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サマーコンサート④

 日曜日の午後、いつもの河原にロンを連れて行くと、そこには吹奏楽部の一年生たちが集まっていた。

 勿論彼らを呼んだのは私。

 どうしても揃わない音を揃えたくて。

「わー先生、可愛い犬!」

 皆がロンを見て集まって来てくれた。

「先生、犬を飼っているんですか?」

「そうよ。ロンは私の大切な友達なの」

「何歳ですか?」

「噛まないですか?」

「触ってもいいですか?」

 矢継ぎ早に質問攻めにあう。

 たった3週間だけ教育実習に訪れた私の事を、先生と呼んでくれる生徒たち。

 でも、今日の先生は私ではなくてロン。

 ロンのために皆の演奏を聴かせてほしいと、生徒たちにお願いした。

 いつも真剣な生徒たちが、いつもより気持ちを込めて演奏してくれた。

 真心のこもった演奏を、ロンも大喜びでそれを聞いてくれたけど、それでもまだ少し音は揃わなかった。


「住之江部長……」

 月曜日の部活が終わった後、私は住之江部長に頼んでみようと思った。

「な、なに??」

「実は、母校の吹奏楽部で少しだけ指揮をしてもらえないでしょうか?」

「指揮? 教育実習はもう終わったんでしょ」

「はい」

「じゃあ、もう用はないはずじゃないのですか?」

「実は……」

 来週に高校の部内発表会での事と、一年生の音がどうしても会わない事を住之江部長に正直に話す。

「駄目でしょうか……」

 サマーコンサートの楽曲選びで忙しいのに、個人的な事を頼むのも悪いとは思ったけれど、私の個人レベルではどうしようもなくて、指揮者として音に敏感な住之江部長が一番適していると思い断られるのを覚悟でお願いした。

「いいよ」

「そうですか――やっぱり駄目ですか……」

「いや、いいよ。喜んで引き受けさせてもらいます」

「えっ!?」

「僕も気分転換に、やってみたいです」

 意外にも住之江部長に快く引き受けてもらえて嬉しかった。

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