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八十九話 尽きないドラゴン

「さすがに、この状況はおかしいな……」

「そうね。いつまで経ってもドラゴンの数が減らないわね」

 かれこれ一時間。篤紫と桃華はドラゴンを倒し続けていた。


 篤紫達は空が飛べないので、背中の翼を具現化させてドラゴンを気絶させて、墜とした上で片っ端から魔道銃で撃ち抜いて絶命させていく。

 桃華も、左手のキャリーバッグで墜ちたドラゴンの頭を千切り飛ばし、右手の聖斧スコップでばっさりと、首と胴体を切り離していた。その様子は、まるで舞を舞っているように華麗なんだけど、そもそも、使っている武器が両手ともにおかしい。


 神力がギリギリ届かないドラゴンには、篤紫の魔道銃の遠距離射撃で頭を消滅させる。

 落下先? そんなの知らん。


 瓦礫と化した白竜族の街は、いつしか竜の血で真っ赤に染まっていた。




「ちょっと休憩だな。何だか攻撃が一方的なのが少しきつい」

 篤紫と桃華は、領壁の門にある衛兵の詰め所まで来ていた。領壁もあちこちが破壊されて崩れていたけれど、幸いなことに詰め所はその被害から逃れていた。

 そうはいっても巨大な竜人仕様なので、詰め所程度とはいえかなり広い空間が広がっていた。四十メートル四方はあると思う。建物の規模がおかしい。


「旋回しているドラゴンが、どんどん街を壊しているのよね。それが無ければ、放置しておいても良かったと思うのだけれど……」

「ここの異常世界の特性なんだよな。翼を顕現させない限り、俺たちはドラゴンに認識すらされていない。

 あー、そうか。もう放っておけばいいのか。住人は桃華が全員避難させ終えてるんだよな?」

「ええ。大樹ダンジョンの中にみんないるわよ。確か三十人くらい送ったと思うわ」

 側で二人の話を聞いていたヒスイが、篤紫の動きを察してゴーレムを五体取り出した。思わずヒスイの頭を撫でる。相変わらず察しがいいな。

 篤紫は立ち上がって、魔神晶石を起動させて馬車をその場に展開させた。



『全員がかなり精神的に疲弊しておるようだ。

 怪我は夏梛とペアチフローウェルがあらかた治したが、半分ほどの竜人がまだ意識が戻らぬ』

 大樹ダンジョンに入ると、オルフェナが現状を説明したくれた。三十人もの竜人がいる景色は、篤紫としても目を見開くような状況だった。幸い大樹ダンジョンの中は広大なため、場所的な意味では理にかなっている。


 少し離れた場所では、巨大牛が大人しく草を食べている。竜人と比較すると、篤紫達にとって大きかったはずの巨大牛ですら、普通の大きさに見えてくる。


「篤紫、外は何とかなったの?」

「ペアチェか。ダークゲート何度も使ってくれて、ありがとう。大変だっただろうけど助かった。

 外は、未だドラゴンが街を破壊している状況に変わりはないよ」

 竜人の陰から、いくらか疲れたような表情のペアチフローウェルが歩いてきた。一緒に夏梛も歩いてくる。

 何かの物資が足りなかったのだろう、夏梛は桃華と少し話をすると二人して駆け足で竜人の間に消えていった。


「大丈夫よ。夏梛もライトゲートを使えるようになったから、負担と言っても半分くらいよ。

 それより、まだドラゴンがいるってことなの? 厄介ね。わたしが外で動ければ、一気に片を付けられるのに」

「事態はそう簡単にはいかない感じなんだよな……」


 実際問題、ドラゴン単体だけ見ても、既にかなりの数を討伐している。大半の死骸は桃華がキャリーバッグに収納していたけれど、追いつかない分は篤紫が魔道銃の出力を上げて焼滅させたりもした。

 それでも、ドラゴンの出現が途絶える気配すらなかった。


 そのドラゴンにしても、属性が一定しているわけでもない。

 最初に倒したときには白竜系のドラゴンが多かったのだけれど、じきに全属性のドラゴンがまんべんなく出現し始めた。

 休憩に入る前に見た空には、色とりどりのドラゴンが空を泳いでいた。




『篤紫よ、どうするのだ? 今までが何ともなかったのだから、ドラゴンが湧くのもこの都市だけの現象だとは思うのだが。

 ちなみにナナナシア様はまだ目が覚めん。寝ているからか、魔力が減っていないのがまだ救いだがな』

 ペアチフローウェルと話をしながらナナナシアの様子を見に行くと、オルフェナがサイドテーブルの上に乗ってナナナシアの様子を見ていた。

 ホルスターのポケットから椅子を二脚取り出して、ペアチフローウェルと一緒に横に座った。確かに、数日前よりも顔色が安定しているように見える。


「正直、動こうにも色々と問題が起きて、いったい何をしたらいいのかが分からない状態だな」

『分からんな。そうは言っても目的地があるのなら、さっさと動けばよいのだぞ』

「そうよ。いったい何を迷っているのよ?」

「ナナナシアがナナナシアコアに戻るための、最終的な条件が分からないと言うことだよ。

 俺たちは魂地になっていない特大魔晶石、としか条件をきいていない。竜晶石がある現地に行ったら、ナナナシアに自分で判断して貰えばいいと思っていたんだ」

 顔色がいいとはいえ、今もベッドに横になったまま、ナナナシアの意識は戻っていない。地下だと分かっていて進んだのも、ウルルが自然の状態にある超特大魔晶石だと思ったからだ。


