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教育実習㉞

 清々しい朝の河原。

 のんびりとロンを連れてお散歩を楽しんでいる。

 時折、ロンが私を見上げてくる。

 その表情は、オネダリしたいときの顔。

 ロンはリードを離せと言っている。

 放してあげるのは簡単だし、放したからと言ってロンがどこかに飛んで行ってしまう事も、誰かに悪戯する事も無いのは充分承知している。

 けれども、ここでは無理。

 河原に来る人の全てが、ワンちゃんに対してウェルカムではない。

 犬が嫌いな人もいるだろうし、犬を見て怖がる子供も居るかも知れない。それに最近は猫を散歩させている人もたまに見かける。

 勿論、ロンは子供や猫に対しても何の悪さもしない。

 でも、相手の方は分からないし“貴方が犬を放すのなら、私だって放すわよ”なんてことになり、躾が出来ていない犬を放されて事件や事故になってはかなわない。

 それにもまして怖いのが、たまに見かける車やオートバイの凄い人。

 なにかの練習なのだろうと思うのだけど、舗装していない道や全然道でもない所を、砂ぼこりを上げて飛び跳ねたりしながら走っている人が突然目の前に現れるかも知れない。

 どこにどんな危険が忍んでいるかも知れないし、知らないうちに自分が危険の基になってしまうかも知れない。

 日頃の散歩だからと言っても、ドッグラン場みたいにクローズされた空間ではない以上、マナーと用心する気持ちは大切だ。

 そんなことを考えながら歩いていると、堪り兼ねたロンがピョンと軽く前足で私のお腹を突く。

「もう、しょうがないなぁ」

 ロンも、今まで我慢してきたのだ。

 だからここは少しだけでも、ロンの言うことを聞いてあげよう。

 もう一度、突かれた時、その頬を両手に抱えてナデナデしてあげた。

 でも、リードは放さない。

 私は自分が楽をしているうちに、ロンの危険な確率を上げてしまう事はしたくない。

 だから一緒に走ってあげた。

 ロンよりも高い目線で周囲に気を配りながら、走っても大丈夫なところは思いっきり一緒に走り、少しでも危ないと思ったら歩かせる。

 そうやって、久し振りにロンの気の済むまで長い時間河原を散歩した。

 最後はお互いに疲れて、二人してサックスの練習を始めた里沙ちゃんを初めて見た時に越えた丘の上に寝転んだ。

 三週間の教育実習も終わり、明日からまた大学に戻る。

 みんなに聞かれた時、沢山楽しいお話しが出来ると、空を見ながら喜んでいた。

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