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14 鬼火噴く

 喉奥に見えたのが何だったのか。

 いったいそれがどうなるのか。


 それらの考えがまとまる前に、横に飛びのいた。受け身も考えずできるだけ遠くに。


 俺の身体すれすれに太い火柱が突き刺さる。


 俺は慌てて自分のHPを確認した。

 削れていない。


 よく見れば、MISSの文字がうっすらと残っている。


「【回避】か……って、あっつ!」


 状態異常の欄に火傷の文字。

 徐々にHPが減っていく。


 俺が状態異常を与えることはあっても、俺がモンスターからかけられることは今までなかった。

 状態異常回復用のポーションをストレージから出している時間などない。


 十秒毎の【健康祈願】の確率の状態異常回復に任せるしかないか。

 しかし、このペースで削られると、チャンスは一度きり。二十秒は持ちそうにない。


 しかし、ジェネラルオーガは一人焦っている俺を放っておいてはくれない。


 振り下ろされる拳を必死によける。


 【疾風】【飛鳥】のCTが明けてすぐに発動。これで攻撃を余裕をもって回避できる。


 居合【連花】を以って、背後に回り、鎧通しの【月光】を再度頸椎に直撃させる。

 ジェネラルオーガの頸椎が回復していれば、また内部弱点の破壊ができるはずだ。


 ばたりとその巨体が、倒れる。指先もピクリとも動かない。


 今のうちに腕を使えなくしよう。

 肩のあたりを集中して攻撃する。

 脇のあたりで赤黒いエフェクトが発生する。どうやら脇も弱点のようだ。


 次に心臓に鎧通しを当て。

 今度は逆側の方に移動する。


 ジェネラルオーガがもだえ苦しんでいる間に、残りのHPは3割となっていた。


 そして、俺の火傷も気付けば回復していた。そのことにほっと一息をついた俺は、大きな失敗を思い出す。


「……しまった!」


 ……そう。突然の火を吐く攻撃に慌てた俺は、ジェネラルオーガの激昂状態へのプランをすっかりと忘れていた。

 プランでは、3割ギリギリになってから鎧通しで行動不能の状態に追いやり、削り切るはずだった。


 しかし、3割も残っている状況で。

 俺が分かっている確実に行動不能にできる内部弱点は残り一つ。丹田だけ。


 脳は痛覚異常と思考力低下のどちらが上になるか分からない。

 痛覚異常を思考力低下が上回れば、痛覚を無視して暴れまわるようになる。そうなれば、俺には手が付けられない。


 眼球は痛覚異常と暗闇状態。しかし、少しでもずれれば脳に当たってしまう可能性があるうえに、他の内部弱点よりも弱点が小さい。当たらない可能性もある。


 しかし、激昂状態に対応できるかどうかも怪しい。このまま行ける所まで行くしかない。


 丹田を破壊し膝を潰す。


 続けて眼球。成功!


