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教育実習⑪

 一時限目が終わり、中村先生から「凹んでいる暇なんてないぞ!」と喝を入れられた。

 そう。今日は授業の進行などを一日中見学しているだけだけど、これから徐々に授業に参加していくと思うと気が遠くなるし、最終日の研究授業なんてまともに出来るのだろうか? いや、その前にそこまで続くのだろうかと、色々不安な事ばっかり。

 4時限目が終わって、お昼休憩。

 中村先生と一緒にお弁当を広げる。

「鮎沢、大丈夫?」

「う~ん……なんか、自信ないです」

「もう、鮎沢はいつも自身損失状態からスタートするのは良~く知っているから、今の発言はスルーさせてもらうわね。私が聞いたのは体力的な、特に足の事よ」

「あし。ですか……」

「足とか腰、痛くない?」

 言われるまで気が付かなかった。

 そう言えば、午前中はズット立ちっぱなしだった。

 でも、そんなに痛いとか疲れたと言う感覚はないから元気に「大丈夫です」と答えた。

「さすが、不安でボーっとしているとき以外は、集中力が違うわね」

「えっ、そ、そんな……」

 なんとなく、自分の弱点と長所を同時に疲れた気がする。

「昼練、見て行くでしょ」

「そ、それが……」

 私は、正直に思っていたことを伝えた。

 吹奏楽部元部長の教育実習背が、久し振りに訪れた学校で吹奏楽部に入りびたりになるのは、平等性を重んじる教育精神に掛けるのではないかと。

 中村先生は私の話を聞いて「ふ~ん、そこだったんだね」と言ったきり、何も言わない。

“なんかマズイこと言っちゃったかな”

 しばらくすると、中村先生は席を立つと他の教育実習生を連れて来た。

 当然みんな私と同級生でこの高校の卒業生だけど、同じクラスになった人が居なくて、見かけた覚えはあるけれど学生時代に殆ど話したことがない人ばかり。

 もっとも、あれだけ四六時中部活動に打ち込んでいたのだから、仕方ないとは言える。

 そう思うと、違う高校生活をしても良かったのかも知れないな、と少し思った。

「さっ、行きましょうか!?」

「えっ、どこへ??」

「部活めぐりよ」

 昼休みに、練習をしている部は、そう多くない。

 吹奏楽部の他には、テニス部と卓球部、それに演劇部などの文系が少しだけ部室に集まるくらい。

 中村先生に連れられて、ゾロゾロと並んで校内を歩きている私たちは、生徒から見ればどんな風に見えるのだろう?

 見慣れない光景に、その生徒たちの方も、私と同じように少し戸惑っているのが分かる。

 吹奏楽部の昼練を見ていたら、生徒の何人かが私に手を振ってくれた。

 そして卓球部の練習では他の教育実習生に、同じように手を振っている生徒が居たし、テニス部と演劇部でも同じだった。

“私と同じで、もうみんな、昔いた部活に顔を出していたんだ”

 生徒たちから手を振られた同級生たちは、私のように遠慮がちにならずに、元気よく後輩と接していて楽しそうに笑っていた。

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