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サマーコンサート⑮

「実は俺、サマーコンサートに出られない」

 江角君は、そう言った。

 江角君の話はまだ続いていたけれど、私にはその声がまるで閉ざされた洞窟の中で聞こえる風のように耳に入らない。

 閉ざされた洞窟では風の音よりも、風が入ってくる場所の方が重要だから私の心はその場所である出口を求めて彷徨っていた。

 いつも穏やかで心を癒してくれる波の音が、今夜はノコギリのように次々と心に突き刺ささっては返す。

 八景島から聞こえるアトラクションの歓声が、まるで殺戮される人々がこの世の最後に出す断末魔の悲鳴のように聞こえる。

 足が宙に浮いたようにフラフラとして、まるで重力を失った世界のように地球が回転しているのが分かる。

 重力が無くなった世界では、思考能力もまるで私の脳から離れてしまったよう。

 つまり、何も考えられない。

 もう私は目も耳も脳も使えない。

 魂だけで生きている。

 天と地が逆さまになったとき、フワッと暖かな何かが私の体を支えてくれた感覚がした。

 それが最後に感じた感覚器官の記憶。

 だけど私には、それが何だったのか、その糸口さえつかめない。


 次の日、私はベッドで寝ていた。

 同じベッドには、もう一人誰かが寝ているのは目を瞑ったまま、いや眠っている間から何だか分かっていた。

 窮屈だと感じた訳ではなく、温かさを感じられていたから。

 暑いのは嫌だけど、温かいと感じられる程度の熱は、心を癒してくれる。

 目が覚めても目を開けられない私に気付いたのか、隣に居る誰かがゴソゴソと動き、そして言った。

「ワン!」と。

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