 それがいざ蓋を開けてみれば、三十メートル超の竜人族が地下部分を管理していて、竜晶石として実際に運用していた。竜晶石に常に魔力を補填することで、独自のネットワークを形成していた。

 そのシステムも、白竜族以外の五氏族は既に魂根まで、昨日のうちに認証済みの可能性が高い。


 大量のドラゴンが現れて、白竜族の領都が破壊されているのも、もしかしたらその影響なのか……?


「ただ、ナナナシア本人と意思疎通ができないから、このまま向かっても、何とかなるという保証がないんだよ」

『そんな状態だったのか。だったら話が早いではないか』

「そうよ、まずはセイラ達白竜族の意識が戻ってからの話だわ。もう少し回復魔法と治癒魔法を掛ければ、確実に意識が戻るわ。

 さっきの篤紫の話だと、この街のどこかに、さっき言っていたソウルブロックがあるのよね?」

「ああ、各領都には一つずつ、旧システムであるソウルブロックがあるはずだよ」

『今ここに避難しているのが、白竜族の半数なのであろう? この状況はかなり都合がいいのだよ。

 まずはここにいる全員のソウルメモリーを、魂樹にすることが第一段階だな』

「……ああ、つまり旧いネットワークから切断すると言うことか」

 オルフェナとペアチフローウェルが正解だと言わんばかりのいい笑顔で頷く。

 既にそれぞれの首長が戻った他の領都では、全員のソウルメモリーを魂樹化する作業が進んでいるはず。残っているのは、もしかしたらここだけなのか。


「そのうえでまず、気絶していてもいいからナナナシアを、そのソウルブロックに触れさせるのよ。

 竜晶石にいる白竜族の人たちが、ソウルメモリーを向こうに直接繋いでいれば、この時点でナナナシアが星にそこまで話をすると戻れる可能性があるわ」

『問題は、上空にいるドラゴンたちが、どこから湧いているかにもよるのだが。

 まあそれは、ここの竜人達の目が覚めてからでも良いだろう』


 そうだな、一つずつ問題を解決していかないと、一気に何とかなるわけがないか。


 ペアチフローウェルは、そこまで話をすると再び竜人達の治療に戻っていった。

 意識が戻った竜人が十名ほど。街が崩壊したことにより、みんなそれなりに大きな怪我をしていたようだ。

 セイラは、まだ意識が戻っていないらしい。


 中は女性陣に任せて、篤紫は外の様子を見に行くことにした。オルフェナにはみんなに伝言を頼んである。

 その篤紫のあとを、ヒスイがトコトコと付いていった。




『ええ、こちらは魂根、魂幹を始め、全領民の魂樹化が終わっています。もともと黒竜族は人口が少ないので早かったのですよ。

 しかし、白竜領ではそんなことになっていたのですか。

 有事以外は特に交流はないので、連絡がない限り各氏族の様子は互いに知らないのですよ』

 今、篤紫は白竜族の領事館を目指して、足場が悪い瓦礫の上を進んでいた。馬車は魔神晶石に戻し、中のみんなには何かあったらスマートフォンに連絡を入れて貰うように頼んである。


 あのあと領壁の詰め所に出たところでふと思い出して、黒竜族の首長であるフェイメスに電話を入れた。さっそくフェイメスは電話に出てくれて、竜人族の全ての街が同じ構造の街だと言うことが聞けた。そして、ソウルブロックがある場所が各領都の領事館にあることも分かった。


「他の竜人族のみんなはどんな感じだって?」

『青竜族と緑竜族は昨日のうちに、領民が多い赤竜族と黄竜族でも朝までには全て魂樹に変えられたようです。

 どうもソウルメモリーを魂樹に変えことで、体の動きも軽くなったと言う話もあのあと出ていまして、それもあってかみんな急いで処理をしたようです』


 やはり、その辺も影響しているようだ。

 街の大まかな形を教えて貰って領事館に向かっていくと、あからさまにドラゴンの数が多くなってきた。瓦礫の上に今まで見なかった地竜も増えてきて、それに伴い翼を休めているドラゴンすらもいる。

 まあ、一切気付かれないので目の前すらも素通りしていくのだけれど。


 その中にあって、不思議なことに領事館だけは無傷で建っていた。

 遠くからは、たくさんいるドラゴンに隠れて見えなかったけれど、周りの建物は全て崩壊しているにもかかわらず、完全に無傷だった。


 ドアまで辿り着いた篤紫は、その大きな扉を見上げた。

 どう頑張っても、この扉は開けることができない。周りの瓦礫の上には、溢れるほどのドラゴンがいる。上空には、同じようにたくさんのドラゴンが旋回している。


 さて、どうやってこの中に入ろう……。


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