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暗黒竜の渇望  作者: らんた
第五部 暗黒竜の渇望
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第四章 第三節 地獄に降り立つ勇者

 地獄に降り立った。鬼たちが地獄に落ちたものどもを責めている……。かと思えば様子が違う。鬼も亡者もどんどん武器を渡されているではないか。


 「いたぞ、暗黒竜だ!」


 その声を聴くや否や震えながら立つ鬼や亡者に囲まれた。


 「どけ!! お前らを殺すつもりはない。だが傷つけるものは……」


 口腔に光の渦がたまっていく。それを吐き出した。


 地獄内の洞窟に新たな空洞が生まれていった。


 「やめろ!! お前らと戦いたくない。罪を償うのがお前らの使命のはずだ。それができぬというのであればお前らを消す!」


 恐慌状態となる幽鬼らと獄卒。


 「畏れなくていいから、閻魔がどこにいるかを案内してくれ!」


 獄卒の長は投降状態のまま案内をした。


 「裏切り者には死を」


 暗黒物質の鎧を着た巨大な目から閃光がほとばしる。

 

「君たちは、私に殺されたいかね? それとも、暗黒竜と立ち向かうかね?」


 その声は広目天であった。


 「君のことはこの『目』でしっかり見させてもらったよ。人間に裏切られた気分はどうだい? 魔王の手先に落ちた気分は? そしてその姿を見て、だれがどう見ても魔王の手先にしか俺は見えんがね」


(こいつもか! 暗黒物質が埋め込まれている!)


 「お前たちは俺が守る、だから武器を捨てろ!!」


 鬼や亡者の前に立ちふさがったロスタム。


 「そんなことがこれでも言えますかね」


 目からまた巨大な閃光がほとばしる。


 なんと己の鱗がとけていくではないか!!


 「この光は天空から蓄えてきたもの。どうです? 暗黒の者には特に効きますよ?」


 溶けていくのは暗黒の鱗のみだが、それでもまだらのように広がっているので、自分の血肉までも溶けていく!!


 「インドラ様を一度亡き者にした罪、ここ地獄で償うのです」


 拳を握り締め、黄金剣を出した。剣の力を引き出した。暗黒色だった鱗が消え、黄金色の部分が際立っていく。


 「そう来ると思ったよ。でも俺は暗黒戦士でもあるんだよね」


 広目天の目から次に放たれたのはどす黒い閃光であった。


 今度は黄金色の鱗がどんどん溶けていく!


 「があぁぁ!」


 咆哮を響かせ倒れると、後ろにいた獄卒と亡者も消えていく。


 「どうです? 暗黒の者にも天空の者にも負けませんよ。だって私は天空を支配した四天王の一人なのですから」


 (落武者が何を言ってるんだ?)


 「では、後ろにいる亡者ごと死んでいただきましょうか?」


 そう言ったとたん、大量の鬼や亡者に囲まれる。


 「お前らなんか消し炭にしかならん」


 閃光で周りの敵を消し去っていく広目天。


 だが鬼の一人が同じ暗黒物質でできた鉾を巨大な目に突き刺す。


 広目天の悲鳴が響き渡る。


 「ふん、こんなものすぐに修復できるわ!」


 しかし、その隙を見逃さなかった。


 「今です! 我々ごと消し去ってください。もう今しかない!!」


 その言葉に涙を流しながら光と闇が交る閃光を放った。


 亡者も獄卒も消し去っていく。


 そして、暗黒物質をまとっていた広目天の鎧も粉々に砕けた。


 広目天はうめきながら立ち上がる。竜は巨大な剣を握り締めた。


「インドラがどうなったか知ってるな?」


そう言うやいなや広目天の胴体を二つに割った。


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