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教育実習㉜

 6時と言えば、私はまだロンと散歩を楽しんでいた時間。

 休みの日の早朝から学校に来て練習してくれるパワーに驚いたけれど、三年前までは私も持っていた力。

 冷静に考えると、彼等が凄いと感心している場合じゃなくて、逆に自分はいつ失ってしまったのだろう?と考えなくてはならない所。

「先生、おはよー!」

 扉を開けた途端、鈴木君が私に気が付いてくれて朝の挨拶をしてくれると、みんなも一斉に振り向いて「おはようございます!」と綺麗に声を揃えて言ってくれた。だから私も負けないように大きな声を出して「おはよう!」と返した。

 みんな張り切って練習しているけれど、遮音性と音響効果の高いこのホールで一斉に練習されたのでは、他の人の音が混じって来て音の効き分けが出来ない。

 それに観客席が固定席の斜面になっているので、練習する場所も密集し過ぎていた。

 だから私は、急遽第一回中間発表会なるものを提案した。

 これは、とりあえず今決めてある楽曲を今の段階で演奏して、皆に聴いてもらう。

 そして聴いている方は、どうしたらもっと良くなるかなどの意見や、どのような事に気を付けて練習しているのかなど、演奏者と様々な意見交換をすると言うもの。

 ただしルールを一つ設けた。

 ダメ出しは一切NGで、必ず演奏者が喜ぶようなことを言うこと。

 つまり、徹底的に“褒めて伸ばす”ことに重点を置いた。

 演奏する力と、聴く力。アレンジする能力などのアドバイスする力が求められる。

 一組ごとにステージに上がり発表し、演奏が終わるごとにミニ・ミーティングを繰り返す。

 残った一年生を全部引き受けた鷺沼さんが用意した曲は、ラベルのボレロ。

 鶴岡部長のもと、初めて全国大会に出場した時の曲。

 でもメンバーの中にピッコロ、ファゴットがないのにどうするのだろう?

「先生、お願いします」

 鷺沼さんに楽譜を渡される。

 そう。わたしも数少ない木管を補うために応援するのだ。

 管楽器は全員ミュートを付けて音を絞っていて、最後の盛り上がるシーンだけそれを順番に外して行く演出がありナカナカセンスがあり面白かった。

 次に演奏する鈴木君たちは、ライヒャの木管五重奏曲ホ短調作品ナンバー88-1を持って来た。

 私たちが木管大戦争の時に演奏した曲。

 ホルンに加えて鈴木君のサックスが加わるところをどう処理するか、また本来全員一つの楽器を使うところに二つの楽器があるところもあるので、そこを重奏で行くのか交替で行くのか興味があった。

 しかし、始まったその曲を聞いて、私は驚かされることになった。

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