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動画10 味噌汁の精霊ミソシルっシー 味噌汁ぷしゃー前編

「ぶえっくしゅん」


 あれ?誰か俺の噂している?


「ジークさん、やはり貴方は……ドラッグを」


「いやただの風邪だから。ホントに治療薬だから信じてくれってマルスさん」


 前回の続き、騎士団の詰め所へと連れられているところ。俺が密かに恋心を抱いていたナタリアちゃんの彼氏さんで、ぶっちゃけると気まずい。


 ただ、好青年イケメンで騎士団のホープという有望株。一方、C級冒険者だが頭打ち。おまけに野晒し生活状態。


 諦めが付く差である。これは新たな恋を探そう。さよならナタリアちゃん、こんにちはそして結婚してくださいミリーさん。


「年は貴方が上でしょう。マルスで構いません」


「なら俺も」


「俺は騎士ですからそういうわけにはいかないんですよ。まぁお気になさらず」


 しかも、性格がいいとまできてる。どんな完璧人間だ。ぐぬぬ。


「着きました。ここがルゼリア騎士団詰め所。といってもこの町に住まわれているならご存じでしょうが」


 教会チックな見た目の宿舎。ルゼリア騎士団はルゼリア教会の子飼いだ。まあ神様信じてないし興味もないが。ステンド硝子(ガラス)に目を奪われつつも俺はマルス君の後を追う形で中へと入ったのだ。


 内部は縦に長い神殿のような空間。中央が広場になっていてそこで団員達だろう人たちが訓練に乗じている。その中で一際目立っているのが岩のような肉体を持つ大男。彼は一人で4人の団員を相手どっていてそれでも軽くいなしていた。


「あれがうちの団長です。先日、A級認定を受けた怪物ですよ。俺は彼のようになるのが夢です。あの巨漢(きょかん)であのスピードですよ、信じられない」


「おっそ」


「え?」


「あっ……いや、凄いなホント。凡人にはちょっと分からねえレベルだ」


「そっそうですよね」


 危なっとついでてしまった言葉を誤魔化した。でも、何だかショボく感じたのだ。調子悪いし感覚が狂ったんだろうか。A級の実力をC級の俺なんかが推し量れるわけないのに。


 マルス君に通されたのは取調室。来ただけで犯罪を犯した気分になる。


「そう固くならないで下さい。事実確認をするだけなので。後、申し訳ありませんが薬を一本預けて貰えますか?規則なので」


「ああ、好きに調べてくれ。何度も言うけどカーネル医療院の薬だ。向こうに確認とって貰ったら分かる」


「ええ、それは疑ってません。寧ろ貴方を助ける事になるはずですジークさん」


 どゆこと!?と首を捻るとマルス君が懐に薬をしまった。


「実はレベルプラスという薬物が出回っていまして、そういった薬の使用は証明書が必要って話に纏まったのです。ですから、どういう薬にせよあのような使用は避けた方がいいかと」


 ぐっ……。確かに我ながらアレはキマってた。


「それで実は貴方をここに呼んだのは聞きたいことがありまして」


「聞きたいこと?」


 スッと出された見知った顔が映る写真に俺は顔を(しか)めた。


「PT『フィストラル』。ジークさん、貴方はここに所属していたとナタリアから聞いています。フィストラルリーダー、ライエル・ハーストンについてお話を伺いたいのです」


 参った。忘れたい過去がまたやってきたと俺は写真に写る緑髪のイケメンエルフに溜息(ためいき)をついたのだった。


 ◇◇◇


 出されたお茶を(すす)る。対面に座ったマルス君が口を開く。


「ジークさん、貴方は勇者という言葉を知っていますか?」


「勇者?」


 聞いたことが無い。俺の様子でキョトンなのを理解してくれたか石板を見せてくれた。剣をもった英雄が竜を倒している絵だ。下手だな。高速紙芝居を経験する俺にとっては余計にそう感じられる。


「百年前の話なので無理もありませんが、世界に厄災が訪れた時、神から使わされた異界の使者”勇者”が救世主として遣わされる。俺達の本元、ルゼリア教会は神の信託を聞き、そのサポートが主な仕事です」


