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動画17 アクミョウ退散 陰陽師 後編

「とりあえず待ってみるよ。魔道具である以上、源は魔力だろうから効果時間はあるはずだろ」


「そうよね。一生消えなかったらそれこそ悪霊よね。ねえ、誰かに相談するっていうのは?」


「あーっとそれはなしの方向で頼む。思いっきり持ち歩きまくっといて何だがこの銀の板あんまり知られちゃ不味いものなんだ。だから内緒の方向で」


「レジェンダリー級だものね。精霊界覗けるものではあるし……私はいいの?」


 彼女は銀の板の存在を知ってる人だし、それに


「ミリーさんはかっ彼女だし」


 恥ず。やっぱ苦手だ俺。


「ふーん、じゃ!デートしましょ。この日は空いてる?」


「俺はいつでも暇だから。予め言ってくれるならいつでもいける」


 遂にキタ。人生のビックイベント、初デート。アイツらに混ざって小躍こおどりしたい気分だ。いや、今は辞めておこう。


 資金は作ってる。結構高級なところでも大丈夫。だが、ぶっちゃけこの町は田舎町だ。デートするような場所ってどこだ?


 こういうのは恥を忍んで聞いた方がいい。でなきゃ(ろく)なことにならない。


「ミリーさんはどこ行きたいとかあるか?」


「んーやっぱり迷宮かな」


 迷宮?それってデートなの?


「ほら、私元冒険者って言ったじゃない。久しぶりに潜ってみたかったの。かといって一人じゃあれだし」


 成程、引退したらそんな感じのことを思ったりするものなんだろうか。確かに危険性を無視してしまえばアトラクションみたいなものでもある。


「飯とかいいのか?高級レストラン的なところとか」


「私そういうの息詰まっちゃうタイプだから。それに料理なら貴方のものの方が美味しいし。ねえ、お互い作ってきて食べるってのはどうかしら?セーフティールームなら安全だし」


 ああ、それなら。


「じゃあ俺の店で食うか」


「店?」


 ホームレス卒業だとナチュラルに発表しよう。


「俺、迷宮に料理屋出すんだよ。開くのはもうちょい先になるだろうけど」


 それは壁のある場所で寝泊まりするという意味であり、俺の文明レベルがアップすることを表している。つまり、彼氏力急上昇である。


 狙うはギャップ萌え。宿無し男から家持ち職持ち男への華麗なる転身。期待値が低いから壁と天井あるところで寝泊まりしてるだなんてジーク素敵、っとなる。あれ?ジト目だ。


「ねえ、ジーク貴方実は魔物が化けてるってオチじゃないわよね。反論する前に後ろ見て」


 バサバサと飛ぶ新しい野放しの魔物キー。踊り続ける悪魔的モニュメント。また勝手に光りだした銀の板。転がる謎の薬。何か否定できない気がしてきた俺だった。


 送るのをミリーさんに固辞されたので彼女とその場で別れ、一人となった俺は未だ踊る幻影を見つめこいつをどうしたものかと考える。


 アホほど目を引くのは確かだ。逆転の発想。隠すのではなく、いっそ看板にしてしまうのはどうだろう。


「って運べねえんだった」


 じっと考えてから何となく手を(かざ)してみる。収納と唱えると消えてギョッとした。


「マジか、入ったぞ」


 ボックスから念じるとまた出てきて表示された。どういう仕組みか不明だが動かすことができるようだ。試してみるものだ。これならと俺はハンマーと木材を取り出した。


『フィストラル』で雑用係だった俺にとっては日曜大工作業もおちゃのこさいさいなのだ。囲ってしまえば看板っぽくなるはずだ。


 普通の店なら回れ右する迷い込んだ冒険者達もこのイカしたダンス集団には足を止めるはず。攻撃される恐れもあるので絶対に店って分かるように大きく作る。


「できた」


「キー」


「どうだイカす看板だろ?キー」


「キー……」


 キーも最高過ぎて直視できないって言ってる。流石は俺の飼い蝙蝠(こうもり)である。いいセンスだ。


 しかし写しだせるのはこのオンミョウだけなのだろうか。もしこれが操作できるようになって高速紙芝居を映し出せるようになれば子供とかすげえ喜ぶかも。


 愛犬家を増やすために是非ともあの物語を布教したい。


「席から動画見れたら糞面白そうだよな」


 できるか知らんけど一応そういうことができる設計にしようと紙に設計図を描いてゆく。


「名前は精霊が入った方がいいよな。フェアリーケイブに決定っと。後はどうしようもねえやつ以外は自作するか」


 自作→メニュー開発→30層までいって設営→換金して木材購入。できればデートまでに形だけは整える。


 よし、予定が決まった。何だか楽しくなってきた。そして店主として俺はこの踊りをマスターしないといけないだろうと音を最大にして映像の輪に加わった。


「オンミョウジ! アクミョウ タイサン アクミョウ タイサン」


 確信があった。これは流行るという絶対的な確信が。


 ◇◇◇


「って訳で木材買いに来ました」


「来んなよ!忙しいつっただろ」


 怒鳴りながらも資料をとる動きをしてくれるのは商業ギルドのエール君。こっち側のレギュラーとなりそうだ。


「ってか聞いたぞお前。マジであの土地を買ったんだって?ローン何か組んじまって金は大丈夫なのかよ」


「何とかな。まぁ飯屋が軌道に乗ってくれねえと返済は大変だろうけど」


「なんつーどんぶり勘定だよ。それで木材ってまさか自分で作るとか言わないだろ?」


「できる限り自作する予定」


「……アンタって冒険者だよな?」


「甘いなエール君。俺は工作も得意な冒険者だ」


「雑用係だったんだな」


「しょうがねえな。そこまで言うなら俺が作った看板特別に見せてやる」


「何も言ってないんだが」


 しゃあなし。特別だ。後、この状態なら他の人に見えるかの実験も兼ねてる。


「名前はフェアリーケイブ。看板の踊る妖精さんだ」


 おっ反応した。ってことは3D状態だと見えてるようだ。どうやら余りのカッコよさに言葉が出ないよう。


「マジで飲食店?」


「うん」


「でこれを使う?正気か?」


 どうやらお子様には分からないらしい、仕方ないと俺は耳打ちした。


「流行るぞ」


「絶対、無理だって!賭けてもいい」


「アクミョウ タイサン」


「教えようとするな!ギルドで踊るな!ほら木材の証文これな!お前もう向こういけって怖いわ」


 手厳しい意見を貰ったが俺には分かる。これは照れ隠し、踊るエール君の姿が。皆で踊るそんな未来図が俺の目に浮かぶのだ。


「おい、いい感じの雰囲気出してさり気無くこれ置いて帰ろうとしてるだろ。この不気味なの持って帰れ」


「っち」

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