教育実習①
春になり、いよいよ最後の学生生活が始まった。
と、言っても最上級生になった以外、特に何も変わらない日々。
少しだけ変わったのは、出席する講義の日が減ったことくらい。
それでも部活は毎日出ている。
「いやー鮎沢もいよいよ四年生かぁ~。今年は就活で大変だぞ」
部活初日に、大学院に残っている住之江に言われた。
「住之江部長は、どうされるんですか?」
住之江部長も大学院二年目だから、このまま大学に研究員として残るのか就職するのか決めなくてはならないから聞いてみると「そう言えば、俺も就活だな」と言っていた。
江角君や滝沢さんは医学部だから、あと二年ある。
なんだかそれが恨めしい。
「先輩は、どこを狙っているんですか?教員?それとも企業ですか?」
高橋さんにそう言われて、まだ何も決まらないのが恥ずかしい。
伊藤君たち県立大生は、これまでやって来た勉強自体に既に就職活動の道筋がある。
福祉の勉強をしているから、きっとその方面に進むのだろう。
一応、教育実習はするつもりだけど、私なんかに教員は務まるとは思えない。
だからと言って一般企業も厳しそう。
誰も一緒の企業に入る人はいないだろうし、頼る先生も先輩もそこには居ない。
幼稚園には近所の幼馴染の子が居たし、小学校には幼稚園で仲良しになった子が居た。
中学に上がったときは大勢小学校の時の同級生が居て、その友達に助けられたおかげで、他の小学校から来た人たちとも直ぐ友達になれた。
高校も里沙ちゃんと江角君が居てくれたおかげでなんとかなったし、大学も江角君が居てくれた。
でも、社会人になるのは別々の会社。
人間関係ゼロからの出発になる。
生まれて今まで経験したことのない未知の世界。
“あ~憂鬱。私も大学院に残ろうかな……”
でも、いつまでも学生は続けられないし、お金も稼がなくてはならないから、やっぱりいつかは就職しなくちゃいけない。
どうせ就職するのなら、みんなと同じタイミングの方が、やりやすいだろうなって思う。
下手に大学院とか、家事手伝いでに三年過ごしたあとだと、就職するときに年上の新入社員になってしまうから私の場合余計ハードルが高くなってしまう。
“あ~ん、もう、どうしよう……”
困った私はバッグからチョコレートを取り出して、それを一粒食べた。
なにか昔のコマーシャルで、こんなのあったね。





