2020 9/10(3)
今後もよろしくお願いします。
理科「…椿さん」
椿「やっほ~。思ったより元気そうで安心したわ」
椿が手に持っていた紙パックのジュースを飲みながら病室に入ってきた。
理科「…そうですね」
椿「本当に元気ね。胸部に深い傷を負って数時間で目を覚ますなんて…。運がいいのやら悪いのやら…」
椅子に座らず理科から少し離れた位置で話を続ける。
理科「…それで…何の用ですか?」
椿「別に、ただ様子を見ておくことになっているからさ」
理科「?」
椿「あれ? 聞いていなかったの?」
理科「何をですか?」
椿「…」
少し悩むような仕草をした後に
椿「朝倉さんが襲われた。もしかしたら私達も襲われるかもしれない。しかし今誰か1人欠けたらどうなるのか分からない。死んでいないなら生かしておくべき。死なないように見張りをすることになった。今ここ」
理科「…はぁ」
それは前回も似たような話し合いになったことがある。
理科「誰が言い出しました?」
椿「明確に誰とはいないわ。全員がその場で同じことを思ったようだし」
ストローでチューチューと吸っていた音が無くなり、パックを潰して近くのゴミ箱に投げ捨てる。
椿「それでまた朝倉さんが襲われたら面倒だから、誰か1人は一緒にいるべきだってことになってね」
理科「…そうなんですか」
椿「そうなんです。私は適当に時間を潰させてもらうから」
近くの椅子を取り出して理科から少し離れた位置で何か本を読み始めた。
理科「あの」
椿「んー?」
理科「私以外に誰か襲われた人はいませんでした?」
椿「いない」
理科「…本当ですか? 例えば伊藤さんとか」
昨日の朝と帰りに下駄箱に伊藤の身に危険が迫るようなことが書かれた手紙が入っていた。もしかしたら伊藤も襲われているのかと思っていたが
椿「伊藤さんは昨日1日中ホテルで休んでいたって言っているわ。体調を崩していたそうよ」
理科「…そうなんですか」
体調を崩しているというのはチャットで伊藤から聞いているのでそこは信用出来た。
理科「あと…」
椿「はい」
理科「昨日私が襲われていた時に、他の人はどこで何をしていました?」
椿「なんでそんなことを知りたがるの?」
理科「…気になるので」
椿「なんで?」
理科「…」
椿「…教えても良いけど交換条件。昨日朝倉さんが保健室で倒れていた時に何があったのか本当のことを話してくれたら教えるわ」
やはりあれでは誤魔化しきれなかったようだ。
理科「…」
椿「嫌ならいいのよ、別にそこまで気になるかと言われればそうではないし」
理科「分かりました」
椿に清水と同様の説明をする。
椿「茅野さんが?」
理科「そうです」
一応氷で攻撃していたという部分は伏せることにした。期間限定のスイーツが食べられなくなって相手の原型がなくなるまで殴り続ける人だ。能力をバラしたら茅野に襲われる可能性も十分にある。
椿「…茅野さんがね…」
特に大きな反応もなく、淡々としている。
理科「…それで他の人は?」
椿の話だと理科が襲われていた頃には、椿・奈那子・楓はホテルで遊んでいて、伊藤はホテルの部屋で寝ていた、清水・星名・瀬奈は部屋に籠っていて、明坂・茅野・緋色はホテルにおらずどこかに出かけていたようで、宮永は学園の友人と外で直接会って話をしていたとのこと。
自分の目でホテルに籠っていた伊藤・清水・星名・瀬奈の姿を見た者はおらず、椿・奈那子・楓はそれぞれ一緒にいたと主張、明坂・茅野はお互いが一緒にいたと主張、宮永は友達を一緒にいたと主張したがそれを見た人はいない、緋色の姿を見た人もいなかったとのこと。
これがどこまでが本当なのか…。
理科「…というか今さらですけど、ここはどこですか?」
椿「学校の地下にあった病室」
理科「…ちょっと待ってください。今なんて言いました?」
椿「学校の地下にあった病室」
理科「…え、学校に地下なんてありました?」
椿「緋色と楓が偶然見つけたそうよ。ある時2人で話しながら廊下を歩いているとつまずいて壁の方に倒れちゃったの。そしたらその壁をすり抜けるように通ることが出来て調べてみたらこの病室が何部屋もあるんだよ。あ、ちなみに朝倉さんを治療したあの医者共は全員詳しいことは教えてくれなかったわ」
理科「じゃあこの景色は?」
理科が窓のある方向に指を指すと
椿「それは映像技術を駆使されたもの。本当の景色じゃないよ」
理科「…」
開いた口が塞がらない。
理科「じゃあ私今学校にいるんですか?」
椿「そうなるね。他の10人も今頃学校にいるんじゃないかしら? そろそろ3時間目になるわね」
椿が椅子から立ち上がり、病室を出て行く。
椿「あ、そうだ。次に違う人が来るから安心してね」
忘れていたことを今思い出したように入り口付近に顔だけ出してそう言った後にいなくなってしまった。
理科「…」
自分の知らないところで他の人も動いていたようだ。
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