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12人の少女 最終計画  作者: ヤマネコ
始まり
6/164

2020 9/1(6)

よろしくお願いします。

清水「これ何なの?」


瀬奈「私が聞きたい。ねぇ、伊藤・星名・奈那子・楓はさっきからほとんど動揺をしていないけど、なんでそんなに冷静でいられるわけ?」


伊藤「冷静じゃない。動揺しているさ。顔に出ないだけで」


星名「メアも顔に出ない方だから。メアも何がなんだかわからない」


楓「私もわかりません。ただ、ここに書かれていたことは守った方が良い気がします」


奈那子「楓の占いは百発百中とまでにはいきませんが、7割くらいの確率で的中させるので、そこに書かれたことは守った方がよさそうですね」


瀬奈「占い…。あぁ、貴方有名な占いの人か」


楓「はい、学校で有名な占いの人です」


茅野「じゃあこの状況を占ってもらえます?」


楓「道具が一式あればしましたけど、今日は手ぶらで来たので出来ないです」


明坂「まぁ…すぐに終わる始業式に持ってこないのも納得だわ」


清水「占いとかそういうのはいいの。どうして私がこんなよくわからないことに巻き込まれているのかが重要なの」


宮永「それを言うなら私も同感です。なんでこんなことに巻き込まれているのですか」


緋色「変態には丁度いいかもよ?」


宮永「…変態? なんのことかしら?」


緋色は宮永の問いに答えず、ただ薄ら笑いをしている。


宮永「変態というなら瀬奈さんでしょう。あんなにスカートの丈を短くして…屈んだら見えますよ?」


瀬奈「お洒落が分かっていない素人に説明しても分からないだろうから説明しないけど…これを変態と考えるのは早計だわ」


清水「今はスカートの長さとかどうでもいいの! 私をここから出してよ!」


清水さんは今にも泣きだしそうな表情と声色で文字が浮かんでいたところに向かって話しかけるが、何も文字が浮かび上がってこなかった。


清水「…なんでこんな目にあわなきゃいけないのよ…」


フラフラと身体を動かして椅子に座り直し、顔を下に向けて猫背なる。


清水のように落ち込んでいるのは、清水・瀬奈・椿・宮永の4人だけだった。理科はというとどうすればいいのか分からずただ突っ立っているだけなので落ち込んでいないかどうかを言えば、落ち込んでいる方に入るのだろう。


理科のようにどうすればいいのか分からないという感じの振る舞いをしているのは、理科・伊藤・星名・奈那子・楓・明坂・茅野の7人だ。


椿「緋色さん、どうしてそんなに楽しそうなの?」


緋色だけはとても嬉しそうに…とても楽しそうに…この場で笑っているのは彼女だけだ。


緋色「だって面白そうじゃん。このゲーム」


宮永「ゲーム?」


緋色「そうゲーム。いや~、お小遣い少なくて新しいゲームを買う余裕がなくてさ、何か暇つぶしになるゲームを今日始業式が終わったら探そうと思っていたからさ…なんか私好みのゲームみたいにこうして参加させられて少し気分が高まっているのかも」