 成程、話が壮大過ぎて分からん。少なくとも俺にはまるで関係なさそうな話だが。


「それで?」


「信託がありました。勇者が再びこの地に転移すると。いや、既に転移しているはずなのですが……」


「その勇者とやらが見つからないと」


 コクっと頷くマルス君。これ部外者の俺に言っていい話なんだろうか。変なのに巻き込まれるのは勘弁なんだが。


「勇者は恐ろしいほど強者なのでそう簡単に死にはしませんが、この地の事を知らない異邦人です。接触した者よっては人類の敵に回る可能性も」


 なんつー厄介な。


「よく分かんねえけど、わざわざそっから話すってことは勇者とフィストラルが関係してるって話か?」


「話が早くて助かります。ジークさんもロメルタの迷宮はご存じですよね」


「中央にある難度B級の迷宮だろ?名前だけは知ってるが入ったことは無い。そもそもC級だから資格がないしな。ってまさかそこで行方不明か?」


 マルス君の乾いた笑みで察する。それは糞メンドクサイ。この世界の迷宮は文字通り迷宮なのだ。ルートはぐちゃぐちゃで地図が無けりゃ迷って死ぬ。


「信託では低階層に転移すると伝えられました。ですがそこに勇者の姿は無く、当時迷宮にいた者の誰かが拉致(らち)隠蔽(いんぺい)を図ったのではないかと」


「つまり、その容疑者の中にアイツらがいたって話か」


「はい」


 絶対に首を突っ込みたくない案件である。家帰って銀の板見てダラけたい。


「露骨に嫌な顔しますね」


「俺を追放したリーダーがいるPTだしな。擁護すらしたくない」


「ふっナタリアの言う通り貴方は正直の人のようだ」


 どうしてそうなると俺が困惑気にすると彼は口角を上げた。


「上手く取り繕えば彼らに不利な証言をし恨みを晴らすことだってできたはずでしょう」


「嫌いだが死んで欲しいとまでは思わない。ある意味ソロが向いてるってのを教えてくれた奴ではあるからな。それにソロである以上、あんたらみたいな組織を敵に回したら終わる。世界に根を張った大教会だろ?舐めやしないさ」


 ソロ冒険者は戦闘だけでなく色んな面で弱いと俺は学んだ。よって冒険するよりもルーディーン化して無理せず根を下ろすのが正解。冒険者としてはあれだがダラダラが俺の性に合ってる。英雄だの最強冒険者ってのは俺のがらじゃない。


「懸命ですね。教会は敵に回さない方がいい……本当に」


 ん?


「少し逸れましたね、早速聞かせて下さい。フィストラルのリーダーでありエルフでもあるライエル・ハーストンの人格」


「一言で言えば女好きで外面の良い陰険(いんけん)糞エルフ。これは恨みとか何でもなく男で裏の顔のアイツを見た全員が抱く印象だろうな」


「現在フィストラルのメンバー全員が女性というハーレムPTです」


 写真を見せてくれるが見知った顔と俺が抜けた代わりだろう新顔が入ってる。フィアって名前か。所属していた時から思ってたがハーレムとか後々面倒そうなのによくやる。


「勇者が女性であった場合どうでしょう?やはり狙うと思いますか?」


「稀代の女好きだ。ただ、結構な小心者でもある。自分より強い奴は美女だろうと絶対に引き入れない。トラブルになる種は徹底的に詰む男だ。教会と揉めると知れば真っ先に差し出すと思うけどな」


「女好きであるはずの彼が男である貴方を仲間に入れていた理由は?」


「付き合いは冒険者試験の時から。そん時はいい奴だったんだがな。俺を引き入れたのはアイテムボックスを持っているからだって後で分かった」


「アイテムボックス?」


「上級PTじゃ珍しくないが駆け出しPTでボックス持ちや代わりとなる魔道具を抱えてるPTってのは貴族くらい。色々と必要で極力(きょくりょく)荷を減らしたい女冒険者に人気、要はモテる」


 そして所持者は別にモテない。


「ああ……」


 察したというマルス君に俺は頭を()いた。


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