道⑫
「鶴岡部長は、卒業したら戻って来られるのですか?」
「いちおう、そのつもりなんだけど、問題は就職先が見つかるかどうかなんだな」
「就職先って、御実家の動物病院を継がれるのでは?」
「ゆくゆくはそうなるかも知れないけれど、親父もお袋もマダマダ元気だから今は考えていないよ」
「そーなんだぁ~」
「なに、千春残念そうにしちゃって、浮気か?」
「ううん、そうじゃなくて、部長が動物病院に戻ってくれたらロンが喜ぶだろうなって思って……ってって、って。う・浮気ってなんなんですか、変な事言わないで下さいよ!」
「千春は、相変わらずツッコミが遅い!」
そう言って足立先輩と山下先輩、それに鶴岡部長の三人が笑う。
テーブルの下ではロンとマリー、それにラッキーが和気あいあいで、その中でもロンはすっかりご満悦で私の足に頭を乗せて寛いでいた。
足立先輩にツッコミが遅いと言われて、ここは一応怒るポイントなのかも知れないけれど、ロンたちの幸せそうな姿を見たら、怒るなんて“振り”だとしてもできやしない。
だから私は、そのまま“ほわっ”としていた。
私の表情に直ぐ気が付いた足立先輩がテーブルの下を覗き込んで、三匹の様子を確認すると「千春、いいお母さんになれるわ」と言ってニッコリしてくれた。
続いてテーブルの下を覗いた鶴岡部長と山下先輩が、私の足を枕にして寛ぐロンを見て「たしかに」と言ってくれ、テーブルの上で私たちみんなが、ほっこりした。
「正月早々、先輩方をほっこりさせた犯人は千春だね」
「酷いよ、犯人だなんて」
手が空いたのだろう、テーブルに和樹くんを抱いた里沙ちゃんが来てくれた。
「おお~和樹くん大きくなったねぇ~」
足立先輩が和樹くんの頬をチョンチョンと突くと、恥ずかしがって里沙ちゃんの胸の中に顔を埋めてしまう和樹くん」
「シャイだねぇ~、全然里沙に似ていない」
「そうですか?」
「だって、里沙。自分の事シャイだと思う?」
「シャイだとは思わないけれど、一度でいいからシャイだなぁって言われてみたい」
またテーブルが笑いに包まれる。
「ねっねっ! 楽器用意したら、なにか演奏してくれる?」
笑いが収まったときを狙ったように、唐突に里沙ちゃんに提案された。
「私は良いけれど……」
そう言って、お互いがお互いの顔を覗き込む。
「じゃあ決まりね!」
里沙ちゃんが燥いで立ち上がる。
「でも、どんな楽器があるの? 私、エレキは上手くないよ」
足立先輩が不安そうな顔で言う。
「おまかせあれ!」
里沙ちゃんが自信満々の笑みで答えた。





