教育実習㉒
オーボエの子は2年生の丹沢光さん。
高校進学と同時にクラリネットからオーボエに転向したらしく、まだリードの使い方が安定してない。
私がオバサンみたいな性格だったら、どちらかを連れ出して根掘り葉掘り真相を聞き出して直ぐに問題解決ということになるのだろうけれど、そういう性格とは真反対に居るのでそうできない事も分っているし無理にそんなことをしても失敗するに決まっている。
私にできるのは、見守るだけ。
……いや、ひょっとしたら鈴木君になら上手く話せるかも。
だって、彼ったら、本当に伊藤君に性格も雰囲気も似ているんだもの。
しかし問題は、どう切り出すか。
いきなり“あなた、好きな人が居るんじゃない?”
何て言うのもおかしいのかな?
中学や高校の頃、みんなはどう言っていたっけ??
思い出そうと思っていても、全然思い出せない。
確かに周りの女の子たちの間で、そういう恋バナが流行っていたのは知っているし、私自身も何回か江角君と噂を立てられて渦中の人物にさせられてしまったこともあった。
でも私はそう言うことに全然無関心だったから、人のうわさ話には首を突っ込まなかったし、自分の事を噂されていても“人の噂も七十五日”……いや“馬耳東風”とばかりに気にも留めなかった。
まああの頃は、里沙ちゃんという最強の守護神もいたから。
“若い時は何でも経験しなさい”と良く人生の先輩方が言うけれど、全くその通り。
そりゃあ私だって恋愛はしているけれど、人の恋愛に関しては首を突っ込んだことがない。つまり、経験不足なのだ。
これじゃあ犯人が分かったのはいいけれど、証拠も動機さえも分からないポンコツ探偵と同じじゃない。さあ、どうすれば良いの? わたし。





