっと隠れられる場所にとてかんとてかんと俺はテントを打ち立てた。
最近、画面下のバーを弄れば時が戻せることに気づき、それを使って再現できた。日が落ちてしまったが椅子に座ってコヒーを呑む。あっコヒーっていうのはそういう飲み物だ。オッサンが黒い水を飲んでいたので代用した。
満点の星空が美しくパチパチする薪にリラックス。でも食事の準備をしようとして俺は肉を買い忘れたという失態に気づいた。
「あっやっちまった」
だが、今日は真っ暗だし獲物も狩れないだろう。明日から頑張る。
「あれ?パト」
そういえば足が軽いと思ったらパトがいない。どこだとキョロキョロすれば引きづってくる音。小さいが飛竜っぽい死体を運んできた。
え?飛竜って小さくてもB級相当じゃなかったっけ?いや落ち着けこんな場所に飛竜がいるわけないし、何か見たことない新種の鳥だろう。何でか炎魔法喰らったみたいに焼け焦げてるのか謎だが……。
「はぐはぐはぐ」
と目の前でメッチャ旨そうに食うパト。それをじっと見ているとしゃあねえなっと立ち上がり俺の前にポトリと骨付き肉を落とすパト。
あれ?飼われてるの俺じゃね?
思わず手に取ってしまったが、これ食っていいんだろうか。確かに焼けてるが魔物の肉って不味いっていうし。
「はぐはぐうまっはぐ」
今、パト喋らなかった?ぐぅううっと鳴るお腹。保存食はあるがやっぱりお肉を食べたい。一口なら大丈夫だろうと俺はハムった。
「うっまああ!」
余りの美味さにガツガツいく。俺は余り多くを語らない男、ソロC級冒険者ジーク。この後、俺は治療院に直行することとなる。
近くなければ死んでいたところだ。キャンプ初心者は近場にすべきと絵で示してくれたおっさんに深く俺は感謝したのだ。




