山の上のキャンプ場⑧
ロンが私に飛び掛かって来て、今日は押し倒さずに顔を舐めまくる。
やっぱりロンも一緒に居たかったんだと嬉しくなる。
皆が、それを見て可愛いと大騒ぎになり、直ぐにロンは皆の人気者。
特に女子たちに囲まれてロンは大喜び。
みんな(特に女子)に愛想を振りまくロンを見ていると、最初のトキメキからだんだんウンザリした気持ちになって来た。
顔こそ笑顔だったけれど、心の中はイライラしながらロンが他の女子と遊ぶのを見ていると、急に里沙ちゃんに手を引っ張られてコテージの裏に連れて行かれた。
なんで連れていかれたのか分からなかったけど、そう言えば里沙ちゃんに聞きたかったことがあった。
「ねぇ、従兄じゃなかったの!?」
里沙ちゃんは、口の前に人差し指を立ててシーっと言うとキョロキョロ周りを確かめてから、拝むように私に手を合わせて
「だから、従兄ってことにしておいて!」と言う。
「なんで?」って聞くと、あとあと面倒だからと答える。
まあ確かに茂山さんは兄の友達で、二年のときにスキーに行って知り合って、そして偶然実家がペット同伴の喫茶店を経営していて、それで常連さんになって仲良くしてもらっているけれど、それをいちいち全部説明するのは大変だから“従兄”ってことにしておいたほうが成り行きを知らない他の人向けには都合が良さそうだ。
わたしが「いいよ」って答えると、里沙ちゃんは「助かったぁ~」とホッとした表情でため息をついた。
「あら、助けてもらったのは私のほうよ。ありがとう里沙!」
里沙ちゃんに改めてお礼を言うと、里沙ちゃんの目が小悪魔モードに変わった。
「それにしても、千春。やきもち焼きすぎよ!」
指でオデコをツンツンしてくる。
「えーっ。そんなの焼いていないし!」
私が反論すると
「嘘っ!まるわかりよ!そんなに、あからさまに焼いていたら江角君に嫌われるぞ!」
何故か急に耳が焼けるように熱くなった。
「ぜっ、全然、江角君なんて関係ないし!!」
おそらく私の顔は言葉に反して真っ赤なんだろうという自覚はあった。
しかし、そのあとの里沙ちゃんに指摘されたことが私の意表をついた。
「ははぁ~ん。さては告白されたな!」
「ばっ・バカ!違うったら!」
急に走り出した里沙ちゃんを追い駆けながら不思議に思った。
なんで里沙ちゃんは、江角君が私の事を好きなことや、その江角君が私に告白したことが分かるのだろう?
!ひょっとして里沙ちゃんってエスパー?





