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星空のメロディー①

 夕食はキャンプの定番『カレーライス!』

 折角だから一般で来てくれた父兄も呼んで、お接待することにした。

 もちろんその中には里沙ちゃんや茂山さん。

 それにロンもいた。

 カレーのルーは女子全員で作ったけど、ご飯のほうは班ごとに飯盒炊飯。

 うちの班はお調子者の伊藤君が班長なので心配……。

 時折聞こえてくる江角君の冷静な声が

「伊藤!そこ火が強すぎやしないか?」

 とか

「まだフタ開けちゃ駄目だろ!」

 とか……。

 何となく私でも知っている飯盒炊爨時の禁止事項を、焚いている最中に指摘されている気がする。

 やっと食卓に着いて飯盒のフタを開けると、真っ白いご飯に炊きあがっていたのでビックリしたけど、結局白いのは上のほうだけで下半分は炭状態。

「なによ!これじゃあ全員分ないじゃないの!」

 招待された里沙ちゃんが激怒して伊藤君に食って掛る。

 さすがにお調子者の伊藤君もバツが悪くて謝るしかない。

 と、ここに救世主登場!

 なんと茂山さんがレトルトパックのご飯を持ってきてくれたのだ。

「さすが、お兄ちゃん!」

 さっきまで怒っていた里沙ちゃんが、茂山さんに抱きついて大喜び。

『う~ん。まるで本当の従兄みたい』

 ロンは、そんな事件など気にすることもなく自分の目の前にあるボールに入ったご飯の前でキチンと姿勢を正して『食べてもいいよ』って言ってもらえるのをジッと待っていた。

 漸くそのことに気が付いてあげる事ができた私は、いつもより愛情をこめて“お手お替り”で差し出すロンの手をにぎり「お食べ」と頭を撫でてあげた。

 無事夕食も終わり、後片付けは父兄も含めて全員で済ませて、いよいよお楽しみの星空コンサート。

 オープニングを飾るのは一、二年生による「星に願いを」

 いつのまにかロンの隣には持田先生のお子さんが来ていてロンは私の隣で固まっている。

「噛む?」

 不意に聞かれたから、尻尾を踏んじゃったり乱暴なことをしたり急に大声を出したりするとビックリしちゃって噛むかもしれないから優しくしてあげてね。と返事しながら男の子の手に自分の手を添えて一緒にロンをナデナデする。

 そうしているうちにロンも慣れてきたのかリラックスして男の子の手をペロッと舐めた。

 子供は犬に舐められた手でも平気で口に入れたりするので、私は持っていた除菌用のウェットティッシュで手を拭いてあげた。

 ステージなんてないけれど、一、二年生の演奏が終わると今度は三年生のソロ。

 一応デュエットでもいいと江角君が言っていたので女子はデュエットが多かった。

 今は、伊藤君がトランペットで「ルパン三世のテーマ」を吹いていて、お約束通りサビの高音域で疲れ果てて情けない音を出して皆を笑わせた。

 笑いながら横を見ると、すっかり疲れてしまったのか、男の子はいつの間にか伏せをしているロンに寄りかかったまま寝てしまっていた。

 私はファゴットの福田さんと「シューベルトのアヴェ・マリア」を演奏した。

 福田さんには余計なお節介だったかも知れないけれど、いつもベース担当のファゴットと、そのファゴット同様におとなしくて控えめな福田さんに絶対主旋律を演奏してもらいたくて、サンサンスーの「ファゴットのためのソナタ」と悩んだけど、こっちのほうがハーモニーも独奏も合うと思って一緒に演奏した。主旋律を吹くファゴットの音色は、どこまでも悲しくてロマンチックな星空のコンサートにはピッタリで涙を拭う子も何人かいた。

 三年生の最後は部長の江角君が「Story」をトロンボーンで演奏して、全体の最後にコンクールで演奏した「情熱大陸」で締めた。


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