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山の上のキャンプ場⑩

 空を見上げていて『星も綺麗なんだろうな』と思った。

 そして、おそらくそう見えるであろうこの満天の星空を皆にも見せたいと思った。

 丘の上の散歩から戻ると私は真直ぐに江角君のテントを訪ねた。

 急に私が来たので、江角君はいつになく戸惑っている様子で、その有様に気が付いてしまった私は急に忘れていた江角君との微妙な関係を思い出して江角君が見せた倍以上の戸惑いを表せてしまう。

「今更おかしいぞ!何も考えないで勢いよく来たのなら、その勢いのまま用件を言え」

 江角君から指摘され、我に返って用件を言う

「今夜、イベントの最後に山の上で星空を見ませんか?」

 江角君は五~六回咳払いをして、急に手元にあった沢山の楽譜を整理し始めながら

「別に構わないけど……」と言った。

 急に江角君のギクシャクした態度に気が付いて、私は勘違いされていると思って言い直そうとした瞬間、さっきの自分の口から出た“足りない言葉”が大胆過ぎたと気が付いてしまって、顔が真っ赤になって行くのが分かった。

「えっ……あっ……あのっ・そ、そんなんじゃなくて、そ、その……み・皆で山に登って満天の星空……」

 そこまで言うのが精いっぱいだった。

 そしたら江角君が

「わかっているって。鮎沢がそんな大胆なこと言いに来たんじゃないことくらい」

「だっ大胆だなんて……」

 江角君は、取り出した譜面を私に見せてニッコリと自信満々の態度を見せて言った。

「満天の星空を見上げながらムーンライト・セレナーデの生演奏なんて、どう?」

「そっ!それ!」

「じゃあ、これ三年生からのサプライズってことでいい?他の三年生には僕から伝えておくから。あっそれからあとで追加の楽譜も上げるから“浮かれていないで”確り練習しておくように!」

「はい」

 素直に返事をして退散したものの『浮かれていないで』っていったい何?

 それに、どうして里沙ちゃんも江角君も、まだ喋ってもいないのに私の言いたいことや気持ちが分かるんだろう?

『ひょっとして顔に書いてあるとか……』

 私は洗面所の前にある鏡を覗き込んで見たけど、答えなんて書かれていないいつもの私の顔がそこにあった。


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