九十七話 誰が一緒に旅に行くのか?
お祭り騒ぎから一夜明けた。
結局あの後大半の人たちはそれぞれの国に戻ったけれど、何人かは戻らずにこの場所に残った。そのまま外で寝るのはさすがに危険だったので、魔神晶石の馬車を出し、ヒスイに馬車の周りにゴーレムを配置して貰った。
そして馬車内、大樹ダンジョンに入ったところで竜人達と対面して、大騒ぎになったのは余談だと思う。
いや実際、凄い騒ぎだったよ。世紀の大発見だってさ。
大樹ダンジョン内には、久しぶりに商館ダンジョンを建物の状態で設置した。今までは大樹ダンジョンの地面に直接ベッドを置いて寝ていたけれど、これでやっと部屋のベッドで就寝できる。
やっぱり寝る時は知っている天井があると安心するよね。
氷船は、ヒスイが竜人達に頼まれて作った湖に浮かべたら、大きな魚に食べられた。そのまま湖底に潜っていった。
いや待って、何で船、食べられちゃったんだ?
しばらくしたら船が美味しくなかったのか、浮き上がってきた巨大魚が吐き出したので慌ててホルスターのポケットに収納した。
「ほら、やっぱりお魚も食べたいでしょう? 生け簀で飼っていたお魚もこっちに持ってきたのよ」
セイラのお姉さんである白竜族首長ライラの談である。
つまり竜人達の住んでいるエリアにある湖は、とっても危険な湖なんだろう。てか、体長五十メートルの魚って何だよ……。
そんな感じで色々あったけれど、久しぶりにみんなが顔を合わせたこともあって、夜遅くまで話が弾んだ。
さて、現在大樹ダンジョン内にいるメンバーを確認しよう。
まずパース王国から旅をしていたメンバーは、篤紫、桃華、夏梛、ペアチフローウェル、ヒスイ、オルフェナの全員で五人と一匹。
そしてゲートで再会して大樹ダンジョンで一晩過ごしたのが、タカヒロ、ユリネ、シズカ、カレラ、ミュシュ、コマイナ、いや多いな……まだいるぞ。
キング、クロム、ルルガ、マリエル、ルーファウス、ガイウス、セイラ、レティス、マリエンヌ、ロディック。いや待て、パース王国の重鎮がみんないるじゃないか。国の方は大丈夫なのか?
さらにはレイス、ユリディナーレ、メルディナーレ、クランジェを含む異形の悪魔達が久しぶりにペアチフローウェルと楽しい時間を過ごしたようだ。
そこに竜人達が加わって、再び大騒ぎを始めていた。特にシズカは竜人の国のことを話に聞いたことがあったようで、話が弾んでいるようだった。
そう言えば部下に、小型化した竜人族のレイドスがいたっけ。被服屋さんの。
今どうしているんだろう、しばらく会っていないな。
「それじゃあ、誰が一緒に旅を続けるんだ?」
そう。目下の問題は、この中で誰が世界漫遊旅行を続けるかと言うことだ。
一晩明けて、大樹の前にみんなが集合した。夜更かしした人も多いからか、若干顔色がすぐれない人もいる。
竜人達は、朝からさっそく自分たちの街を作っているようで、遠くの方から金槌を打つ音が聞こえてくる。種族としてずっと停滞していたからなんだろうね、みんなで街を作ることが何よりも楽しいようだ。
篤紫と桃華、ヒスイは確定として、あとは誰が一緒に行くのだろうか?
あ、オルフェナも一緒に来るか……。
ちなみにコマイナは、商館ダンジョンの管理をすることが決まっている。普段から家の中の掃除をしたり、ベッドメイキングなど家事全般の仕事をして過ごすのだとか。
さらに篤紫達が帰ってきたら、食事を作ったりもするようだ。
たぶん毎日、家に戻ると思う。
「私達はここ、商館の隣に家を建てて住みますよ。これは義母のシズカの希望でもあります」
何故かタカヒロ、シズカ、ユリネの三人は、商館ダンジョンの隣に家を建ててここに住む気らしい。いや確かに、商館ダンジョンはここに固定させるつもりだったけれど、またお隣に引っ越してくるの?
