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道⑥

 コンサートが終わって機材を片付けに外へ出ると、雪が舞っていた。

 寒さが、会場の熱気でポカポカになった体に心地良く感じた。


 冬のお楽しみは、なんといってもロン。

 寒~い冬の夜、ベッドに入ると潜り込んでくる電気要らずのポカポカの縫いぐるみ。

 犬の体温は39度と人間の私たちよりも高いので、その暖かさは格別だし、何と言っても可愛いというオマケ付きなのが好い。

 いつも思うけれど、どうして犬はこんなに人間に甘えるのだろう?

 答えは知っている。

 それは、犬だからなのだ。

 人間と犬との関係は、文明が生まれるよりも遥か昔。

 オオカミの仲間だった犬を飼いならして番犬に使ったのが最初だと言われているが、わたしは違うと思う。

 犬は賢くて好奇心が強い上に無類の遊び好きで、しかも人懐っこい。

 だから古代人の作る竪穴式住居や、変わった道具。

 それに元気よく遊ぶ子供たちに興味を持って、自然に一緒に遊ぶようになったのだと思う。

 子供の親も匂いで嗅ぎ分けてチャンと分かる能力を持っているから、子供と遊んだあとに初めてその親と合っても警戒心を持たないから、直ぐに仲良くなれる。

 犬って、そう言う生まれつき人間のパートナーに相応しい能力を兼ね備えた生き物。

「だよね」

 毛布の中に包まって、私の顔を見ているロンに同意を求めると「よく分かっているんだな」と褒めるように口を開けて笑ってくれた。

 フッカフカの可愛いワンちゃんと一緒に寝れる夜なんて、もう最高の気分。

 そういって、はしゃいでいるうちに、どちらが先に寝たのか分からないけれど、お互いに寝てしまっていた。


 大晦日の夜に、みんなで初詣に行ったあと、一旦家に戻り江角君とロンを連れて車で箱根に行き初日の出を見た。

 雪を頂いた富士山の頂上付近が明るくなり、やがて朱色に染まりはじめる。

「鮎沢、もう直ぐ出てくるぞ」

 日の出の方向は東。

 私の見ていた富士山は、逆の西。

 でも、富士山も捨てがたい。

 私がこんなに迷っているというのに、ロンときたら日の出の方向も、富士山の方も観ずに、ただひたすら地面に生えている草の匂いを嗅いでいる。

「もう! 折角来たんだからロンも一緒に見るのよ」

 そう言ってお座りをさせる。

 遥か雲海の向こうから出てくる太陽が雲を赤く染め、そして赤く燃えながら顔を出す。

 太陽が出た途端に気温が上がった気がしたと思ったら、江角君に肩を抱かれていた。

 だから私も江角君の肩に顔を埋めるように、くっ付いた。

 屹度ロンは、やきもちを焼いているに違いない。

 そう思って、見ていた太陽から目を離してみると、また草の匂いを嗅いでいた。

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