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暗黒竜の渇望  作者: らんた
第五部 暗黒竜の渇望
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第五章 第二節 最後の決戦

 ロスタムは剣をインドラの仮面めがけて振り下ろす。だがあっさりとかわされる。見かけとは裏腹に身軽だ。剣と剣が交錯する。


 後ろで阿傍はランプを置き暗黒戦士になるべく変化をする。周りが黒き煙で姿が見えなくなりながら骨音が鳴り響く。そのとき刃が貫かれた。


 悪態付きながら口は裂け、牛頭の角がさらに伸びる。傷口を鎧が塞ぎ、変化を終えると思いきや……変化が途中で終わってしまう。インドラの刃が突き破る。


 「元暗黒戦士をなめんじゃない」


 そういいながら刃を抜く。

 

 阿傍が床に転がった。


 「次はお前だ」


 二人の刃を交わすがやがてすきを突かれ閻魔の刃に躰を抜かれる。そして勇者の体に異変が起き、勇者は暗黒竜の姿を現す。


 次に現したのは弓矢であった。そのままインドラの仮面めがけて放つ。


 だが、インドラが瞬きすると弓が弾き返された。


 閻魔にも放つ。だが今度は仮面そのものにバリアが生じた。攻撃が効かない!!


 「二度も同じ手にかかるかよ」


 「闇に堕ちし、勇者に死を」


 二人が手に持つその剣には冥土物質の刃。


 炎と爪をくぐる二人の鎧武者が竜の腹に剣を突き刺す。


 咆哮が木霊こだまする。


 暗黒物質や光のものとも違う冥土物質でできた剣が急速に竜の血肉を吸っていく。


 己の手で刺さった剣を断ち切る。


 だが刺さったままの刃の破片からどんどん己の血肉が吸い取られていく。


 隙があちこちに出来た。

 

 今度は後ろから刺された。


 倒れ行く暗黒竜。


(ここまでなのか)


(俺はここまでだったのか。地獄で死ぬのか!)


 そのとき阿傍の体が震えた。


 肉体の変化の力が死に抗ったのであった。


 阿傍の傷を塞ぎ、再生しながら早急に体が膨れていく。みるみる暗黒物質で覆われた鎧を形成していく。角をすり抜けながら兜を形成していく阿傍。

 こうして巨大な牛の鬼が大地に再び立った。手に巨大な棍棒が生じる。特に凶悪な亡者を罰するときに生じる姿だ。


 「うおりゃああああ!」


 決死の突撃で攻めていく。狙ったのは彼らの足元。


 二名の鎧が崩れ落ちていく。


 崩れ落ちてはなんとも組み立てられていく2つの鎧。


 何度も破損しても鎧が元に戻っていく!


 「愚かなり阿傍!!」


 隙を突かれて胸を刺される。だが阿傍も暗黒物質で覆われた鎧を着ている。ちょっとやそっとでは中まで突き通さない限りすぐに鎧の傷など修復してしまう。

またしても阿傍は鎧を倒す。


 そして次の瞬間――!


「隙あり!」


 瞬速でインドラの仮面を割った。


 まばたきする時も与えず。断末魔の悲鳴が地獄中に響きわたる。


 幽鬼の姿に戻ったインドラはやがて黒き煙となって霧消する。


 「インドラ様ああああ!」


 駆け寄る閻魔。


 しかし閻魔は後ろから阿傍に棍棒をたたきつけられた。そしてそのまま今度は逆に棍棒によって掬い上げられながら叩き落される。


 衝撃で兜が歪み仮面が転がっていった。乾いた音が響き渡る。


 「うおおおお!」


 このチャンスを逃すものかとばかりに棍棒が振り下ろされる。


 二度目の断末魔が地獄に響き渡った。


 鎧が崩れ落ちる。兜が割れた。閻魔の心臓部であった目を叩き潰したのだ。


 二つの鎧は物言わぬただの物となった。諸悪の根源は消えた。


 「勇者!!」


 そこには瀕死の勇者が。


 光を発しながら元に戻る。重症だ。


 「だれか手当を。誰か!!」


 しかし来たものは援軍ではなかった。闇から現れたのはサーラメーヤと呼ばれる地獄の番犬にしてインドラが飼っている犬人サラマーの仔達であった。唸り声をあげながら飛びかかってくる!!


 「我の名はサーラメーヤのシャバラ。主人の敵を殺しに来た!!」


 「我の名はサーラメーヤのシュヤーマ。この裏切り者め、喰い殺してやる!!」


 さらに闇から現れたのは人型の魔物。


 「そして我こそ紅蓮地獄の主にして天帝インドラの新たな妃サラマー! 裏切り者を処分しに来た!」


 なんと牙が暗黒物質で覆われた鎧を突き破っていく!! この二匹は万が一閻魔やインドラが倒れた時の番犬なのだ。敵に回すときは相対を覚悟しておくべきだった。そして後ろに居る防寒装備で固めた犬人。サラマーが二匹の犬に回復呪文を唱えそして氷撃魔法で攻撃してくる。


 阿傍は大剣を抜き振り払ってそれらを叩きつける。それは肉の塊となった。回復呪文や魔導鎧など役に立たぬ。氷撃魔法も跳ね返した。


 まだ一匹いる。


 飛びかかっていく。またしても傷を負う。阿傍は目を閉じた。


 (見えた!!)


 瞬時にかかる犬の姿をとらえ壁に叩きつけた。最後の一匹も物言わぬ肉の塊となった。


 残っているのは名前だけの妃であった。


 「分かっているな」


 阿傍は喉を鳴らしながらサラマーに近づく。サラマーは氷撃魔法で応戦するも結界や大剣で全てはじかれてしまう。そしてサラマーは覚悟を決め特攻し杖で攻撃しようとした。しかしやはり阿傍の大剣が降ろされる。


 ――インドラ様……シャチー様……


 それが敵の最後の言葉であった。


 戦いが終わった。大剣を背中のさやに収める。阿傍はロスタムを背負い元の部屋に戻り勝利を伝えた。すると地獄中が湧きたった。恐怖政治が終わり地獄は再び刑罰を粛々と実行する場になったのだ。きっとインドラやイマと戦った亡者達は減刑処分され次の世界に転生されるからであろう。それは亡者達にとって刑期の終了を意味していた。獄卒たちも恐怖政治から解放され喜びをかみしめていた。だが沸き立つ地獄でロスタムの事を誰も心配する者がおらぬ。なんてことを!


 またしても勇者は利用されただけになってしまう!


 ロスタムは呻き苦しむだけで言葉を出す余力すらない。


 (瀕死の勇者を救わねば!!)



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