第三章 第三節 対決
――俺は目の前の仇敵から逃げているのだろうか。
今日も故郷の王宮の跡地に泊まることとした。
瓦礫の山であったが、地下はまだ使えそうな場所があった。
調理人がよく使っていた簡易ベッドもあった。簡易ベッドを直してそこを寝床にした。
売れそうなものを探しては近所の村で換金した。
換金した物で食料を買い、調理室で料理をして食った。主食は麵麭とトマトで煮込んだ羊肉のスープだ。塩漬の羊肉はほどよく旨い。ハーブそのものは野菜扱いで味をより旨いものにしている。そのうえでそっと別の皿に野菜を添える。幸いなことにここにはトイレも井戸もあった。生活するうえで困らない。
こうして幾日もわたって王宮にある亡骸を集めては王族の墓所で埋葬した。
あれほど憎い両親とその一族。
それでも兄弟や友人や従者が俺をかばい、守ってくれていた。
その者たちのためにもせめてもの報いをしなければ……。
砂漠の真ん中にある廃墟に夜の闇が迫る。
そこに突然声が谺した。
「アフラの加護を受けた剣士はどこだ!姿を見せよ!」
あわてて地下から一階に昇ると、突然瓦礫の廃墟から炎の業火が見えた。
慌てて地下に戻ると鎧を纏い、剣を握りしめる。
(仕方ない)
竜の前に立った。
この竜は、まさか――!
竜はいきなり業火を浴びせようとする。躱して改めて竜と向き合う。
竜は口から黒煙を嬉しそうに何度も吐き出しながらぎっと見つめていた。黒煙は緑煙となった。毒煙だ。呪文を唱えて毒を無効化する。煙を吐き終えると「間違いない、普通の人間は我と戦えるはずがない」と言った。




