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教育実習⑫

「それではホームルームを始めます。今日のお題は鮎沢先生の教育実習についてです。生徒の皆さんは鮎沢先生について、何か困ったことや、こうして欲しいと言うような要望はありますか?」

 殆どの生徒が顔を見合わせるだけで、なにも発言しようとしない中、一人の男子生徒が自信満々と言った表情で手を上げた。

「はい、鈴木君」

「はい。鮎沢先生は、いま彼氏はいますか? それとも募集中ですか?」

 教室が笑い声に包まれて、緊張していた雰囲気が一気に明るさを取り戻した。

 まるで、伊藤君みたいな生徒。

 しかし、こんな質問は即刻却下!

 そう思って、苦笑いの表情をつくり中村先生にみせると、意外に真剣な目とぶつかった。

 普通、こういう質問が飛んだ時には“こらぁ鈴木、先生を揶揄うんじゃないぞ!”なんて言って却下ですよね……。

“えっ、もしかして却下しないの??”

 中村先生から視線を外し、伊藤君……じゃなくて、えーと、鈴木君を見ると真剣な表情で私を見ている。

 そして他の生徒も、興味津々と言った表情で私を見る。

 その眼差しが、いま鈴木君の投げた質問の答えを求めているのは明白。

 まさに、目は口程に物を言う。と言う世界。

 中村先生に助け船を出してもらおうとおもって、今度は苦笑いではなくて、真剣な表情で見た。

 だけど、中村先生の表情は最初のまま、まるで“答えなさい”と言っているよう。

“なんで、こんなプライベートな事、答えなくっちゃいけないの?”

 どうしよう?

 適当に受け流す?

 嘘をついて誤魔化す?

 それとも、正直に答える?

 選択できるカードは三枚あるけれど、私はその中から一枚のカードしか選択できないし、どのカードを選択するかはどんなに困っていたり迷っていても決まっている。

 それは、正直に答えるカード。

 もしも鈴木君やクラスの生徒たちに馬鹿にされたとしても、自分の気持ちは偽りたくない。

 それに、鈴木君が本当にそれを知りたいと真剣に思ってくれていたとしたら……私と言う人間に関心を持って聞いてくれていたとしたなら、適当に受け流したり偽りを言って誤魔化すことは、相手を傷つけることに成り兼ねないと思う。

 だから私はチャンと答えることにした。

 勇気を出すために、目を瞑って深呼吸をした。

 そして……。

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