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動画21 有名映画曲をヴァイオリンで弾いたら外人が寄ってきた 

「ジーク!」


「アホ、ジークだ」


「誰がアホだ」


「きゃああアホが移るうう。皆逃げろおお」


「なんつー失礼な餓鬼(がき)どもだ。こら待ててめえら」


 ミリーさんとデートをやった一週間後、フェアリーケイブと『転移鏡』で繋がったパーネ婆さんが運営する教会に俺はいた。


 営業初日は案の定閑古鳥が鳴いたが面白半分で来てくれた奴がいて、何かものの数日で想像の何倍も客が来るようになってしまった。


 当然、俺の浅はかな考えの結果一人で店は回らなくなり、人を雇う流れになったわけだが──


「あれ?ジーク来てたの」


「ああ、おはようミリーさん。今日からだけど本当に大丈夫か?」


「勿論よ。接客業は得意だから任せなさい」


 なんとミリーさんがウエイトレスとして来てくれることになった。治療院の勤務日数を減らすことをOKしてくれたカーネル委員長には感謝が絶えない。


 後、ミリーさん普通にここに住んでた。彼女のパジャマ姿……神である。


「あーまたジークとミリーがイチャイチャしてるー」


「全く参るよなー毎朝毎朝っ」


「このマセガキども!こっち来なさい」


「きゃーミリーが怒った」


 キャッキャッと騒ぐキッズ達、教会っつうより孤児院である。あの婆、あんななりして慈善家だった。そして策略家。


「ねえ、ジークご飯まだー」


「食いたきゃ手洗って座って待ってろ」


 気づけば俺がこいつ等のご飯係になってる。まぁ、新作商品のレビュアーにもなるのでいいんだが。


「お店開くの昼頃でしょ?貴方仕込まなくて大丈夫なの?」


「一万食くらいあるから大丈夫だろ」


 そう返せば呆れたような溜息をつかれた。


「よくそんなに収納できるし、それだけ同じものを作れるわね」


「袋役が俺の取り柄だしな。地味作業も元々得意だし、慣れてる料理なら動画見ながらできるし全然苦じゃないさ」


 スキル『アイテムボックス』に全力で乗っかった商法。ペース乱されるのが苦手なのでこれが上手くいってなきゃ辞めてた。


「ねージークあそぼー」


 おさげの少女が俺の裾をクイクイっとする。


「お前ら喰いたいのか遊びたいのかどっちだよ」


「どっちもやりたい!」


 キラキラとした無垢な目、こんな瞳で見つめられては振り払えない。


「しゃあねえ、ならイケてるダンスを教えてやる。いいかこうやってポーズをとって

 アクミョウ退散!アクミョウ退散!素晴らしきかな オンミョウ師っ」


「この(たわ)けもの」


「イデッ」


「その奇怪な動きをちび達に仕込むのを止めんか」


 出たな婆。何で婆がネグリジェ着てんだよ。朝から酷いもんを見た。


「お主、わしが心すら読めると言うたこと忘れたようじゃの。全国のお婆様を敵に回したと思う事じゃ!」


 いいよもう相手が婆さんなら。俺も腹が立っているのだ。色々好き勝手にやってる挙句、あろうことかこの婆さんの方が儲けているのである。お土産と称したミニ魔道具が好評で爆売れ。


 それが客を呼ぶ一因にもなっているが軽い嫉妬を覚える。婆さんには負けない。向こうもそう思っているのかバチっと火花が散る。


「レアドロップの小僧っこ」


「んだよ」


「商売は譲れぬ闘いじゃ。しかし共闘すべき点もある。我が孫娘に送るためこのウエイトレスの服を贈呈しよう」


 スッと手を差し出し、俺達はぐっと握り合った。


「なんでそういう所だけ仲いいのよ二人とも」


「じゃあ、まぁ飯食うか」


 待ち呆けていたキッズ達が喜びの声を上げた。ボッチ勢だがこういうのも悪くないと子供たちの乗り物となったパトを撫でてやった。


 ◇◇◇


 食卓を囲む子供たちの食欲は旺盛(おうせい)だ。育ち盛りというのもあるが異界料理の受けがいい。これはフェアリーケイブに訪れる客も同様で初日からドハマりし毎日押しかけてくる奴までいる。


