1柱平穏な日常
この世の森羅万象どんなものにも神というものは憑いている。
そんな神の不調を支える「神守」この世界のどこかで僕らの生活を支えている。
これはそんな人間のお話。
神名黎は代々続く神を支える一族である神名家13代目神守である。
何もない日常、普通こそ至高の物として生きてきた彼にとってそれは日常の一環でしかなかった。
普段通り起床し、朝食を済ませると門から騒がしい声が聞こえる。
「黎!早く行こうぜ!」
私立氷乃宮高校に通うクラスメート二階堂瞬である。幼いころからの腐れ縁だ。
「あぁ。今いく」
いくら神守といえども四六時中仕事をしているわけではない。
学校に通いもすれば、友人と遊ぶことだってある。無論、例外もあるが。
「どうなの?神守の方は?」
「まあぼちぼち。」
「ふーん」
今更気にするようなことでもないが、こんな素気ない返答ばかりの自分に対してずっと付き合ってるこいつは楽しいのだろうか、と疑問に思う。
そんな単調な話を繰り返しているうちに高校へとたどり着く。
朝のホームルームを終え、何のために勉強しているかもわからないような授業をすべて終えると、皆颯爽と部室へと向かっていく。そんな中神名黎は帰路についていた。
街を歩けば必ず目に留まるような大きな門をくぐり家に入る。
むしろ動きにくくなるんじゃないかと思うほどの長い和服へと着替えると、大広間へと歩みを進める。
神守と言えど、不調が即座にわかるわけではない。
神の状況を24時間体制で監視しているのがこの大広間である。
実際に神のもとへと向かい仕事をこなすのにはいくつかパターンあるが最も多いのがこの大広間で神の不調を感知しそこから向かうというパターンだ。
「何か変わったことは?」
「四丁目の角の家のガラスに影が何度か確認されています。今のところ被害は出ていませんが調査お願いします。」
「わかった。」
懐から札を数枚取り出すと、それを円形状に広げるように壁に並べはじめた。
札の円の中には真っ暗な道が続いており先は全く見えない。
「もうちょっと、どうにかなんないかな、これ。」
そうぼやくと穴の中へと入っていく。