山の上のキャンプ場④
部活が終わって家に帰り、早速お母さんにお願いしたのはキャンプの事。
お母さんもノリノリだったけど、心配なのはお父さんの都合。
我が家には今、自動車が一台しかないので、お父さんが自動車を使う平日では交通手段は電車とバスになってしまい、それだとお母さんは行けるけどロンが行けなくなる。
この辺りの公共交通はケージに入る小さなペットまでは受け付けてくれるけど、リード付きのペットだと介助犬以外は乗ることが出来ない。
お母さんがインターネットでタクシーも調べてくれて、ペット専用のサービスをしているタクシー会社を見つけてくれた。
車自体に改造が加えられて猫から大型犬まで対応!
しかも登録しておけばペットだけの乗車送迎にも対応してくれるので、動物病院の検診などではロン一人で行って帰れるのだ。
更に、ペットと飼い主が同伴した場合は通常のタクシー料金という有難さ!
お母さんと二人で超盛り上がっていたけれど、タクシー料金計算サイトで我が家からキャンプ場までの料金を調べてみたところ往復で四万円近く掛かってしまうことも分かり、どんよりと盛り下がってしまった。
私達の後ろで寝ていたロンが、馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに大あくびをした。
折角ひとがロンを連れて行く算段をしているというのに失礼しちゃうわ!と睨んでいたところに携帯の着信音。
私が「里沙ちゃんだ!」と言う前からロンはメロディーを覚えたのかワンワンと催促するように吠えた。
画面をタッチして通話に切り替えると直ぐに里沙ちゃんの元気な声が飛び込んできた。
「吹奏楽部の打ち上げって、今年はキャンプに行くんだって?いいなぁ~」
ソフトボール部は焼き肉食べ放題のお店だったので羨んでいた。
里沙ちゃんと私が携帯でお喋りしている間中、いつになくロンがワンワン吠えるものだから途中で会話を止めてロンに代わってあげると、おとなしくハアハア言いながら里沙ちゃんの話しかける声を聴いていて、また私が話しだすと隣に来てワンワン吠えて邪魔をする。
「もーっロン!静かにして!!」
とうとうロンを怒ってしまった。
いつもなら怒られると、シュンとしてしまうのに今日は尚も反抗的に吠える。
『犬はあまり自己主張しないけど、そうするときは屹度なにか有る時だから注意して聞いてあげてね』
以前言われた美樹さんの言葉を思い出した。
「ちょっと待ってて」
里沙ちゃんにことわって、ロンに向きなおり話を聞く
「どうしたの?」
「なにがしたいの?」
「なにがいけないの?」
「どこかわるいの?」
「どうしてもらいたいの?」
優しく丁寧に一つずつ聞くと、ロンは甘えて私の胸に頭を潜らせてきた。





