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道⑪

 それからは、しばらくライブ演奏を聴いていた。

 この日のライブは、茂山さんのお友達が中心。

 お正月なので、アットホーム&限りなく緩い和気あいあいのライブと言う事なのだろう、どちらかというと演奏者には申し訳ないけれどBGMに近いかも。

「そういえば進(鶴岡部長の名前)、今年卒業だっけ?」

「凛香、違うわよ。獣医課程は医大と同じ6年だから来年」

 足立先輩の質問に回答したのは、鶴岡部長ではなくて山下先輩。

「えっ、じゃあ先輩のくせに、千春と一緒に卒業するの? なんとなく2年浪人生して大学入ったみたい」

「本当だな」

 そう言って鶴岡部長は笑った。

 でも、鶴岡部長と一緒に卒業すると思うと、なんだか凄い事のように思えて感動する。

 高校に入ったとき、中学でしてきた事の延長と言うだけ以外、何も考えないで吹奏楽部に入部した私に全国大会出場と言う夢のような目標を掲げて、それを見事に達成してみせることで私たちのその後に大きな良い影響を与えてくれた。

 もしも、鶴岡部長があの目標を掲げてくれなかったら、今こうして足立先輩と姉妹みたいな会話を交わすこともなかったかも知れないし。里沙ちゃんのこのお店にこんなにも沢山の吹奏楽部の仲間も来ていなかったかも知れない。

 そう思うと、あの出会いに感謝したい気持ちが込み上げてくる。

 あの時の、あの光景が、くっきりと頭の中に思い出し、描かれる。

 高校に入って直ぐのHRが終わったあと、私は里沙ちゃんと江角君の三人で、今貰ったばかりの入部届を持って廊下を走っていた。

 中学の時より、倍以上の部員が居ることに驚いて、卒業するまでにメンバーになれるのか不安だった。

 南副部長に入部用紙を渡そうと思ったら、用紙は私の手からフワリと離れてしまい、そのとき落した用紙を拾って渡してくれたのが鶴岡部長。

 用紙に書かれた名前を見てから、部長は私の顔を覗き込むようにして、嬉しそうな笑顔で笑い「ロンの妹さんでしょ!?」と言った。

 犬を飼っていると、よく「○○ちゃんのお母さん」とか「○○ちゃんのお爺ちゃん」とか、正式な苗字で呼ばれずに○○のところにペットの名前を入れた呼び名が使われることがあるけれど「○○ちゃんの、妹さん」という表現は、そのとき初めて聞いた。

「あーっ!」と、思わず大声をあげてしまった。

 なんとその男子は、元々のロンの飼い主であり、兄が家庭教師をしている動物病院の息子さん。

 いつもロンの定期健診に行っているけれど、ほとんど顔を見た事も無かったけれど、何度かはチラッと見たことがあった。

 そして、そのとき初めて、その人が“鬼”と呼ばれる吹奏楽部の部長だと言う事を知った。

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