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道⑳

「もおっ! 江角君、なに?」

「鮎沢さぁ、今、どうして足立先輩が怒ったと思った?」

「やっぱり、先輩、怒っていたの?!」

“わぁー……余計な事言っちゃったぁ~”

「いや、困らなくて良いから、理由を教えて」

 足立先輩の家の前をトボトボと歩きながら話す。

「だって、一緒に演奏がしたいです。って希望を要った所までは、憧れの先輩に対する後輩の言葉として良いと思ったけれど、その先が少し調子に乗り過ぎたのかなぁって」

「それは?」

「だって、同じ曲を同じ楽器で演奏したいと私から言うのは、後輩として余り相応しくないでしょ?」

「どうして?」

「ほら、後輩だったら、先輩の演奏に私も加えて下さい。と言うのが普通で、私の言い方だとまるで同級生に言っているみたいに聞こえちゃったかも……」

「それで、いいんじゃないのか」

「えっ!?」

「例えば、幼稚園で年少さんだったとき、年長さんにいつも気兼ねしていた?」

「う~ん。気兼ねはしていなかったと思う。なんでも知っているお姉さんだとは思っていたけれど、結構我儘なことも言っていたし、調子に乗っちゃうと逆に偉そうにしていたと思う」

「お兄さんには?」

「歳は離れているけれど、小さい時から我儘しか言っていないと思う。恥ずかしいけれど……」

「足立先輩がもし同級生になったら、どう?」

「えっ!?……そっ、それは凄く嬉しいけれど、無理な事でしょ」

「いい友達になれそうにない?」

「いっ、いや、それはもう。凄く仲の好い友達になりたいし、実際にそうなったら里沙ちゃんとみたいな親友になれると思う」

「足立先輩も、きっとそう思っていると思うよ」

「そっ、そんな……」

 本当にそうなら嬉しい。

 でも、文科系運動部と呼ばれる吹奏楽部では、学年の差は一種の秩序。

 楽器の上手下手に拘わらず決してそれを乱すことは許されなくて、その考えは、私は勿論、足立先輩も同じだと思う。

「卒業して、もう三年。足立先輩の方は、卒業して五年にもなり、二人とも成人式を過ぎた大人だぞ」

「でも……」

「まあ、足立先輩がどう思っているのかは推測に過ぎないけれど、鮎沢はそう思っているんだろ」

「うん」

 それは……もしも、同級生のように何の気兼ねもなく付き合えたら、これほど嬉しいことはない。

「だったら言ってみれば良い」

「言ってみる?」

「凛香さんって」

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