ブラウン管かーらーのー、週末歴史世界旅行
発明家だった祖父を亡くした歴史好きの高校生・田宮ワタルは、幼なじみのオタガールの織畑メグミとともに、祖父の遺品整理をしていた。
「少しは金目のもんとかあると思ったのになぁ、ガラクタばっかりだよ」
親に無理矢理片づけを押し付けられ、ホコリまみれになりながら築百年以上と言われている土蔵を、ワタルはぶつくさ文句を言いながら引っかき回す。
それを見てメグミは、
「もーそういうこと言わないの。おじいちゃんの大事な形見なんだから」
「全く、爺ちゃんも残すならせめて使えそうなものを……ん?」
ワタルは一台のブラウン管テレビを発見。電源を入れるとその先には江戸時代の街並みが映る。
「おっ、映るぞこのテレビ」
「映った? そんなはずは………………きゃ!」
地上波デジタル放送に対応していないはずのブラウン管テレビに、映像が映るわけがない。メグミが恐る恐るテレビに触れると画面に指がすり抜けるように入ったのだ。そして、画面に右手の指先、手、手首、肘、とグイグイと引きずり込まれる。
「え? え? うそ! やだ!」
「メグミ‼」
慌ててメグミの左手を引っ張るワタル。
しかし、その勢いは止まらず――――
気づいたらそこは江戸時代の城下町。
なんとそのブラウン管テレビは祖父によって作られた過去と現代を繋ぐタイムトンネルだったのだ。
ワタル達の江戸時代にそぐわない格好のせいで岡っ引きに追い回され、何とかして現代に戻った。
このテレビを使って時間旅行を楽しめる? 歴史が好きなワタルには夢のような発明だ。
「けど現代の格好じゃ目立ちすぎるか。残念だな」
「だったら私、衣装作ろうか?」
「え?」
メグミは趣味のコスプレ衣装づくりの腕を生かし、国や時代に応じた衣装を手作りしてくれるという。
以来ワタル達は週末になると、ブラウン管をくぐってたくさんの時代を行き来するようになる。
宮本武蔵はお風呂が嫌いだった?
源義経とチンギス・ハーンは同一人物?
モーツァルトの髪はカツラだった?
ティラノサウルスは足は人間よりも遅い?
歴史にまつわる様々なトリビアが真実か、ただただ確かめるだけの旅をする……。