表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
790/820

教育実習㉑

 丁度、木管のグループ練習を聴いていた時に、ホンノ少しだけ音がずれていることに気が付いた。

 ズレいるのはサックス。 そして、その音を出しているのは鈴木君。

 下手だからみんなに付いていけないと言うわけじゃなく、鈴木君の演奏技術は意外なほど人並み以上。

 あの性格からは考えられないほど上手いし、しかも将来音楽関係の仕事に着くと言うビジョンも確り持っていて、そのために具体的な努力もしていると言う確り者。

 その鈴木君が本当に微妙だけど、音がずれる時がある。

“何故だろう?”

 鈴木君の顔を見ても、目は真剣に楽譜を見ているから、答えは分からない。

 でも音は正直に伝えてくれていた。

 何故ずれてしまうのかということを。

 ずれるタイミングは、ある特定の箇所で、ある特定の楽器が起因している。

 その楽器とはオーボエ。

 オーボエは難しい楽器だし、そもそも楽器の値段自体が高いので、ファゴットと同様にナカナカこの楽器を演奏する人は少ない。

 オーボエより値段の高いファゴットは、それでも吹奏楽には欠かせない楽器なので、殆どの学校は学校自体が用意してくれている。

 それに対してオーボエは、学校によっては演奏者がいない場合も有る。

 私が現役の時もオーボエとファゴットは少なかった。

 そして今は3人だけ。

 しかも3人共女子。

“さぁ~て……鈴木君は、どの子の音に心を惑わされているのかな……”

 鈴木君が動揺している原因を作っているのが、私が演奏する楽器と同じオーボエだと言う事が分かると、なぜかしら原因を探して見たくなりウキウキして来た。

 なんとなく芸能人カップルの噂話で盛り上がる、おばさまみたいに思われるかもしれないけれど、それよりも私たちが高校1年生だった頃を思い出して心がカーっと熱くなる。

 まあ私自身はオクテだったから自分の体験談は無いけれど、他のクラスメートは色々あって、よく放課後にのろけ話を聞かされたり悩み事を聞かされたりしたものだ。

 少しの探偵気分と少しの野次馬根性、そして少しだけ人生の先輩として援助してあげたいと思いながら鈴木君と3人のオーボエ奏者の音を聴き比べていた。

“あれ!? この子、もしかして”

 その中の一人の音が気になったとき、その女の娘自体も気になった。

 どこかで会ったことがある……どこだろう?

 しばらく考えていても分からなかったけれど、一旦演奏が終わって、後ろの子とその子が話し出したのを見たときに分かった。

 そう。

 前から見ても分からなかった訳だ。

 何故なら私は、この子を前から意識して見ていないから。

 この子こそ、教育実習初日の電車の中で私が話し掛けたくて話し掛けられなかった、あの後ろ姿の子だったのだ。

 しかも、そうとうな美人。

 鈴木君、君はやはり私の友達の伊藤君に似ているぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