サマーコンサート⑦
やはり指揮者が入るだけで演奏が変わる。
いや、もっと正確に言うと、指揮者が入る事で“曲”が変わる。
鈴木君たちのグループが、なかなか音が揃わなかったので住之江部長に頼んだのに、音が揃うだけじゃなく音楽から感情があふれ出ていた。
鈴木君のサックス、松田君のホルン、鶴見君のファゴット、高津さんのフルートに丹沢さんのオーボエなど変則的木簡五重奏×2で演奏する6月の風は、梅雨の湿った雨の間に思いがけずに訪れた爽やかな風だった。
曲が終わって、1年生はもとより、今まで音が揃わないで苦戦していたことを知っていた上級生からも大きな拍手と感動が沸き上がり、演奏していたメンバーも感動して泣きだしていた。
泣いている鈴木君に向けて、少し鼻声になった鷺沼さんが「いよっ感動屋!」と声を掛けて笑わせた。
そして最後は私たち。
たった2本の木管楽器を生かすために選んだ曲はサリエリの『フルートとオーボエのための協奏曲 ハ長調:第3楽章[ナクソス・クラシック・キュレーション ]』
これも住之江部長に指揮をしてもらうと、鷺沼さんのフルートと私のオーボエの絡みが元気よくイキイキして、そして私たちの演奏に掛け合うように流れる金管楽器でアレンジしたコーラスも明るくて、演奏していて楽しさや元気が湧き出て来るように心が熱くなるのが分かった。
「やっぱ指揮者の勉強しているだけあって、引き出す能力が半端ないわぁ~!」
全ての演奏が終わって、中村先生が感動してそう言ってくれた。
生徒からも「住之江先生!」「住之江先生!」と、来た時と全く変わって“大モテ”の住之江部長は、顔を赤らめてしきりに頭を掻いていた。
これで全ての演奏が終わって演奏会は終了。
少し、しんみりする。
中村先生が、私の顔を見てニコニコしている。
“挨拶をしなさい”と言うことなのかしら。
そう思っていると、急に手を引かれて前に連れていかれ、オーボエを構えさせられた。
「はい、じゃあお願いね!」
中村先生がそう言うと、ハープ担当の女子がハイと返事して、弦を弾く。
“風笛”
私が演奏を始めると直ぐにピアノの伴奏が始まり、そこから曲が進むごとに少しずつ楽器が増えて行き徐々に吹奏楽になって行く。
そして全部の楽器が参加して盛り上がった後は、今度は逆に少しずつ音が減って行き、最後には私一人。
それでも、皆に負けないように強くリードに息を送り込んだ。





