教育実習②
結局四年生になっても、何のビジョンもないままの私は、教授や友達に勧められるまま教育実習を受けることになる。
この流されてしまう体質を改善しない限り、教師なんて出来そうもないのに、なんで教育実習を受けることにしたんだろう?
自分で書類を提出しておきながら、後悔してしまう。
部活の時間が待ち遠しい。
それは音楽に没頭できるからではなく、江角君に会えるから。
“でも、今日会えるのかな……”
四年生になると、江角君たち医学部の生徒は忙しくて部活に出てこない日が増えた。
受ける講義が少なくなり、暇になった私たちとは逆。
来年から臨床実習と言って、先生に付いて実際に附属病院で患者さんを診るから、今はそのたための勉強をしているらしいし、医師国家試験の勉強も本格的になってきたそうだ。
お医者さんになるのは大変なんだ。
結局、今日は江角君も滝沢さんも部活には来ていなかった。
「そういえば鮎沢、教育実習申し込んだんだって」
どこで嗅ぎつけたのか部室に入るなり、現在の最大の悩みの種でもある教育実習の事を住之江部長に聞かれた。
「はぁ、そうなんですよ」
「どうした? 元気ないな」
「だって、私まだ将来の事何にも考えていないのに、教授や同級生に勧められるまま提出しちゃいましたから……出来る事なら撤回したいくらい憂鬱です」
「そうか? 僕は、鮎沢は教師に向いていると思うぞ」
住之江部長がそう言って励ましてくれる。
嘘でもいいから、その言葉を江角君から貰えたら、元気の足しになっただろう。
「どうした、やっぱ不安か?」
「はい、結構」
「まあ、教育実習は基本的に卒業した母校で行わわれるんだから、そう心配するな。恩師の先生がチャンと面倒見てくれる」
太鼓判を押すように、自信満々で胸を叩いて咳をする住之江部長。
「部長も受けたんですよね」
「えっ?! なっなにを??」
「教育実習ですよ」
「あっ、あ、あ……ああ~~~~~っ!」
いきなり泣き出してしまう住之江部長。
「どうしたんですか!?」
たまたま遊びに来ていた合唱部の倉橋さんが教えてくれた。
「住之江部長の母校って、結構荒れた公立高校だったらしくて、この性格だから生徒に反感かって虐められたんじゃない?」
“うわっ、住之江部長なんかに聞かなきゃよかった。余計プレシャー掛かるじゃない……”