 残りは時間が許すかぎり、首筋を徹底的に切りつける。


 残り1割。

 しかし、ここでジェネラルオーガの腕が俺に伸びてくる。


 状態異常が全て回復した。


 俺は慌てて飛びずさる。


 ジェネラルオーガの肌が赤く変化していく。

 ゆったりと立ち上がりながら、吠える。


 天に咆哮を上げる。


 仲間を呼ぶ咆哮ではない。怒りの咆哮。


 しかし、ジェネラルオーガの動きは遅い。

 徹底的に膝も潰した。肩も潰した。


 ジェネラルオーガの腕も足も満足に動かせない。

 残る攻撃は、炎のブレスだ。


 これだけ距離をとっておけば、避けられる。


 ……でも、そうじゃない。


 なんだか俺はバカなことを考えているようだ。


 俺の頭には、やってみたいことがある。

 ジェネラルオーガのブレスに対して試してみたいことがある。


 失敗すればお陀仏だろうか。きっと一撃でHPが吹っ飛んでいく。


 デスペナルティって何だっけ。所持金の半減と一時的なステータスの半減と。経験値も半減するんだっけ? あんまりよく覚えてない。


 でも、ゲームだし。

 やりたいことをやって、何が悪い。

 今の俺は、とてつもなく興奮してる。


 【疾風】【飛鳥】


 ジェネラルオーガへと高速で飛翔する。


 チラリと喉奥に火種が灯る。


 モンスターのブレスにたいして、無理やり口をふさいで暴発させるなんてのが鉄板だろうけど、俺の攻撃力ではジェネラルオーガの咢を動かすなんて到底できない。

 それでもきっと暴発させることはできる。


 集中だ。俺がやりたいことには、タイミングと正確さ。後はほんの少しの度胸だ。


 ……ここだ!


 鎧通し【月光】


 ジェネラルオーガの喉奥で大きくなっていく火種。


 その中心に【月光】を重ねる!


 タイミングはあった。位置もドンピシャ。後は、強度の問題。


 キャンセルされなくていい。

 干渉して、爆発してくれれば最高だ。


 【月光】が発動したのを確認して、高速で後ろに飛び退く。

 火柱が吐かれずとも、頭が爆発すればあの距離では巻き沿いを喰らう。


 ――これで、どうだ!


 喉奥の火種は、ボウっと大きくなり無秩序にうねって――


 ――ジェネラルオーガの頭ごと爆発した。

 

 ジェネラルオーガの残りのHP全てを吹き飛ばして。


 大きな紅蓮の火柱の後には、ジェネラルオーガだったポリゴンと、焦げた跡が残る。


『レベルがアップしました。能力値を振り分けてください』


 そのアナウンスが、とても感慨深く聞こえた。


『旅人:コハクが、オーガの森、フィールドボス<ジェネラルオーガ>を討伐しました』


 これには、俺の思考が一時停止した。


「……あいつ、ここのボスだったのか」



 ジェネラルオーガを倒してから五分ほどたった。


 どうやら、あのジェネラルオーガはこのオーガの森のボスだったらしい。


 まさか、俺がこんな序盤でフィールドボスに当たるとは思いもしなかった。

 フィールドボスが俺が独りでも倒せてしまう程度でもいいのかと思いはするが。


 でも、今までに戦ったモンスターとは一線を画す強さではあった。


 ジェネラルオーガを倒してから、ふとそういえばとコンパスを確認すれば正常に戻っていた。

 どうやらあの特殊な磁場のようなものは、ジェネラルオーガのせいだったらしい。落ち着いて確認すれば、コンパスに耐久値などないし。

 これで迷わずに東に進むことができる。


 俺のレベルもこの戦いで2上がった。オーガとハイオーガ十体と、ジェネラルオーガの分だろう。ジェネラルオーガを倒した時点でレベルが上がったということは、さすがはフィールドボス。かなりの経験値をため込んでいたようだ。


