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教育実習㉙

 次の日曜日は、久し振りにお休み。

 久し振りと言っても、何週間も働き続けているわけではなくて、たった6日間学校に行っただけ。

 それでも土曜日以外は、朝5時に起きて夜中の0時前後に寝る繰り返しだったから、こうして1日中何の予定もなくのんびり出来るのは久し振りと言うわけ。

 のんびり出来ると言っても習慣的に朝6時には起きてロンと散歩に出ると、久し振りにラッキーを連れた凛香さんと会いお喋りしながら、そして二人の子を遊ばせながら約1時間半ゆっくり散歩を楽しんだ。

 凛香さんに話したいことはマダマダ沢山あったし、もっともっとロンを遊ばせてあげたかったのだけど、凛香さんがそれを許してくれなかった。

「千春はチャンとやれると信じているよ。今度の演奏会の企画だって面白そうだし、いろんな楽器の組み合わせで小グループに分かれる事で他の人の音に対する意識も変わって来るだろうし、コンクールに出て勝ちたいと言う意欲も出て来るとおもう。でも私は千春の体が心配なの。こう言ったとき必ずアンタはスーパー千春ちゃんになって、頑張り過ぎるでしょ」

 凛香さんにそう言ってもらえて、心配してもらって嬉しかった。

 だからマダマダ一緒に居たかったけれど、チャンということを聞いて家に帰ることにした。

「凛香さん。夕方の散歩も一緒にしたいです」

「いいよ。夕方って言っても4時くらいに行こうと思うの。それでもいい?」

「チョッと早いかもですけれど、宜しくお願いします」

「散歩のあと家によってお茶しない?」

「いいんですか!」

「だから夕方の散歩迄、ゆっくりするのよ」

「はい!」

 私は夕方の散歩を楽しみに、スキップするように家まで飛び跳ねるようにして帰った。

 隣のロンも私の顔を見ながら、とても嬉しそうに走ってくれるので、余計嬉しさ増し増しなのだった。

 家に帰るといつもの通り暖かいタオルで体を拭いて、今まで少し雑になっていたかも知れないブラッシングを丁寧に、時間を掛けてしてあげるとロンも男前になった気分なのか顔を上げて胸を張り威風堂々とした態度。

 勿論頭の中で思い描いている曲もエルガーの『威風堂々』で、これがまたこの姿のロンに良く似合うから、私もまるでメイドにでもなったような気持ちになり、余計お世話が楽しくなる。

 ブラッシングが終わったら、私もシャワーを浴びてお互いに朝ご飯を済ませ、私は久し振りに二度寝した。

「一緒に寝る?」とロンに聞いた。

 犬と人間だからいいけれど、男性と女性の間柄でする会話ではない。

 そう考えると、自分がチョッと危ないお姉さんになったような気分になり、可笑しくてベッドに上がってきたロンをクシャクシャに撫でた。

 もっともっとロンと遊びたかったのに、いつの間にか寝てしまっていた。

 目が覚めたのは2時過ぎだったので、優に5時間は寝たことになり、自分でも呆れるくらいの二度寝。

 隣のロンはまだ寝ていて、私が起きたのに気が付いてから目を覚ます。

 “そう言えば、ロンもこの1週間朝早くから起きて夜遅くまで私の事を待っていてくれていたから疲れたのだろう。

 しばらくして約束通り4時に凛香さんと散歩して、その後で凛香さんの家にある1階のデッキでお茶を楽しんだ。

 外国風の家づくりで、デッキの上でお茶を飲みながら、庭の芝生で遊ぶロンとラッキーを見ていた。

「で、どうするの?」

 不意に凛香さんに聞かれた。

「どうするのって?」

「就職よ。しゅうしょく。そのまま先生になるの? それとも他の会社を探すの?」

「もー、まだ教育実習も終わっていないし、それに教員試験も未だなのにぃ~」

 と、笑って返す。

「まあ、心配しても仕方ないか。……でもこれだけは注意してね。千春は自分が思っている以上に頑張り過ぎているんだからね」

「そ、そうなんですか?」

「そうなんですか?って、そうなの。本当は手を抜くようにとアドバイスしたいところなんだけど、千春が手を抜くところ今まで見たことも聞いた事も無いから、アンタは手を抜くと言う才能が無いの。わかった?!」

 何だかよく分からないけれど、凛香さんが私の事を心から心配してくれている事だけは良く分かった。

 お茶と、凛香さんの手作りケーキを頂いた。

 帰るときロンがイヤイヤしてしまうかなって思う程、ラッキーと仲良く遊んでいたけれど、こっちは心配する事も無く声を掛けると一目散に私の胸に飛び込んできた。

「あいかわらず、超―可愛い!!」

 と凛香さんが感動してくれて、私も! と言ってラッキーを呼んだ。

 でもラッキーは、芝生の中に鼻を突っ込んで何か遊んでいるみたいで、チラッとも振り返らない。

「もーっ、こいつ猟犬の血筋のはずなのにぃ!」

 と凛香さんが怒ると、それに気が付いて慌てて駆けて来て、凛香さんの胸の中に飛び込んできた。

「ラッキーも可愛いじゃないですか」

「ありがとう」

 凛香さんもラッキーも楽しそうだった。

 家に帰って、夕食を食べてお風呂に入り、明日の準備をして夜の散歩に出た。

「明日からの1週間、どんな1週間になるんだろうね」

 そうロンに話し掛けているのに、ロンは知らん顔。

 屹度「なるようになるさ」とでも言っているみたい。

 そう。どんなに頑張っても、どんなに悔やんでも、なるようにしかならない。

 だから、頑張るしかないのだ!

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