宮永「仮にあそこに書かれていることが本当なら死ぬかもしれませんよ?怖くないの?」


緋色「いや~どのみち人間なんていつか死ぬし…もう一度やりたいゲームがあるから死にたくはないけど…まぁ死んだら死んだでしょうがないかな」


清水「…狂っているわ…あんたら…私は死にたくない…」


星名「清水、そろそろ泣き止んで…3年生がそんなに狼狽えていたら下級生も不安になる」


清水「この状況で学年なんて関係ないでしょ! はぁ…本当に嫌だ」


緋色「嫌ならここに居座っていればいいんじゃない? 食べ物も飲み物も休む布団も何一つないこの空間でずっと嫌だと言っていれば?」


緋色は席から立ち上がり、背後に出現した扉に近寄り取っ手に手をかける


伊藤「どこに行く」


緋色「ここに入れってことでしょう? お先に~」


緋色は扉を開けて中に入ってしまい、彼女の姿が見えなくなった。


星名も無言で立ち上がり扉に近づく。


星名「今話し合いをしてもまともに話せない。一度みんな扉に入って心を落ち着けるべき」


そう言って扉を開けて中に入っていき、扉が閉まる。次々と他の人たちも各自の扉を開けてここから出て行った。


この場に残っているのは理科と清水の2人きりだ。清水はずっと顔をうつむいて泣いている。


清水「……ぅ…」


怖いのか両手で顔を覆い、鼻水をズルズル吸い上げる音が聞こえる。


しばらく何もせず、彼女の傍にいてあげることにした。


彼女も時間が経って落ち着いてきたのだろう。身体の震えも徐々に小さくなり、両手を顔から離した。


理科はスカートのポケットからポケットティッシュを清水の前に置く。驚いてこっちを見てくる清水の顔は鼻水が出ていて目が真っ赤だ。


理科「その……どうぞ…」


掌を上に向けてポケットティッシュの方に向ける。清水は少し悩んだようだが小さな声で「ありがとう」と言って、勢いよく鼻水を出し始めた。その姿を男が見たら、きっと幻滅してしまうくらいの勢いでズズッと上品ではない音が辺りに響く。


ポケットティッシュに入っていたティッシュ全て使い切ってようやく鼻水も収まったようだ。


清水「ありがとう…朝倉さん…。あなただけはあんなイかれた連中と一緒じゃなくてよかった」


理科「あ……」


清水「どうしたの…?」


理科は支給されたスマートフォンを取り出してチャットアプリを開き「清水社巫女」の名を押すと、個人チャットを開くようにポチポチと突いた。


清水「?」


自分のスマートフォンに何かの通知が来たのに気づいたのだろう。清水もスマートフォンを突き始めた。


清水「…?個人チャット使うの?」


理科はその言葉に返事をせず、画面に指を走らせる。


理科『すみません。私人と話すのがとても苦手で…このチャットを使って話をさせてください』


清水「…あらそうなの…。わかった」


理科『とりあえずここにいても何も出来ないので、扉の方に行きませんか』


清水「嫌よ。あそこに行って安全の保障がないわよ」


理科『でも緋色さんの言うとおり、ここにいても何もできませんよ』


清水「…」


理科『私は行きますよ』


清水「…え! ダメよ! 私を一人にしないでよ」


理科に強く抱き着く。理科は172センチ、清水は148センチと24センチの身長の差がある。まるでまだ小さい娘が駄々をこねて母親に抱き着くようにも見えるだろう。


理科が清水さんの身体を剥がそうとするが、清水は対抗するようにその小さな身体からは想像も出来ない力で理科を強く抱き着く。清水が飛んだと思ったら、理科の首に両手を回し両足で腰を抑えるような感じで抱き着く。


理科(っちょ…。なんかミルクみたいな匂いがする)


彼女の顔が自分の胸に埋まったかと思うと、ウルウルとした瞳で、捨てられそうな子犬のような表情をして…理科を見てくる。


理科…かわいい


理科が清水を下ろそうとするも「むぅ~」と言って離れようとしない。しかし力を入れ続けたのに疲れたのだろう。清水の身体が僅かに浮いた。


その隙を逃さず、身体を話してチャットを素早く打ち込む。


理科『落ち着いてください。何度も言いますがここにいても出来ることがありません。行きましょう』


清水「いや」


お菓子を買ってくれない子供が母に文句を言うように首を振って言う。


理科『扉に入ったら私の出来る範囲で清水さんを助けますから、今だけは扉に行きましょう。ね?』


子供をあやすように膝を曲げて清水の目を見る。


清水「…わかった」


納得できないけど無理やり納得したという感じで首を縦に振る。


理科が扉の前に立ち清水の方を見ると、彼女の歩みは遅いがそれでも少しずつ扉に近づいている。清水は扉の取っ手を手に取るが開けないで理科の方を見て話しかける。


清水「…。理科…。生きて会えたらまた話したい」


理科『わかりました。生きて会えたら沢山話しましょう』


清水が画面を見ると、まだ怖い気持ちが勝っているから暗い表情のままだ。


理科『会えたら沢山お菓子を買ってあげますから』


清水『子供か!?』


理科『おかわりもいいですよ』


清水『じゃあ私と一緒にお菓子を食べるって約束してくれたら、扉に入る』


理科『分かりました。一緒にお菓子を食べましょう』


清水は画面を見続けていたが、最後の理科の文面を見ると少しだけ表情が軟らかくなった。


清水「…約束よ?」


チャットではなく、言葉で言ってきた。無言で首を縦に振ると、彼女は深呼吸を繰り返して左手で胸を押さえながらゆっくりと扉を開けて中に入っていった。


清水が扉に入って、扉が閉まるまでを見届ける。


理科「私はお母さんか?」


そういえば途中から名前呼びになっていたなと思いながら理科も扉を開けて中に入る。


扉の先は、今日理科が登校する前最後に見た自分の部屋だった。



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