道①
像の鼻パークを離れて、ライトアップされた日本丸を一緒に眺めながら未来の話をしていた。
自動運転の車が走り出して運転の苦手な私でも遠くにドライブに行けるようになるとか、リニア新幹線に乗って名古屋や大阪への旅行が無理なく日帰りできるようになるとか、電子マネー化が進んでお金を持ち歩かなくても買い物や電車の乗れるとか。
電子マネーについては実際にスウェーデンでは、人の体にICチップを埋め込んんで、買い物だけじゃなく色々な事ができる世の中が実現し始めていると江角君が教えてくれた。
「じゃあ、保健所や運転免許証も持ち歩かなくていいようになるの?」
「うん。ICは小型でもデーター量は大きいから、住民票とか個人情報の全てを持ち歩けることが出来るだろうね。GPSや有機ELなんかと連動させれば、例えば有機EL付きの眼鏡をしていればスマホを見なくても、目的地やお店の案内なども出来るようになると思うよ。だから方向音痴の鮎沢も好きなところに行ける」
「まあ!」
確かに私は方向音痴で直ぐに道に迷うから凄く便利だけど、迷い道に不意に見つけられるモノっていう貴重なものは、屹度道に迷わない江角君には分からないのだろう。
「世の中、どんどん便利になって行くんだね」
「でも、便利になればなるほど、人と人の関わり合いは難しくなって行きストレスの多い社会になって行く」
「そうなの?」
「そうさ、例えば煙草を吸う人を見てみろよ。成人で法律的には許されているのに、指定場所以外ではコソコソと人目を忍ぶように吸っているだろ。煙草を吸わない俺たちにとっては副流煙の被害に遭わされる心配があるから分煙化が進んでいるけれど、結局今じゃ喫煙しない人にとっては煙草のチョットした匂い自体がストレスになったりしているんだ」
あー言われてみれば、煙草を吸っている人を嫌な目で見ている人も見かける。
「世の中が便利になって行くということの殆どが、無人化に繋がっているだろ。自動改札機や無人ATMにネット決済、このまえ事故を起こしたシーサードラインにしても無人交通システムだ。 かつては人と接して、そして時には人に頼んでしてもらっていた事が少しの知識があれば、全て無人で出来る。人と人の関係が希薄になり、自分の受けているサービスの裏側で、誰のお世話になっているか分からない世の中では個人主義が更に加速して人同士のトラブルが絶えなくなる……なんて、話しが脱線してしまったねゴメン」
たしかに、楽しい話から未来、いや今既に起きている問題に変わった。
でも、便利さの裏側には必ず影がある塔い事も忘れてはいけないと思う。
例えば、より価格の安いものを追い求めると、それを製造する企業は、より低賃金の雇用を求めざる負えなくなり、派遣社員や外国人労働者を雇うようになり結局私たちの雇用機会を奪ってしまう。
屹度、今目の前でライトアップされている日本丸みたいな帆船が行きかっていた世界では、今に比べてひとつも便利なことは無かっただろうけれど、人と人の絆は今よりももっと強かったのだろう。
ひょっとしたら私たちはこの街で氷川丸や日本丸、馬車道通りや赤レンガ倉庫などの古いものを見ながら、知らず知らずのうちにその事を思っているのかも知れない。