 これで、レベル20の大台に乗ることができた。

 当初、この森で目標にしていたレベルだ。


「いんやー、それにしても、ものごっつい疲れたわー」


 木の寄りかかって腰を下ろし、ボーっと疲れを感じながら余韻に浸っていると、ピピピとチャットが来ていることを知らせてくる。


 ……アリサか。


「もしもーし、どしたの」

『……お兄、お疲れ」

「ん? おお、疲れてるよ。声で分かったか?」

『お兄、フレンド設定、触ってないでしょう。フィールドボス倒したって、こっちにもアナウンス来たよ』

「え? 何それ」

『ボスクラスのモンスター倒したら、フレンドに通知が行く設定がONになってるんじゃない? そのあたり、よく確認した方がいいよ』

「んーっと、フレンド設定っと。あ、ホントだ。OFFっとくぞ」

『そのあたりはお兄の勝手だけど、自慢したい感じ?』

「いんや全く」

『設定とか、ちゃんと見といたほうがいいよ。で? お兄のことだから、一人なんだろうけど。フィールドボス倒しちゃったわけ?』

「みたいだなー。よく分からんままに戦ったんだが。とんでもなく強くて死ぬかと思った」

『初見でソロで死ななかっただけすごいよ。おめでとう』


 ホントそうだよな。

 自分でもそう思う。


 ソロだと仲間内で喜びを分かち合えないところがさみしいよな。

 いや、それだけ心をひらける相手がいれば、ソロなんかしないけど。


「ありがとう。で? これってなんかいいことあんのか?」

『ドロップくらいじゃない? ダンジョンの階層ボスじゃないから、倒さないと次のフィールドに進めない。なんてことはないだろうし』

「ドロップか……何かあるかなっと……<火鬼の大剣>Rかな。ジェネラルオーガが何を落としたのか分からないけど、たぶんこれだろう」

『レアドロップだね。さすがは【トレジャーハント】持ち』

「でも、使うかなー、これ。<花鳥風月>あるし。使えるのもレベル25からだし。能力値は結構よさそうだけど」

『もし使わないんなら売っちゃえばいいよ。マーヤさんのところで一回見てもらってさ。お眼鏡にかなわなくても、知り合いの武器商人を紹介するし。でも、25まで待って、一回使ってみたら? どうせ、武術スキルとれないんだからどの武器使っても一緒でしょ? 使える手札は多い方がいいよ』

「なるほどなー。確かに、魔法スキルもあるし。使えるかどうか分かってからでも遅くないか」

『うんうん。でもお兄のストレージ、レアものばかりで埋まってそう』

「アハハハ……うん見た感じ大体Rだね」

『ううぅ、いいなー。時間がある時でいいからさ、付き合ってよ。今、欲しいドロップがあるのに、あの熊全然落とさないんだよー』

「もちろん付き合うけど、今すぐにそっちには帰れないし。アリサについていけるかどうか怪しいぞ。鬼特攻でどうにかやってるんだから」

『大丈夫。お兄の種族スキルの支援があるだけで、だいぶん楽になるから。しかもレアが落ちやすい。一パーティに一台。お兄が欲しいなー』

「何だそれは。じゃあ、次の町に着いたら、一回始まりの町に戻ると思うけど、そしたら連絡したらいいか?」

『うん、よろしく、じゃね』

「バイバイ」


 チャットを終え、開きっぱなしのストレージを確認する。


「それにしても……鬼ばっかだな。採集とか全くしてないしな……」


 あたりを見回してもそれらしき植物は見当たらない。


「ま、いっか……東へ東へ」


 お尻についた土を払いながら……いや、ゲームだし、ついてなかったかもしれない。まあいいや、立ち上がって、東へと歩を進める。


 途中で遭遇したオーガに関しても無視して歩く。

 無視して歩けるのはありがたい。


 今しばらくは、戦闘行為はやりたくない。




コハク LV.20(+4)

種族【座敷童】 職業【桃太郎LV.20】(+4)

HP  55(+8) +7  MP  55(+8)

ATK ―      MAT ―

DEF 10(+1) +15 MDF  8(+1) +10

DEX 20(+1) +7  MND 21(+3) +2

AGI 20(+2) +7  LUK 26(+0) +8

スキル SP 5(+4)

【気配遮断LV.3】【縁結びLV.10】【健康祈願LV.3】【戦勝祈願LV.3】【旅行安全LV.1】

【家内安全LV.1】

【鬼退治LV.10】【キビ団子LV.1】【トレジャーハントLV.10】

【鑑定LV.1】【隠密LV.1】【索敵LV.3】【採取LV.1】【命中LV.1】【回避LV.1】

【器用LV.1】【俊足LV.1】【幸運LV.1】【夜目LV.3】

装備

――略――



<鬼火の大剣> R 装備制限LV.25以上

火属性

ATK 25 MAT 20

【鬼火葬送】霊体系スキルを持つ敵に対して、そのスキル効果を無視して特攻ダメージ。確率で火傷状態を付与。

【紫炎乱舞】ダメージ量上昇。効果時間内はダメージを与えるたびに上昇量UP 効果時間30sec MP 30 CT 900sec

【炎舞蒼槍】攻撃魔法。切先から直線状に蒼炎を放射する。 MP15 CT60sec

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