表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鏡の裏にあった日記

 とある家の遺品整理の仕事をしていた時、大きな鏡台の裏からノートがでてきた。本来なら見てはいけないものなのだが、私はノートをめくっていた。

 ○月☓日

何から書き出せばよいのだろうか。幸せか不幸せかは本人が感じるかどうかなので、誰かに決めてもらうものでもない。そして私は不幸だと感じる。とりあえず書いてみる。はきだしぐちにこの日記を書きはじめたのだから。

 ○月○日

 気付けば怒鳴り声がやまない家だった。物心つく頃から両親は怒鳴っていた。なぜそんなに怒鳴って話すのか、私にわかるはずもない。この両親から産まれた私はただ、怒っている両親は怖い存在で、いつその矛先が自分にやってくるのかをビクビクしながら生きていた。耳元で聞こえる大きな声、これが夢だったらいいのに。私は想像力が乏しいのだと思う。だって、私の世界はとても狭い。

 ○月△日

 人のあらさがしがすきな親だ。私がいいことを言っても否定される。悪いことを言っても否定される。どうしても否定したいらしい。ではなぜ私は生きているんだろう。なぜ。意味もなく考える。

 ○月□日

 カッターで問題集を切り刻んだ。スッキリした。自分の手をきってすぐに絆創膏で傷口をふさいだ。血で服を汚れてしまうとまた怒られてしまう。この家では私は空気。存在をけす。ここに私はいるけれど、私はここにはいない。消えてしまいたい。

 ○月△日

 ああ、またお金のことでもめている。お金がないとこんなにも人は醜い生き物になるのだろうか。いや、お金が問題ではないと思う。この息をしている人間の姿をした化け物。私もいつかこんな化け物になってしまうのだろうか。耳をふさいでも聞こえる怒鳴り声。この地獄のような密室空間にいつまでいないといけないのだろうか。そんなことばかり考える。学校は親がいないから楽しい。先生も友達も優しい。いろんな考えの人がいる。私はこの家から一刻も早くでたい。

 ○月☓日、この日記も最後のページになってしまった。書いてみたが、この日記はすぐに処分しないといけない。もし見つかったら私はどうなるのだろう。この日記と一緒に私も消えていなくなりたい。

 ノートはここで終わっていた。この日記が処分されずに残っているということは、これを書いた人は消えてはいないのだろうと思った。ただ、この人が、幸せに暮らしていればいいなと思い、そっとノートを閉じた。

なんのおもしろみもないお話ですが、なろうラジオ大賞3に参加させていただきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] つまらなくないです。とても共感しました。 相手を否定する事でしか自分の位置を確保できない人、私にも思い当たる人物がいるので。 子供のうちは傍に居なければならず、どれ程のストレスを抱えたのかと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