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山の上のキャンプ場⑥

 夕方お父さんに聞いてみたら、やっぱり駄目だった。

 お父さんに何度も謝られたけれど、それはやっぱり仕方がない。

 だって、お父さんが働いてくれているから私たちも不自由なく暮らせて、それにロンも家族として迎えられたのだから。

 夜遅く、里沙ちゃんから車の手配がついたという知らせがきて私は大喜び。

 里沙ちゃんは勿体ぶって誰の車か教えてくれなかったけど、屹度お父さんかお母さんを必死で説得してくれたのだろう。

 夜の散歩中にロンに聞いてみたいことがあったのを思い出し、ベンチに腰掛けて話しかけた。

「ねえ?なんで里沙ちゃんとの電話中にワンワン吠えたの?」

 ロンは私の顔をジッと見上げたまま何も返事を返してくれなかった。

「本当は最初から里沙ちゃんに頼めばなんて考えていたの?」

 私と目を合わせたままハアハアしながら自分の鼻をペロンと舐めた。

「自慢しないで頂戴。私だって最初から里沙ちゃんに頼もうと思っていたのよ……」

「ワン!」

 ロンがいきなり吠えたのでビックリした。

「嘘よ。ロンありがとうね!日ごろ忘れがちだけど、あんたって意外と賢いのよね」

 ロンの頭を撫でながら、いつものように夜空を見上げる。

 つられて見上げたロンの顔は、屹度今頃私を見ているのだろう。

 しかし、どうして分かるのだろう?

 お母さんと私の会話が、それに誰を頼れば良いのかなんて。

 言葉が通じない私に、里沙ちゃんに頼むように訴えかけてきたロンの気持ちに、改めて凄いと思った。

 ひょっとしたら美樹さんは、私よりももっと早くこのことに気が付いてしまったから遠くに行ってしまったのではと思い、星を眺めた。

 この星はいつまでたっても美樹さんのいる南半球には届かない。

 唯一、今見えている月だけが共有して見ることが出来るけど、この半月の私には影になって見えない半月の暗い部分を今美樹さんは見ているのだろう。

 そう思うと、悲しくもないのに目から一滴涙が零れ落ちた。


 キャンプ当日はいつも通りの快晴!

 いや、その少し前に通り抜けた台風の影響で秋色が濃くなった分、快晴度合いは今年最高水準。

 風も気持ち好い。

 里沙ちゃんから、少し遅れるから先に行っていてと連絡が入ったので玄関にロンと、ロンの旅行セットは置いてけぼりになるけれど「忘れずに持ってゆくのよ」とロンの頬を抱いて言うと「ワン!」って元気な声が返って来た。

 それにしても、里沙ちゃんは誰の車で来るのだろう?

 聞いても結局教えてくれなかった。

 お父さん?

 お母さん?

 一人っ子だから私の家みたいに急に兄が登場するわけでもないし……っま、いいか! 

 向こうに着けば分かるんだから。

 学校に着くと、まるで発表会さながらに楽器をバスに運んだけど、コンクールではない気楽さから今まで味わえなかった不思議な喜び感があった。

 屹度コンクールなどで毎回優勝するようなチームの出発って、こんな感じなのではないだろうか。

 出発するときから緊張して内心ピリピリしていた私達では所詮勝てないと思った。


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