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道⑦

 お正月の二日の日に、兄と美樹さんが令夏ちゃんを連れて来た。

 5月29日生まれの令夏ちゃんは生後7か月を少し過ぎたばかりなのに、ハイハイは勿論のこと、チャンと座れるしナント、もうつかまり立ちもしてしまう。

 令夏ちゃんが立つたびにお父さんとお母さんは大喜び。なのに私は転んで怪我をするんじゃないかと心配でたまらなくて、令夏ちゃんが立つたびにソワソワしてしまい笑われた。

 みんな心配じゃないのかな?って思っていたら、ロンも私がソワソワドキドキするたびに同じように令夏ちゃんを心配そうに見ていた。

「やっぱりロンにとって千春ちゃんは、お母さんか恋人なのね」

 そう言って美樹さんが笑う。

「なんで、ですか?」って聞くと、犬は一番頼りにしている人の気持ちに敏感なのだと教えてくれた。

「それってテレパシーみたいなもの?」

「いいえ、犬は耳が良いから、大勢の中でも自分の一番大切な人の心臓の鼓動をいつも注意深く聞いているのよ。そしてその鼓動を何パターンも記憶していて、いま千春ちゃんがリラックスしているのかとか、不安な気持ちでいるとかだけじゃなく、まるでお医者さんが聴診器で診察するみたいに体調が良いのか悪いのかさえ聞き分けられるのよ」

「凄い!ロン!君って天才!」

 嬉しくてロンを抱きしめた。

「まあ犬がそれをチャンと気にするのは、よほど良い関係が築けている証拠ってことだけど」

 喜んでいる私がロンを揉みくちゃにしていると、ロンも応戦してきた。

 もう10歳を超えているのに、まだまだ元気なロンのこの仕草が、更に私を嬉しくさせてくれる。

 実はロンについて心配していたことがあった。

 それは、最近家の中で暴れなくなったこと。

 家に来たばかりのころは私たちが遊びに行って家を留守にして家に戻ると、ゴミ箱は引っくり返っているしテーブルの上に置いてあったものは落ちていてクッションも引き裂かれて中の綿が散乱して、まるで家の中に台風が上陸したかと思うくらいの惨状を作り出していた。

 そして私たちが居るときでも、お母さんや私が特別な事で大喜びしていると、ロンはまるで自分の事のように喜んで部屋の中を駆けまわる。狭い家の中なのにソファーを飛び越えたり、それはもう元気ハツラツの全力疾走!

 ところが最近では家の中で走る事も無くなり、まあそれはそれで賢くなったとは思うのだけど、ハチャメチャだった若い頃に比べて、いまいち躍動感が乏しい。

 大人になったと言えばそれまでだけど、落ち着いて来たその行動に、ふと老いを感じずにはいられなくて寂しくなる。

 でも今日のロンは、私がチョッカイを出すたびに子供の時のように反応してくれる。

 ひょっとしたら、令夏ちゃんを見て、若さが戻ったのかな?

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