表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/43

動画11 アルティメット通販 フィットネス・カリバー

「うわっ……混んでるなー」


 ルーティーン、蜥蜴(とかげ)の鱗の換金と手続きのためにギルドに来た俺だがズラっと人だかりができていた。番号札をとってその数字に顔を(しか)めつつもギルドにある魔物紹介図鑑で隠しつつ端の席で銀板鑑賞を愉しむ。


 コソコソしているのは流石にちょっと恥ずかしいから。言葉分からなくてもツボに入るものがあって偶にニヤけてしまうし。


 あの音が出る糸≪音出る耳栓≫を手に入れてからは、こうやって外でも周りを気にせず楽しめるようになった。待ち時間とかにホント丁度いいのだ。


 俺の好みは高速紙芝居とテンション高い奴。今見ているものもテンションがはち切れている精霊が登場している。


 多分、商人で商品を紹介していると思うんだが精霊界の道具が出てくるのは何に使うんだと想像するのが面白い。


 ”貴方の生活激烈ビフォーアフター アルティメット 通販。アルティメット通販を始めて 東大に合格しました 何て声まで届いてるぞ”


 声が通る若いお兄さん。こっちの商人はオッサンが多いがやっぱ精霊は感覚が違うようだ。スッとした衣服を身に着けている。何て紳士的なんだ。この人が詐欺さぎを働くわけないっていう絶対的な安心感がある。


 ”今日は記念すべき100回目、つまりはスペシャル、何と二つも出しちゃうぞ。今日ご紹介したいのはこちらの商品エントリーナンバー99、食べても絶対に太らないポテチ”矛盾の限界に我々は挑みました”


「へー」


 意味不なので説明は耳から抜けるけど、出てきた料理は上手そうだ。チップみたいなものをパリッと音を立てて精霊兄さんが食べて見せる。お菓子かな。


 ”ダイエットしてる時、これをついつい食べたくなる時ありますよね。でも、リバウンドしちゃうし……。そんな時、役に立つのがこの!絶対に太らないポテチッ!炭水化物、油、糖質を極限にまでカット!ある博士は言いました。これはもはやポテチに非ずと。欲しくなりましたか?ですが、まだ動画はそのまま!これは二つ揃ってこそ真の威力を発揮します。続いてエントリーナンバー100、振るだけで高度な運動ができる魔法の棒、フィットネス・カリバー”


「テンションたけー。何だそれ武器か?」


 黒い棒を振るとびよんびよんと振動して精霊の二の腕が揺れてる。


 ”たった一振りで腕立て1,000回相当に匹敵すると我々が子飼いにしてる博士は言いました。そしてこの二つを組み合わせると”


 横向きにごろ寝したお兄さん精霊が菓子を食べながら棒を振るという器用な事をしている。何してんだこれ。


 ”ダイエッター究極の夢!寝ながらダイエット。食欲を満たしながら運動ができてー気づけば憤っ!”


「おお」


 お兄さんの服がビリっと破けてムキムキボディーが現れる。凄いC級の俺でもここまでの肉体は持ってない。メッチャ強くなれるのでは。服破けるのは困るけど。


 ”モテモテボディーに!でもお高いんでしょう?そう思ったあなたに朗報だ。今ならセットで19800円、しかも驚くな税抜きだああああ。今だけ今この瞬間だけの割引だ。ツーベーの新機能即時購入ボタンを押して夢あるダイエット生活を”


 何かメッチャ押したくなるボタンが画面に出てきた。何回か押すと何か効果音が鳴った。あれ?何かやった俺?


「187番さーん!居ませんかー」


 ヤバ、俺の番と慌てて板を腹にしまって立ち上がる。


「あっ待ってくれ俺だ!」


 受付に行くとナタリアちゃんだった。


「「あ」」


 彼氏発覚、さっきぶりなので戸惑ってしまう。付き合うどころか告白もしていないので完全に部外者だが向こうもちょっとやりにくそうだ。


「あの……さっきは大丈夫でしたか?」


「ああ、問題なしだ。騎士団にも提出した。ホントに危ないものじゃないから」


「それは良かったです」


 ニコ。糞、やっぱ可愛い。マルス君と幸せになってしまえ。


「えっと、換金頼めるか?」


「いつもの蜥蜴(とかげ)の鱗ですね。どうぞ」


 そういって横にあった大きい機械を稼働させる。こいつはエクスチェンジャーっていう魔道具。王都へと繋がっていて素材の相場通りにお金に変換してくれる優れもの。えらい賢者様が作ったとかでかなりの貴重品。なのでこうやって受付の人の前でやるのが基本である。


 申告したドロップ品を入れるとポーっと蒸気を放って、チーンと鈴の音と共に自動でガラッと開いた引き戸。


 毎回思うがこんなに深くしなくていいと思うのだがと手を突っ込んでゴソゴソ。これでお金を取れば完了……完了……ん?金じゃない感触が指に当たって持ち上げればさっきの精霊が振ってた変な棒が出てきた。


 え?架空(かくう)がリアルになった。じゃない!俺の金は!?


「少なっ!まさかこれだけか?」


 アイツ食ってた菓子袋まで入ってて金が少ないんだけどまさか買ったことになった?何で銀の板がエクスチェンジャーとリンクしてんの?どうしてこうなった。


「あっ!おめでとうございますジークさん。魔剣と魔道具、同時引きなんて凄いじゃないですか」


「あのナタリアちゃんいつもより数万くらい報酬少ないんだけど」


「何言ってるんですか。魔剣が出たからですよ!滅多にないことなんですから売って億万長者になった人だって」


「これが魔剣に見える?」


 中央を持って軽く縦に一振りするとみよよよーんっと高速振動する。


「……」


「これが売れると思う?」


 みよよよーん。


「鑑定所への紹介状書いておきますね」


 誤魔化したな。ただ、これはもうごねた所でどうにもならない。少しでも高く売れる事を祈ろう。そしてリンクしたってことはもしかして繋がりがあると俺は一つの疑問を抱えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 記念すべき100回目にエントリーNo.99というのはギャグでしょうか? 通販はついつい気になってしまいますね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