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中学最後の大会③

 試合が始まった。

 初めて見る里沙ちゃんの部活姿。

 体をバネのように使い物凄く速い球を投げるので相手の選手は誰も打ち返すことが出来なくて、三振を次々に取りあっと言う間に相手側の攻撃が終わった。

 正直、里沙ちゃんが投げているのを初めて見た。

 いつも吹奏楽部は音楽室だから、休憩中にでも窓から覗かない限りグラウンドで練習するソフトボール部なんて見れないし、そんなことをしてグラウンドを覗いていたりしたら江角君に見つかったら何て言われるか想像もしたくない。

 相手投手は里沙ちゃんほど球が速くなさそうで、打ったボールは一応前には飛んでいたけど全部内野手の前に転がって、わが校も直ぐに攻撃を終えた。

 2回も里沙ちゃんは絶好調でピッチャーフライ以外は二人から三振を取った。3回も4回も五回も里沙ちゃんは相手バッターを打たせず、三振を取り続けたけど見方も相手投手を打ち崩すことが出来ないで残塁ばかりで両者ゼロ点のまま回が進んでいく。

 6回の表の相手の攻撃で里沙ちゃんは初めてヒットを打たれたけど、そのあとの選手を連続三振に取って裏の攻撃に移った。

 先頭バッターが打ち取られた後、里沙ちゃんが私たちの近くまでボールを打ち返した。

 ロンがボールを取りに行かないように慌ててロンを押さえた。

 いつのまにか2塁ベース上にいた里沙ちゃんがベンチと、そして私たちに向けてガッツポーズをした。

 次のバッターがバントを決めて里沙ちゃんは3塁に進んだけど、次のバッターが初球を打ち上げてしまい結局この回は点が入らなかった。

 ふ~っと緊張がほぐれてため息をついたあと温度計を見ると、もう34℃に上がっていて、慌ててロンの首の下に保冷マットを敷いてあげた。

 両チーム無得点のまま、最終回の相手の攻撃は先頭打者がサードゴロ。

 ワンアウトかと思ったらサードの返球が逸れて、エラーとなり一塁に残った。

 次のバッターの送りバントは里沙ちゃんの目の前に転がり、里沙ちゃんはそれを二塁に送球したけど、ランナーの足が一歩早くてセーフになった。

 三人目と四人目のバッターを連続三振に取ったものの、五人目のバッターが三振した球をキャッチャーが逸らしてしまい塁上のランナーはそれぞれ3塁と2塁に進塁した。

 空振りをしたバッターも、チャッカリ一塁に走ったので「インチキだ!」と思わず口に出して言うと、茂山さんから「振り逃げというルール」だと教えてもらい満塁のピンチとなる。

 そして次のバッターにはホアボールを与えて押し出しで1点取られた。

 次のバッターが打ったときに、また悪送球があって一人帰って2点目がはいった。

 なんとかその次のバッターは打ち取ったけれど、その裏の攻撃はアッサリ三者凡退でゲームセット。

 相手選手と並んで試合後の挨拶をしている里沙ちゃんが泣いているのが遠くからでも分かった。

 結局、里沙ちゃんたちは午後の決勝戦には進めず準決勝で敗退した。

 関東大会進出は逃したけれどベスト4なんて素晴らしい結果だと思った。

 里沙ちゃんは約束通りお昼ご飯を食べに来てくれた。

 茂山さんも私も頑張ったねと活躍をねぎらって、里沙ちゃんは恥ずかしそうに笑っていながらロンを膝に乗せて撫でていた。

 帰りは一緒に帰った。

 道が焼けているのでロンを抱っこしたら、荷物が持てなくなった。

 茂山さんが俺に抱かせてと言って抱こうとしたらロンは怒ったので、今度は里沙ちゃんが抱っこした。

 ロンの奴ときたらおとなしくというより、喜んで里沙ちゃんに抱っこされているようだった。

 結局みんなの荷物を茂山さんが持って車まで走って行った。

 先に車に戻ってクーラーを掛けてくれるのだ。

 犬は焼けた車の中が我慢できないので走行中に窓から逃げ出して怪我をするケースもあるので茂山さんの優しさが有難かった。

 クーラーの効いた車で家まで送ってもらい、茂山さんの車にコロコロをかけようとしたら里沙ちゃんも手伝ってくれた。

 茂山さんは別にいいのにと言ってくれたけど甘えるわけにはいかない。

 車にコロコロを掛けている間に、お母さんがかき氷を作ってくれて4人でかき氷を食べた(ロンのかき氷は少~しだけ粉チーズが掛かっています)

「また明日!」

 里沙ちゃんが茂山さんの車に乗って帰るときに、そう言っていたのに「じゃあ明日ね!」と普通に返したけど、負けたソフトボール部は明日練習があるのだろうか。

 今日は頑張っても越えられない、なにか切ないものを勉強した気がした。


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