まあいいけど。竜人のみんなと仲良くやってくれれば助かるし。
何故かヒスイがタカヒロに近づいていって、しゃがみ込んだタカヒロの肩を叩いていた。それに対してタカヒロがシズカとユリネを呼んで、同じようにヒスイに肩を叩いて貰っている。
「これからここのダンジョンマスターをすることになりました。予定外ですが、しかり頑張りますよ」
と言うことで、何故かタカヒロ一家は大樹ダンジョンのダンジョンマスターになったようだ。
何というか、ヒスイらしいな。
「あたしたちは、しばらくシャーレちゃんがいるシーオマツモ王国に行ってるね。知らないうちに大ごとになっていたんだよ。あっちで無事産まれたって言ってた、末っ子だよ」
いまいち要領が得られない夏梛の話に、篤紫は首を傾げた。
夏梛、カレラ、ペアチフローウェルの三人は、ここで離脱するようだ。どうやらシーオマツモ王国のキャッスルコアにあった蕾から、赤ちゃんが生まれたようで、麗奈とリメンシャーレが大騒ぎしているらしい。
ああ、つまりうちの末っ子か……大ごとじゃん!
帰る人たちを全員送り届けたら、さっそく向かうって言っていた。便乗させて貰おう。
「おい、てめえ。篤紫。相変わらずやることが滅茶苦茶だな、おい。
まああれだ、コマイナ都市ダンジョンの面倒はオレが見ておくから、しっかり土産話忘れんなよ」
「また、魔鉄が無くなったら遠慮無く言えよな。何とかそっちまで送るからさ」
キング、クロム、ルルガ、マリエル、それにミュシュも名残惜しそうに帰っていった。ミュシュはルルガ鍛冶工房で助手みたいなことをやり始めたらしい。
帰り際に、マリエルが顔を真っ赤にして耳元で話していった報告に、篤紫と桃華は笑顔で顔を見合わせた。
お腹に子どもがいるらしい。
産まれたら絶対に駆け付けなきゃだな。
その後も、パース王国のみんなは国に戻り、レイス一家と異形の悪魔達もコマイナ都市ダンジョンに戻っていった。
そしてみんなが帰還した後、夏梛達三人に着いていって、一通りお祝いをしてきた。
キャッスルコアの花の蕾から産まれたのは、可愛い男の子だった。久しぶりに麗奈とリメンシャーレに会ったけど、子育てに大騒ぎしていたな。
ついでにレイドスにも会ってきたけれど、あの人は相変わらず流行の最先端を行っていた。今の流行はパンクファッションらしい。それいつの時代のファッションだよ。
「で、結局……三人と一匹か。まあ、そんなもんか」
残ったのは、篤紫、桃華、ヒスイ、オルフェナだけになった。
実際には魔神晶石の馬車、大樹ダンジョンの中にたくさんの人が住んでいるから、かなりの大所帯なんだけどね。普段は出てこないから、あの人達はカウントから外すことにした。
「いいじゃない、新婚旅行みたいで何だか楽しいわよ」
「馬車の中にリアルタイムで外の景色を見ている人たちがいるけどな」
「でも、馬車からの映像だけでしょう? みんな街作りに忙しいし、馬車周りの映像以外は不要みたいだから、けっこう気楽なものよ?」
結局ウルルも、無駄にドラゴンたちを刺激する必要が無いからと、遠くから眺めるだけに終わった。夏梛とペアチフローウェルがゲート魔法を使えるから、用があればまた来て貰えばいい。
つまり、いつでも来ることができるようになったと言うことだ。
『電話も普通に繋がっておるのだ。何かあれば連絡を取り合えばいいだろう。我はどこまででもついてゆくぞ』
「ありがとう、オルフ。まあそうだな、たぶんまた何かトラブルを引き寄せるかも知れないけど、その時は頼むな」
「いつものことよ。気にしなくてもいいわよ」
ヒスイも頷くと、すっと緑の馬に変化した。そのまま魔神晶石の馬車の馬具まで歩いて行った。自分で馬具を装着し、準備ができたとばかりに首を回してきた。
取りあえずオルフェナは馬車内に放り込んだ。
篤紫は御者台に乗って、桃華を引き上げる。着席したのを確認して、馬車はゆっくりと走り始めた。
「取りあえずは、アウスティリア大陸の景観を見ながら東海岸を目指そう」
「そうね、東海岸には何があったかしら?」
「たぶん、何かがあったとしても、何かが起きる方が先じゃないかな」
「ふふふ。そうね、そんな気もするわ」
魔神晶石の馬車は南東に舵を取り、ゆっくりと走り始めた。




