第一章 第二節 はじめての冒険
硫黄が取れるという場所は山間部の温泉にあるという。そこから先は鬼の目撃情報も出ている。何もなければいいのだが。
硫黄は毒である。すぐに立ち去らないといけない。
場合によっては鬼に出くわすという。幸い竜馬が速いスピードで駆け抜けていく。獣道もなんてことはなかった。
すぐに温泉がある山に到着し、硫黄を拾い集め、容器に入れる。
「帰るぞ、ラクシュ」
竜馬の名はラクシュだ。その帰りになんと前身黒ずくめの鎧を着た青年に出会った。鬼兵だ! 鎧の胸板には獅子の紋様。
すかさず、ロスタムは条件反射的に暗黒の鎧を着た少年兵の鬼に光を浴びせた――!
だが光を跳ね返した。さらに、剣の異変はここから始まった。
剣が異様に輝きだす。そして……なんとロスタム自身に光線が向かって行った。悲鳴が温泉地に上がった。
そのまま意識を失って竜馬からゆっくりと落馬する。竜馬が止まっていたのが不幸中の幸いだった。
「偵察に出たら人間が来るとは……。これは久しぶりのごちそうだ」
重低音の言葉が温泉地に響く。
しかし、竜馬は果敢に戦った。鬼に業火を浴びせたのだ。だが、暗黒の鎧をまとう鬼に全く効果はなかった。
「馬鹿だな。お前も抵抗しなければ長生きできたものを」
暗黒の煙を出す刀を取り出すと竜馬を俊足の速さで突き刺した。
号泣が温泉地に響き渡る。
だが、その時、鬼を蹴飛ばした。
さらに背中の鎧に噛み付く。鎧が強固のため全く効果は無いがそこから思いっきり地面に倒した。
さすがに暗黒の鎧で地面への衝撃を守ってくれているとはいえ、ある程度効いた様だ。この隙に竜馬は王子と修羅剣を拾い、逃げ去ることに成功した。さすがの俊足も竜馬の速度にはかなわなかった。
王城に帰ったときは竜馬の背中に意識を失っている王子の姿を見て王城がどよめき王子を王城に連れ帰り保護した。硫黄はしっかり持って帰っていた。これが王子の最初の冒険であった。
竜馬ラクシュの名は城内に轟き、名馬と称えられた。
硫黄と間伐材を混ぜた木材がペレットという粒に魔術士が仕上げていく。ボイラーに投げ込むと勢いよく燃え出し、タービンが廻った。
「成功だ! 成功したぞ!!」
一気に電気が行き届く。中には切れた電線にまで届き、感電する危険も生じた。 しかし、これが文明社会を取り戻す大きな第一歩となった。
竜馬と共に全土に名声が轟いた。
さっそく硫黄を取り出す軍隊を派遣し、鬼が攻めて来ないようにした。
一方の鬼は……。
仕方なく親の元に逃げ帰ると印を結び己と一体化した鎧を解除した。すると、まだ子ども、それも七歳ぐらいの子どもの鬼ではないか。親は食事の支度をしている。
「ただいまー」
「どうだった? 冒険ごっこは?」
「うん、あのね……」
弟が言うと姉は真剣な顔つきとなった。
「人間や獣族を甘く見てはいけないわね……私が今度は行くわ」
(なんか、おもしろそう)