 素晴らしい一品。だからこそ浮かんだのが何故このような料理がこちらの世界にはないのだろうという疑問だ。


 確かに俺は料理上手を自負しているけれどプロってわけじゃない。だから精霊料理は料理を齧った者なら誰でも再現できるものだし、素材だってちゃんと存在する。


 同じレシピがとは言わないまでも似たような味付け、このクラスの料理がこっちにあったって可笑しい話じゃない。なのに……ないのだ。


「ジーク、本当に美味しいわ」


「おいしー」


「ジークの料理さいこー」


 何で何だろう。料理なんだ気軽に広めたって問題ない。そう思う一方で何かを削り取ってるような複雑な気持になる時がある。まるでメルト玉のような消滅させる理外の力を使ってしまっているような。


「はあーお腹パンパンだ」


「食べ過ぎだよ」


 太っちょの子供が腹を叩き、そう言う女の子もペロっと平らげてる。


「ジーク?どうしたのよボーっとして」


 心配気に見るミリーさんに俺はらしくないと息をつく。アホな俺が考えることじゃない。喰った奴が笑顔ならそれでいいじゃないか。


「ちょっと新メニューのこと考えててさ」


「あんまり頑張りすぎたら駄目よ。貴方って根詰めすぎなところあるから」


「気を付けるよ。食い終わったみたいだし片づける」


「待って口にソースがついてる」


 おっふ。


「ペッじゃ」


 婆さん、応援しろよそこは。


 椅子や机を増やしただけだがフェアリーケイブはそれだけで壮観となった。開店ギリギリまで料理を補充しておく、アイテムボックス様様である。


 問題があるとすれば作り置き分皿を用意しないといけないってことだったが、どうせ客の大半が冒険者なので紙皿にした。お洒落にしたところで割られる。


「ねえ、もう少し並んでるわよジーク、4PTくらい」


「マジかよ」


 まだ一週間と経っていないのにこれ以上人気を博したら考えなくちゃならないかもだ。接客作業だけでも俺とミリーさんの二人では回らない可能性がある。とはいえ、その答えを出すのは後。長い一が始まる。


 30層がギリギリで闘いに疲れたPTや余裕で通り抜けられるが英気を養うPT。もう噂を聞きつけてきた新しいもの好きなどが顔を連ねている。


「おい、店長!ここには酒はねえのか」


「ないって。迷宮中だぞ?死ぬ気なら持ってくるけど?」


「この人の言う通りよリーダー。迷宮で酔いつぶれた奴を運ぶなんて私は絶対にごめんだね」


 姉御肌っぽい女戦士が飯を報張りながらリーダーである男を(なじ)り、その横の小柄なドワーフもその意見に賛同した。


「ガハハ、ヴィヴァロの言う通りだ。これじゃあ何のために迷宮入りしたか分からんぜリーダー」


「そんなこと言っちまったら迷宮で料理店に入るほうがどうかしてるだろ」


「迷宮で料理屋やってる奴の方がいかれてるさ。ねえ主人、アタイ達の仲間にならないかい?食事係として」


 煽情的(せんじょうてき)な格好してる女戦士ヴィヴァロさん。かつての俺なら(なび)いてたかもだが、今の俺は迷いすらないと首を振る。


「悪いが勘弁。ある意味そういうのから離れるために店開いたからな」


 そう言って接客するミリーさんを見てしまう。


「奥さんか」


「いや、まだ恋人だけどその予定だ」


「くっく面白いではないか。妻を射止めるために迷宮に店を出した男。いい酒の(あて)になりそうな話じゃわい」


 このチームはゲラゲラ笑うこのドワーフのおっさんと女戦士ヴィヴァロ、そして武道家の出で立ちをしたリーダーの男の三人脳筋PTのようだ。


 リーダの男がパスタ料理を口に掻きこんで、一本垂らしたままもごもごと話してくる。


「しかし、飯がうめえのもそうだが、この曲は何だ?最高じゃねえか」


 彼が言うのは勿論、銀の板を使ってかけた曲のこと。


 タイトルは”有名映画曲をメドレーで弾いたら異界人が寄ってきた”無論読めないが、もうこういうしかないだろう。


「精霊の唄です」


 弦楽器による不可思議な音色。曲の力は物凄く、それだけで世界が変わり、フェアリーケイブに異界のような雰囲気を(もたら)していた。


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