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ジーク、お薬キメながら知らぬ間に近所の四天王撃破

「わざわざ送ってくれてありがと」


「いや、俺も街に用があったから」


 パトは御留守番。まあ魔物除けをセットしたし大丈夫だろ。あいつ自身が魔物だけど。


「それじゃまた行くから。次は事故らないでよ。下半身ハイオーク」


「あはは、また」


 町までミリーさんを送り届けた俺はフリフリとその背に手を振り──冷静になってん?っと首を捻る。また行くから?もしかしてこれから定期的に薬を届けにくるってこと?


 いつの間にか定期購入に加入させられるやつじゃないかこれ。だから女の子であるミリーさんをわざわざ販売員として送り込んできたのでは?カーネル医師、怖。


 ちゃっかりお薬代取られたし、次で断るべきか。いや、待てジーク。考えろ。


 詐欺だとしてもハチャメチャに高いわけじゃない。この値段であんなに綺麗な女の子をお家(野晒し)に呼べるって思えば寧ろ安いのではないか。いや、しかし俺にはナタリアちゃんという心に決めた人が。


「あれジークさん」


 ナタリアちゃん!?こんなところで会うとかやはり運命で繋がって……って誰だその隣のイケメン。騎士の恰好をした紺色髪の好青年が傍に立っていた。距離の近さが二人の親密さを物語っている。


「ナタリア、彼は君の知り合いかい?」


「私がよく担当している冒険者のジークさんです。あっジークさん、こっちはマルスさん。優秀な騎士の人で、その……私の大切な人です」


 ピシっと先の事故動画のように脳がひび割れした。グハッ、ちょっと待てマジでシンドイ。これは失恋のダメージとは違うと膝を折る。


「ジークさん!?」


「どうした!」


 激しいレベルアップ酔いに近いやつ。またか。俺の身に一体何が起こっているのか。薬、薬と渡された注射を取り出して胸にぶっ刺してプシーと楽になる。あってよかったお薬。ふぅ、危なかっ……ハ!?


 ドン引きした目で見降ろされている俺。これは完全にヤバい薬だと思われてる。


「じッジークさんっ」


「貴方は……」


「誤解だ、これはカーネル治療院の薬で決して危ないものではグッ!?」


 マジか効いてないかも。もう一本とプシーっとキメると楽になる。ハッ!無言でじぃっと見られてる。


「ハハハッちゃんと打ててなかったみたいだ。かっ風邪かな?ごっごほごほ。グァッ!!」


 三連続とかマジかよ。いい加減にしてくれ。これやっぱ詐欺で中身、水なのでは。それでも耐えられず(すが)るように打ってしまう。あっもう大丈夫そう。助かったと安堵(あんど)した俺の肩にマルスさんの手がポンと置かれた。


「ジークさんだったか、とりあえず騎士の詰め所で話を聞かせて貰うがいいかな」


「ふぁい」


 ナタリアちゃんの彼氏発覚から立ち直る間も無く俺はドナドナされたのだった。


 Side 四天王視点  登場と共に退場する四天王達


 四天王、それは魔物界において誰かに決められるものというわけではない。つまりある程度の実力があって当人達が名乗ってしまえばそれはもう四天王なのだ。


 エルフの森より遥か先にある一帯を牛耳る魔王級に繰り上がった4人の主たち。彼らは古い付き合いで仲良し四天王である。今日も同じ食卓を囲んでいた。


 蝶々の魔物、モルフォンの進化系モルフォンZのモルルーモ・モールルー


 猪系の魔物、プンパの進化系プンパキングのパイロン


 小鬼の魔物、インプの進化系ケイオインプのアルトバイエ


 そして、彼ら4天王最強であり結集を呼び掛けた吸血鬼のマスタード。横文字だらけでややこしい?大丈夫、覚えなくていい。彼らの大半はほぼこの回で消滅することになるのだから。


「ぐっははは、美味い美味い美味すぎるぞ」


 四天王にして最弱、パイロンが肉をかっ喰らう。最弱なだけあって食うだけしか取り柄がない。魔王級になったとて強さが上がるとは限らない。こいつは食欲。とはいえ体が大きくなるのでハッタリはかませる。誰も言わないが数合わせだった。


「食い過ぎだぜパイロン。肝心な時に動けなくなるってーの」


「肝心な時とはどういう意味モル、アルトバイエ」


「お前だって分かってるだろ?モルルーモ。魔王種になる奴らが増えてる。こいつは人に攻め込む時が来たって魔界の思し召しだってな」


 事実、A級に至る魔物は増加傾向にあった。間違いなく何かが起ころうとしている。そして人類はまだその動きに気づいていない。


「アルトバイエの言う通りだ」


 たった一人けた違いの空気を放つのは最強であるマスタード。吸血鬼である彼は犬歯を覗かせ邪悪な笑みを掲げた。


「闘いの時は迫っている。だが、先陣を切るのは我々でなくてもよい。人というのは狡猾(こうかつ)だ。何を仕掛けてくるか分からぬ、まずは様子を見るのだ。魔王種に成り立ては気が(たぎ)るというもの。必ず突っ込んでくれる愚かな者が出てくれるからな」


「流石は私達の知将、マスタード。一味違うモル」


「ふっ(くつがえ)すぞ、四天王が()ませという常識を。我ら4人で大魔王を目指すのだ」


「勿論モル」


「任せろってーの」


「美味っ!この肉美味っ」


 魔物ながらエモい空気を放っていた4名だがマスタードがいち早く異変の到来(とうらい)に気づいた。


「ん?」


 何かがこっちに向ってきている。他の魔王達も気づき、食事を続けるパイロンを除き立ち上がる。一直線に飛来するのは小さな小さな魔法玉。だが舐めてはいけない、地を削るその姿から只事ではない威力が伝わってきた。


「見た事ない魔法だってーの」


「このマナ、人間のものモル」


「俺が行こう。先陣を切るのが四天王最弱が定め、ゲプッ」


 スッと立ったのはパイロン。


「俺も何も考えず胃袋を満たしていたわけではない。体重増加は俺最大の技、突進強化に繋がるのだ。俺をたかが飯を食ってるだけの数合わせと思うなっ!見よ!スキル突進」


 死亡フラグと共に駆けだしたパイロンは派手に消滅した。


「パイロおおおおんっ!!!」


「奴は最弱だってーの。あいつの敵は俺がとってやるってーのスキル突進!」


「駄目だ戻れ!アルトバイエぇええ」


 調子よく消失した。


「皆ッ!お前たちだけで逝かせないモル!スキル突進」


「早まるな、少しは考えろ!モルルーモ・モールッ」


 名を言い切る前に羽だけを残して逝ってしまった。自称四天皇壊滅。忌々しく魔法玉を見たマスタードは横に一歩回避し、やり過ごすとガクリと崩れ落ちた。


「何故だ。何故これしきのことがわからない……揃いも揃って馬鹿者どもめが」


 だが、気のいい奴らだったのは間違いない。許さないとジャリっと地面に爪を立てたマスタードは三体の魔王を(ほふ)ってもなお飛び続ける謎の魔法玉を睨みつける。


 凄まじき力の奔流(ほんりゅう)、放った術者は桁違いの化け物であるのは間違いない。だが、落とし前はつけさせると彼はミニ蝙蝠(こうもり)の使い魔のキーを呼び出した。


「キー、この魔法がどこから放たれたのかを探れ。術者を見つければ幸いだが、拠点としている街だけでも構わない。行け」


「キー!」


 っと飛び立つ使い魔を見送ってマスタードはギィンっと赤い瞳を光らせた。これをやった者に復讐の刃を突き立てると。


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